慢心した男の末路


 迂闊だった。俺は誰よりも強いと慢心していたのだ。仲間たちが『銃には気を付けろ』と言っているのを見て鼻で笑っていた。銃など、俺には通用しないさ。銃がないとなんの力もない無力な奴らだ。俺の腕っぷしを見たら腰を抜かしてしまうだろう。俺はそう信じて疑わなかった。

 けれど奴らは狡猾だった。俺が黄金に輝く自慢の髪を風に靡かせ、悠々と歩いていた時だった。奴らは複数で俺を取り囲んだのだ。俺は為すすべなく銃を撃ち込まれてしまった。






 銃を撃たれると死ぬと聞いていた。だが、俺は生きている。生きて、この場所にいる。どういうことなのだろうか。俺は未だに重い瞼をしっかりと開け、周囲を見渡す。どうやら草原にいるようだ。試しに歩いてみると、高い壁によって行く手を阻まれた。この壁はぐるりと囲うように聳え立っている。救いを求めるように上を見るとそこには太陽があった。見知った太陽にほっとするも、壁は高く聳え立っており足場になりそうなものもない。登ろうとしたところで滑って落ちてしまうだろう。俺は奴らの手によって、壁に囲まれたこの狭い場所に連れて来られたようだった。

 俺はなんとか出口を探そうと、歩き回る。この場所は草原と浅い池、それから小さい洞窟があった。洞窟に入ってみると、その先に道が見えた。道の先には光が見える。あれはきっと太陽の光だ。何だ、こんなところに出口があったのか。俺は逸る気持ちのままに走り出した。が、ゴン、という鈍い音がして俺は座り込んでしまった。何かに行く手を阻まれている。これは何だ?今度はゆっくりと前に進んでみる。やはり何かに阻まれ進めない。

 色々と試してみたが、一向に外に出ることは出来なかった。これは透明な壁のようだ。首を捻っていると、透明な壁を挟んで、奴らがやって来た。奴らはやはり狡猾だ。一人ではなく、複数でいつもやって来る。俺は大声を出して威嚇する。しかし、奴らは驚いたものの怯えるどころか喜んでいた。その反応が癪に障り攻撃しようとしたがやはり壁に阻まれてしまった。目の前の小さな奴が俺を指さした。


「ライオンしゃん、おおきいね!ガオーっていったよ」


Fin.

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