第31話

「ビビアンのカウンターが発動したら、あなた酷い目に遭うわよ?」


 マチルダがメリッサに忠告した。


「えっ!? そうなんですか!? 王女殿下!?」


「論より証拠ね。ビビアン、立ちなさい」


「は、はい...」


 マチルダが何をする気なのか分からず、言われた通りにビビアンは立ち上がった。するとマチルダは物も言わずに扇子でビビアンに殴り掛かった。


 お茶会参加者全員が息を呑む気配が伝わった瞬間、ビビアンはスッと扇子を避けてマチルダにカウンターを叩き込む。


 だがマチルダはビビアンの拳を事もなく右手で受け止める。


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 ビビアンが自分の仕出かしたことに恐怖で戦く。


「はわわわっ! す、すいません! マチルダ様! すいません! すいません!」


 ビビアンはコメツキバッタのようにペコペコとお辞儀を繰り返して謝った。


「ビビアン、謝らなくていいのよ。私がわざとカウンターを発動させたんだから。メリッサ嬢、これでビビアンの能力がどういったものなのかご理解頂けたかしら?」


 メリッサは驚愕のあまりカクカクと首を縦に振るしかなかった。


「ちなみにビビアンのカウンターは口撃にも反応するのよ? あなたさっきからビビアンを冴えないとか貶してたようだけど良かったわね? ヘイトが溜まらなくて。カウンターが発動して口撃を食らってたら、あなたしばらくは立ち直れなかったかもよ?」


 そう言ってマチルダは意味深に微笑んだ。メリッサはもう言葉もなく真っ青になって震えていた。


 メリッサはまだ婚約者の居ないライオスを狙っている。だからライオスが何かと気に掛けているというビビアンのことが気に食わなかった。


 お茶会の席でちょっとビビアンのことを虐めてやろうと思っていたのだが、その魂胆をマチルダには見抜かれていたようだ。


「さぁ皆さん、ちょっとした余興は終わり。お茶会を続けましょうか」


 そう言ってマチルダは場を仕切り直した。


 

◇◇◇



 その後、しばらくは何事もなくお茶会は進み、そろそろお開きの時間に差し掛かった頃だった。


「あらぁ? なんだか田舎臭い匂いがすると思ったら、あなただったのね? 田舎王女の名に相応しい、ショボくれたお茶会開いてんのねぇ」


 マチルダのことを「田舎王女」と貶めながら、嘲笑うようにして現れたのは、第1王女のカトリーナである。その傍らには見目麗しい美男子を侍らせている。


 正妃の子であるカトリーナは、昔から側室の子であるマチルダをこうして貶めていた。


 マチルダの柳眉が逆立った。

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