第6話
ビビアンが通っているのは王立学園という学校で、貴族しか通うことを許されない。
なのでビビアン以外は当然のように馬車で通学している。その馬車を避けるようにしながら歩いていると、
「ビビアンっ!」
一際豪華な馬車がビビアンの目の前で止まり、ビビアンの名を叫んだ誰かが扉を開けて降りて来た。
「あ、これはこれはライオス殿下。おはようございます」
この国の第2王子ライオスだった。ビビアンとは幼馴染みと呼べる関係にある。ビビアンの母親とライオスの母親、つまり王妃が親友同士だったので、ビビアンは幼い時から王宮に連れて来られていた。
その時に同い年ということもあり、ライオスとは良く一緒に遊んだりしていた。その頃はお互いを「ビビ」「ライ」と呼び合っていた仲だった。
だがビビアンの母親が亡くなってからは、一度も王宮に行くことはなくなっていた。ライオスと再会したのは、学園に入学してからだった。
「おはようじゃないっ! なんで徒歩通学なんてしてるんだ!? なにかあったらどうする!?」
貴族であること、ましてや令嬢であることを鑑みれば、確かに営利目的での誘拐などの犯罪に巻き込まれることを危惧するのは当然である。
ビビアンは仲の悪い義妹と一緒の馬車に乗るよりは、歩いた方がよっぽど気楽でいいと思っていたが、言われてみれば危機意識が足りなかったといえよう。
「え、え~と...その...」
ビビアンはなんて答えたらいいのか逡巡した。
「まさか...実家で虐められているのか?」
ライオスは嫌な予感がした。ビビアンの家庭の事情は把握しているからだ。
「...いえ...その...」
ビビアンは更に答えに窮する。
「ビビアン、なんで両手を後ろに隠す?」
ライオスは尚もグイグイ迫って来る。
「......」
「見せてみろ」
「.......」
ビビアンは観念して仕方なくライオスに荒れ放題の両手を見せた。
「な、なんだこれは!?」
ビビアンは肌が白い。白魚のような指は罅割れとあかぎれで酷い状態になっていた。
「...詳しい話を聞かせて貰おうか?」
ライオスはビビアンを馬車に乗せた。ビビアンは大人しく従うしかなかった。
◇◇◇
「なるほどな...つまり屋敷の中では使用人以下の扱いをされてると...」
「は、はい...」
ガツンッ!
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
ライオスが馬車の座席を蹴り上げたので、ビビアンは驚いて悲鳴を上げた。
「あんのクサレ外道ども! 俺のビビアンになんてことしやがる!」
「えっ!? えぇっ!? えぇぇっ!?」
いきなり激昂したライオスに戸惑うばかりのビビアンだった。
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