第10話 王子たちの婚約事情
「あのな。オリビアも侯爵令嬢なら知っていると思うが。王太子候補の第一王子や第二王子あたりの婚姻には、本人の意思は全く反映されないだろう?」
「そうね。家の意向ですら反映されないから……」
簡単な話、派閥同士の意向で決まっているのだから、今さらだ。
「だから普通は、一度決まった婚約は
そうよね、乙女ゲームの世界の方がおかしいんだと、14年間この世界で生きてきた今だったら分かる。
「なのに、強行してしまった、しかも同じ王妃の派閥の二人が。アイザックも愛妾あたりで収めれば良いものを、あんな公の場で婚約破棄などするから、狙われるんだ」
へ? いや、何か嫌な予感がするよ。
この先を全力で聞きたくないって、私の勘が言っている。
「一応、形だけは近衛兵が動いているだろうけど。王宮内で起こった
「な……何で、形だけって。って、誰が狙われているの?」
体が震えてしまっている、先は聞きたくないのについ質問をしてしまった。
「乙女ゲームのヒロインだろう? 国王派以外の、全ての派閥から狙われるんじゃないか? 邪魔だもんな」
「国王派以外って?」
「国王派は、今の政権を握っているからな。同じ派閥から、続けて王妃が出ないよう、これでも考えられているんだぜ」
「えっと、つまり。同じ派閥が政権を独占しないように……って事?」
だよね。第一王子か第二王子が国王になったら現王妃の派閥が、次の国王派になるんだもんね。
今政権を執っている国王派には関係無いのか。
「そう。派閥間の争いにならないよう、順繰りに回しているんだよ。なのに、その均衡を破るような真似をするから、愛しいハズのヒロインを命の危険にさらしてる」
アルフレッド殿下は、平然と言っているけど、
「それってマズいんじゃあ」
やっぱり私は焦ってしまう。だって、死んじゃうかもって……。
「自業自得だろ? それに、まだ警告レベルだよ。しばらくは、命の危険は無いから大丈夫。うん、このクッキー美味しい。食べなよ」
まだざわざわしたような気配がするのに、平然と飲み食いしているよね。アルフレッド殿下。
まぁ、彼が落ち着いているのなら大丈夫かな?
そう思って、私もクッキーを口に入れた。
「あ。美味しい」
「だろ?」
そう言って、アルフレッド殿下は私に笑って見せた。
その日の帰り。やっぱりアルフレッド殿下は、馬車の所まで送ってくれたけど、廊下から見た中庭はまだ人が大勢いた。
もう片付けをしている使用人がほとんどなのだろう。
人々の隙間から、地面に血が流れているのが見えた。
アルフレッド殿下に気付いた近衛兵が、近付いて来て何か報告をしていた。
私は思わずアルフレッド殿下の服を掴んでしまう。
「何? やっぱり怖い?」
「いや、怖いよ。だって……」
だって、誰かが流した血だよ。私たちは乙女ゲームのヒロインなんて言っているけど、ベリアルだってこの世界で生きている人間なんだもの。
「ヒロインは大丈夫みたいだよ。近くで給仕をしていた侍女が、腕を刺されたのだそうだから」
「そういう問題じゃ無い」
「そう?」
アルフレッド殿下の服を離せないでいる私を自分の方に引き寄せ、頭を撫でてくれた。
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