第15話 王族専用エリア
もうすぐ夏休みが終わるという頃になって、国王の謁見があると言い渡された。
「ほぇ?」
言い渡された時、ソファーに寝転がってクッキーをつまみながら本を読んでいたので、この返事なんだけどね。我ながら、気の抜けまくった返事だわ。
「ほぇ? じゃあ無い、……ったく。騒動の関係者を集めるって言っただろう」
もう忘れたのかって感じで、アルフレッド殿下に言われた。
正式に婚約したからって、今迄の関係が変わったりは……しないよね、やっぱり。
「あっ、うん。覚えているけど……。今日? いきなり? ドレスなんて持ってきてないよ?」
当然ながら、陛下の前に出られるドレスなんか持ってきていない。
「ああ。それはこちらで用意した。ほら行くぞ」
そう言って、アルフレッド殿下から王族専用エリアにある部屋へ連れて行かれた。
そのお部屋で、湯あみをさせられ謁見用のドレスに着替えさせられた。
アルフレッド殿下が選んだという濃いピンクのドレスを着た鏡の中の自分は、幼く見える。
「へぇ。可愛らしく出来たな。じゃあ、行こうか」
私の用意が出来た頃、部屋へやって来たアルフレッド殿下は、そう言って自分の腕に掴まらせて、私と一緒に廊下を歩きだした。
「アルにとって、私はやっぱり子どもに見えてるのかな」
私はぽつりと呟いてしまった。
「何?」
アルフレッド殿下が聞き返している。
「何でもない」
答えなんか聞きたくないもん。
「今だけだからな。子どもでいられるのも」
「え?」
「その内、嫌でも大人になるんだから、良いんじゃ無いのか? 学園卒業までくらいは、待てるから」
軽い感じで言ってくれる。何だ、分かってくれていたんだ。
「それはそれとして、今日はワザとだ。子どもに見える方が都合が良い」
アルフレッド殿下が、そう言ったところで謁見をするお部屋へたどり着いた。
護衛で立っている近衛兵が扉を開ける。私たちは礼を執り部屋の中へ入って行った。
部屋にはもうすでに、王子達とその婚約者達が控えている。
私たちが入った後、陛下も宰相他文官達を連れて入室してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。