逃亡


「いっしょに抜け出さない?」


 女は少し開いた扉を見つめて言った。逃げ出すなら今が絶好の機会だろう。けれど彼女の妹は首を振る。


「私達が抜けだしたら、あの子が悲しむわ」


 あの子というのは、彼女達の友達である女の子だ。彼女は女の子が大好きだった。


「それに、私達が外に出て生きていけるのかしら」


 彼女達は生まれた時から檻のような場所で生きてきた。彼女の疑問は最もだった。


「大丈夫、私がなんとかするよ。自由になりたいとは思わない?」

「……自由には、なりたいけど」


 妹の言葉に、姉は笑みを浮かべて、檻の外に出た。


「ほら!あなたも一緒に!」

「う、うん……!」


 二人は檻を出て、自らの羽を使い、空へと羽ばたいていった。






「なんてことなの……?!」


 この家の主である女性はもぬけの殻となった籠を見て悲鳴を上げた。


「折角貴重なハーピー族を捕まえたのに!コレクションが減ってしまったじゃない!」


 彼女の悲鳴とは裏腹に、二人のハーピーは楽しそうに空を飛んでいた。


Fin.

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