第27話

「誰だお前ら!どうやって入ったんだ!」

大声に驚いて章生あきおが振り返ると、怒りに震える黒崎が立っていた。

「黒崎さん、今までどこにいたんですか?」

「受付に呼び出されたんだよ!お前らだろ、ここで何をしてた?」

「OSを修正しました、これでPD-105の暴走は止まります」

綾可あやかは冷静に言った。

「暴走だと、何を言ってる?」

「黒崎さん、あたたはアルファを使うべきではなかった。何故なぜ自分の力でOSを作ろうとせず、博士のアルファに頼ってしまったのですか」

「うるさい、アルファはなんだ、たまたま博士には奇跡が起きて、僕には起きなかった、そんなのじゃないか!」

二人の会話が理解できず、章生は困惑した。

「あの、一体何が起こっているのか説明していただけませんか」

「それよりも、急がないとまた事故が起こるのではありませんか」

「そうでした、現実の事故を止めないと!」


現実世界 ロボットモーターショー会場

『突然ではございますが、ハヤセモータースとホンマ技研のロボットによるデモンストレーションバトルを中断させていただきます‥』

アナウンスが流れ、ざわつく観衆。

「どういうことよ!」

思わず声を上げるろんり。その時、携帯が鳴った。

(え、アヤカ?)


ハヤセモーターススタッフルームの前

章生の連絡を受けてやって来た丹下たんげがドンドンとドアを叩いた。

「黒崎さんドアを開けてください」

ドアが開き、いらいらした表情の黒崎が現れた。

「うるさい!忙しいんだ、後にしてくれ」

「そのコンピューターを調べさせて頂きます」

一瞬にして黒崎の顔色が変わった。

「こ、このコンピューターには企業秘密が詰まってるんだ、勝手に触るのは許さないぞ!」

「捜査にご協力願います」

科捜研の樺島かばしまはコンピューターに駆け寄ると、コンソール画面でアクセス状態を確認した。

「やはりPD-105はこのPCを中継点ブリッジにして管理サーバー以外のコンピュータと通信していますね」

「黒崎さん、説明していただけますかな?」

丹下が問い詰める。

「そ、それは開発用のサーバーさ‥PDの制御に使っているのは管理サーバーだけってわけじゃないんだ」

「それなら、なぜ調査の時にそのサーバの存在を隠したんですか!」

営業本部長の三田がやってくる、

「何の騒ぎです?国交省だけでなく警察まで我が社の重要イベントを邪魔じゃまなさるんですか?」

「先日の事故に関係する情報を、に隠していた可能性が出て来ましたので‥」

「故意に隠したですと、黒崎君、ちゃんと説明できるんでしょうね?」

「‥‥ばからしい」

激高していた黒崎の表情が急に冷笑へと変わった。

「じゃあ、どうすれば良かったんだ?

桐生森雄が残していったラムダOSは子供だましもいいとこだった‥

そんなわけないんだ!どこかに本物がある筈だ、そう思った僕は残されていた資料をとことん調べた‥そして見付けたんだ」

「それがアルファだったんですね?」

ディープスペースから戻り駆け付けた章生が言った。

『アルファだって!あれは廃棄されたはずでしょう』

三田がヒステリックに言った。

「これから話す事は、ある筋から聞いた話に私の想像を加えたものです。補足できる方がいればお願いします」

そう前置きしてから章生は話し始めた。

「アルファはラムダOS以前に開発されたロボット制御システムで、桐生森雄博士が発明した自動開発システム『ADS』が生み出した最初のプログラムでした。

その特徴は、ドライバーの考えをAIが予測する事による操作性の高さにあります。しかし、完成したアルファはしばらくすると全くドライバーの操作を受け付けなくなった。

原因を調べる為に博士は、アルファのAIに対してチューリングテストを行う事にしました。このテストには老若男女ろうにゃくなんにょを問わず様々な被験者が参加した。

ところが、そこで被験者が意識不明になるという事故が起きた。原因は被験者の精神とアルファのが共鳴した事による精神汚染でした」

「それでアルファは危険だと判断され、解体廃棄された、だからアルファが存在する訳がない、だろ‥バカが!みんな博士に騙されたんだよ」

黒崎が吐き捨てる様に言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る