ごはんを奪える距離
春嵐
α
生まれや性格の産物なのだろうか。
彼女は、僕の食べているごはんを奪う。平気で奪って食べる。
今日のごはんは野菜炒め。僕が作りました。力作です。
そして今。目の前。彼女が自身の野菜炒めを食べ尽くし、こちらを見つめている。かわいい。しかし、少しでも目を逸らすと、僕の野菜炒めが取られる。丁寧に切り揃えたたけのこが。しゃきしゃきのキャベツが。奪われてしまう。
だから、彼女のことを見つめる。見つめられている間、彼女は僕のごはんを狙ってこない。
彼女の過去を、僕は知らない。きっと、知ってもあまり良いことはないのだと思う。いつもは普通で、上品さすら感じられる彼女が、ふたりきりになると僕のごはんを奪う。それが、どことなく切なかった。
あっ。
しまった。一瞬の物思いに耽ったタイミングで、たけのこを取られた。
彼女が、美味しそうにたけのこを食べている。かわいい。しかし、やはり切なさを感じてしまう僕がいる。
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