第18話 ピリオドの形
ようやく雪も解けたと思えば季節外れの吹雪に見舞われたりと、予想から大きく逸脱する空模様には頭を悩ませている。終日自宅で過ごしていたが、もし雪が降らなければ外にでも出ようかと考えていた。外には消えかけた冬の片影が再び。この調子では、桜の蕾が開くのも先の話に思える。
窓を開けたままでいると、時折風に乗せられた雪が部屋にまで届いてしまう。雪からすれば春の風情など知る由もなく、ベランダのコンクリートも、動画サイトのニュース番組チャンネルにて投稿された地元の映像も、意識とは関係なく薄化粧をほどこしていた。
夜になってもネットサーフィンや動画サイトを見たりと、リクライニングチェアでくつろぎながらパソコンのモニターを眺める。部屋を照らすのは、そんなモニターの明かりだけ。晴れていれば、もう少しは日の光も差し込んで明るいはずではあったが、厚い雲が鎮座し続けている今日の空に、そんな光は期待できない。
夕方を大きく過ぎた午後8時になってイブニングニュースで今日社会で起きた諸々を確認し、シャワールームに向かった。41℃に合わせた温水が体中に流れていく。20分ほど穢れを落とし、一息ついてシャワー室を後にする。冷蔵庫で冷やしたミネラルウォーターを飲み干し、またパソコンのモニターに向き合った。
都会の街並みを映すライブ映像には相変わらずの人だかりで、私の性格には合わない場所であるという考えはいつまでも変わらない。確かにこの街も政令指定都市として一定の人口ではあるが、明らかに比ではない人の多さである。旅行で行く分には楽しい場所ではありそうだが。
画面越しの都会は煌々と光る電飾やビジョンにより、まさしく眠らない街という比喩がピッタリである。彼らの話し声や叫び声が大きな塊となってさんざめく。それは、まったくと言っていいほどに足並みを揃えない曲線をつなぎ合わせる"いびつ"な球体を作り上げている。
出勤日だろうが休日だろうが、我々に与えられた時間に寸分の違いも無く全て同一のものである。今日は、どんな一日だっただろう。インターネットという画期的な情報通信網の恩恵は、我々の生活や社会基盤にも広がる。ジャンルの垣根を越えて、既知・未知の逸楽に時間を使えることは、現代ならではの幸福の形である。
一つ、また一つと街の明かりが消えていく。それらは、各家庭の一日を終えていくことを意味する。今日にさよなら。そして来る明日にこんにちはと、言葉にせずとも告げるのだろう。繰り返していく挨拶の数珠が、気づかないだけで一つずつ増えていく。私もそろそろ眠りに。そっと、おやすみ。
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