第30話
いよいよお茶会の当日を迎えた。
初めて参加するビビアンは緊張でガチガチになっていた。
「ビビ、もっとリラックスしなさい。顔が固いわよ?」
マチルダが発破を掛ける。
「そ、そう言われましても...」
「胸を張りなさい。ドレスも似合っててとっても可愛いんだから」
そう、あの日買ったドレスの中の一着だ。
「が、頑張ります...」
やがてお茶会に参加する令嬢達が次々に席に付き、お茶会がスタートした。
◇◇◇
お茶会は和やかな雰囲気で始まった。ホストであるマチルダの留学中のエピソードなどの話題で盛り上がっていた。
その時だった。
「ねぇ、あなた。王宮に住んでるってホントなの!?」
侯爵令嬢であるメリッサがビビアンに話し掛けて来た。
「は、はい...お世話になっております...」
「どういった経緯で!?」
ビビアンは困った。全ての事情を詳らかにして良いものなのかどうか、判断できなかったからだ。
慌ててマチルダを仰ぎ見るも、彼女は知らんぷりしてお茶を飲んでいる。助けてはくれないようだ。これくらいは自分で乗り越えてみろということなのだろう。
「えっと...スキル持ちの私が実家で冷遇されていたのを見兼ねたライオス殿下が保護して下さったからです...」
「ふうん、あなたスキル持ちだったのね。でもなんでライオス殿下が直々にあなたを?」
「あの...ライオス殿下と私は幼馴染みなんです...」
「なるほど、幼馴染みねぇ。でもいくらスキル持ちで幼馴染みとはいえ、あなたみたいな冴えない女をわざわざ保護したりするのかしら...」
それは質問というより自問のようだったので、ビビアンは黙っていた。冴えないと言われる自覚はあったから、反論する気にはならなかったというのもある。しばらく黙考していたメリッサが徐に尋ねて来た。
「ところであなたのスキルってなんなの?」
「えっと...カウンターです...」
「カウンター!? 聞いたことないスキルね。どんなものなの? ここでやって見せてよ?」
「す、すいません...こ、ここではちょっと...」
ビビアンは慌てた。さすがにこのお茶会の席では見せられない。
「なによ、勿体ぶらなくてもいいじゃない。それとも私には見せられないっていうの!?」
これは不味い。メリッサの纏う雰囲気が剣呑なものになって来た。カウンターが発動する前になんとか矛先を変えないと酷い目に合う。メリッサが。
「お止めなさいな」
するとここでようやくマチルダが割って入ってくれた。
ビビアンはホッと胸を撫で下ろした。
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