第14話

 全身をライオスの色に染め上げられたビビアンは、恥ずかしくて顔を上げられないまま食堂に案内された。


 食堂で待っていたライオスは、そんなビビアンを見詰めて満足そうに目を細める。


「良く似合ってる...」


「あ、ありがとうございます...あ、あの、ライオス様...これは一体...」


「二人っきりの時はライと呼べと言ったろう?」


「ら、ライ様...そ、それでその...」


「俺からのプレゼントだ。受け取ってくれ」


「い、頂けません! こ、こんな高そうな物...」


 ビビアンは慌てて首を横に振った。 


「いいんだ。それにどうせマトモな服を作って貰ってなかったんだろ? 小さなトランク一つしか持って来なかった時点で丸分かりだ」


「うぅ...」


 図星なので何も言えない。確かに母親が儚くなってからドレスやアクセサリー類を買って貰った記憶が無い。家の中ではメイド服だったし、学園には制服で通っている。婚約者のバレットからはそもそもプレゼントされたこともない。


「それは元々、ビビアンのために揃えた物なんだ。身に付けて貰わないと困る」


「と、どうして私のために!?」


 ライオスはビビアンの婚約者ではない。単なる幼馴染みだ。それなのにどうしてここまでしてくれるのか、疑問しか浮かばなかった。


「それはな...いや、今はまだ話せない。時が来ればちゃんと話すから。今はただ黙って着ててくれ」


「わ、分かりました...」


 そう言われてしまえば仕方ない。ビビアンは釈然としないまでも頷くしかなかった。


「あ、あの、それでライオ...ライ様、私はこの王宮で何をすれば良いんでしょうか?」


「そうだな...」


 ライオスはしばし黙考した後、


「何もしなくていいんだが、それじゃあ納得しないって顔してるな?」


「は、はい...それはさすがに申し訳なく...」


「だったらこうしよう。貴族子女が受けるマナーやダンスの教育を受けて貰おう。教師はこちらで用意する。どうせマトモな教育も受けさせて貰えなかったんだろう?」


「は、はい...」


 これまた図星なのでビビアンは何も言えなかった。貴族としての教育を受けられたのは、母親が生きている間だけだったのだ。


「それと空いた時間は俺の公務を手伝って貰おうか」


「こ、公務ですか!? で、ても...わ、私なんかにお手伝い出来ますでしょうか...」


「なあに、そんなに難しいことをやらせるつもりはないさ。気楽に構えてくれていい」


「は、はぁ...」


 これまた納得できないまでも、ビビアンは頷くしかなかった。

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