玩具の声
「ワーオ!」
赤ちゃんが目の前のカエルを模した玩具に触れると、音が聞こえた。興味深そうに玩具を見つめた赤ちゃんは、再び玩具に手を伸ばす。
「ヤヒー!」
玩具が出す音には種類があるようだ。赤ちゃんはキャッキャと笑いながら玩具を触ったり叩いたりしている。玩具はその度に音を出している。
「ウェーイ!」
掛け声のチョイスがどこかおかしいような気がするが、海外ではこういう声のチョイスが好まれるのだろうか。日本製ではないし、この辺りは価値観の違いなのかもしれない。
「ヤヒー!」
「ワーオ!」
「ヤヒー!」
「ウェーイ!」
「ウェーイ!」
「ウェーイ!」
「ウェーイ!」
玩具に興味がなくなったのか、他の玩具で遊ぶ赤ちゃん。散々遊び相手になったカエルの玩具は、身体を横たえており、先程から同じ言葉を繰り返している。いい加減鬱陶しいので私は電源をオフにしてしまった。また赤ちゃんが興味を持ったら電源を入れることにしよう。
「……」
ああ、ようやく静かになった。
俺は目の前の男に必死に声をかける。
『おい!聞いてくれ!!』
目の前の男は興味深そうに俺を見つめ、手を伸ばしてきた。
『困ったことになったんだ!助けてくれ!』
男は確かめるように俺の身体を撫で、思い切り叩いた。
『おい、やめてくれ!痛い!』
男は思い思いに俺の身体を叩く。痛くて声を上げるが、どうやら俺の声は届いていないようだ。それどころか、俺に暴力をふるっておきながら笑っている。とんだ外道だ。俺は助けを乞う相手を間違えたのかもしれない。
やがて男は興味が失せたのか、この場を去った。力なく横たわった俺は、必死に助けを呼んだ。
『目が覚めたらこんな姿になっていたんだ!お願いだ!誰か、誰か助けてくれ!!』
俺の声が届いたのか、女が俺の身体を持ち上げた。ああ、良かった。話が通じる奴がようやく現れ ――。
ブツッ
Fin.
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