第一章 その十二 おまわりさん
高木と呼ばれた中年警官は一瞬絶句し、鳴神と横塚を交互に見る。
「え?・・・でも横塚警部、この男は私の見る限り最も・・・。」
「理解出来ない」と言った風に反論の弁を始める高木の言葉を全く無視して横塚は鳴神に顔を近づける。
「なーるがみぃ、お前なーんでいっつもこうなの?警官投げ飛ばすのは良くないよぉ?ま、新屋敷さんの顔に免じてさぁ、そこも大目にみてやるからぁ、帰って家で連絡待ってろよ大人しく。」
そう言うと横塚は鳴神に嵌められた手錠を外す。
「あ!そんな!横塚警部!まだ取り調べが・・・。」
そう言って思わず手を伸ばした高木の手を何と横塚は叩き落とした。階級は上とは言え、年下の男が大の大人にする行動じゃない。
「何やってんの?高木さん。ハコヅメに口答えされるの、俺あんまり好きじゃないなぁ。」
何という階級差別を口にする男だろう、高木の目にはありありと怒りの色が見える。
それにこの喋り方、私はこの横塚の喋り方にいつも不快な気分になる。それ以外にもこの男を不快に思う理由はあるのだが・・・。
「でもね、高木さんアンタは気付いてないだろうけど、今回はお手柄だったんだよ?な?鳴神ぃ。こっちのお願い聞いてもらい易くなったもんねぇ。」
今の横塚の言葉で理解出来た。今回の依頼は警察から、つまり横塚から来るのだろう。しかしこの鳴神の一件でドワーフ側には一切の拒否権も無くなったと言う事だ。気に入らない。しかし、
「わからん。」
鳴神はそう言うと立ち上がり、横塚を至近距離で見下ろす形で睨みつけこう続けた。
「俺はな、酒を買いに行っただけだ。そして何かが居たら殴るだけだ。おまわりさん。」
「帰りまっす。」と鳴神は言い放ち交番を出た。彼が最後に放った『おまわりさん』の単語を聞いた瞬間、横塚の目に怒りが浮かび、高木の目が怒りから笑みに変わったのを見て、私は少しだけ晴れやかな気分になった。
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