第3話 ① 正しい進化ということ

これぞ大学日本拳法

 この決勝戦で特に強い印象を受けたのは、明治大学の先鋒木村氏と、同大将小森氏の戦いぶりでした。そして、そこから今回の「芸術鑑賞の旅」が始まったのです。


 ① 正しい進化ということ


 ② 鞘に入った刀と抜き身の刀


 ③ 理性の拳法と知性の拳法


 ④ 日本拳法とは芸術である

   

 ⑤ 大学日本拳法における「セイバー・メトリクス」

    



① 正しい進化ということ

 小森氏も木村氏も、共に順調に進化している。

 てなことを言うと「大きなお世話だ。部外者のお前に何がわかる」なんて言われるかもしれませんが、私には「正常な進化ができない組織」という経験があるのです。


 まあ、個人的な私の体験談はあと回しにして、要は、木村氏は2019年日本拳法個人戦で日本一となり、小森氏は明治のキャプテンとして迎えた2020年。

 日本一とか、明治大学のトップにいる者としては、一年間、毎日練習したくてうずうずしていたはずです。

 そこに起きたのがコロナのバカ騒ぎ。

  普通なら、学校で練習できないのであれば、かつて某校の実地練習場だった新宿の歌舞伎町で練習しよう、なんてことになる。

 しかし、そういう安易な道に進まず、その強い思いを一年間凝縮し、12月の府立(全日)という一瞬に爆発させた。


 無観客とはいえ、天知る・地知る・人ぞ知る。祖父たちから聞いた、80年前、公務員・マスコミによる「大本営発表茶番劇」を髣髴とさせる今回のカラ騒ぎのなかで、私たちの心をしっかりと現実につなぎとめてくれた、貴重な真実といえるでしょう。

 

 進化といい、本来のなるべき変化・正しい成長を遂げているということですが、小森氏は技術が芸術となり、木村氏の場合、あれだけ強くなってもなお、より合理的な勝ち方を追求している。大商大との準決勝戦における教訓を決勝戦で確実に生かす、あくまでも道の一環としての勝利を目指す。

 この正当な進化というのは、彼ら個人の意思と努力の賜物には違いないのでしょうが、彼らの存在する環境もまた大いにその手助けをしてくれている。

 それは「明治大学日本拳法部」という組織の力ではないのでしょうか。


 下級生は日々の練習で技術の進歩向上を目指すのでしょうが、明治の上級生ともなれば、ほとんどが拳法歴15年なんて人たちですから、技術的なことよりも、精神的な緊張感を維持することの方が重要になってくる。


 明治のマネージャーさんたちのブログによると、監督・コーチ・OB諸氏の誰かが、必ずといっていいほど練習に参加している。上級生になっても尚且つ、自分よりも上の人間が「見ている」という環境が緊張感を生み、正しい成長のためのいい刺激となっているのではないのでしょうか。

 


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