記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

第21話 少人数子供預かり所（食事付き）

しかし少人数制の預かりをやるにしても、人数的に限度がある。教会のようなところか、教会で、皆で子供預かりをできないものかと、アルはソニアに聞くことにした。

「教会は勉学を教えていたりする目的で、子供を預かっている。教会で赤ん坊を預かるというのはあまり聞いたことはないな。すてられたあかんぼうを拾うくらいだろうな。

カタリの教会は人間専門だ。獣人の子供は預かっていない。この国は獣人が集団で何かするのを嫌う。恐れているのかもしれんが、だから獣人の勉学を学べるところはない。獣人は集落で長老たちから学ぶのみだな。

獣人は皆群れで子育てをする。だから子供預かり所みたいなところは必要ではなかったが、都会に出てきた獣は、色んな働き口で皆ばらばらだ。赤ん坊や子供を預かる場所は必要だろうな」

ということである。

「最近黒猫獣人の人たちが子供とか私に預けていくんですけど、子供を預かれるのか不安で、せめて少人数制にしてと思って言ってるんですけど、黒猫獣人の人とかまったく人の話聞かなくて、どんどんお子さんうちに置いていくんですよ。私の目が行き届かなくなるので必死に見ながら家事するの限界です」

アルは泣きそうになる。

泣きそうなアルを引き寄せて、ソルは頭をなでて慰める。

「分かるぞ。俺もソルとシルカが赤ん坊だったころ、仕事をしながらの獲物をとるのと育児で、死にそうになった。ソルとシルカが死なないで育ったのも、今から考えると奇跡だな。死に物狂いで人に育児を聞いたり、信用できる奴に頼ることができたのがよかったな。二人の子供を育てるだけでもいっぱいいっぱいだった。

幸い子供を預けていく猫獣人のマフィアどもは金を払っていく。そいつで人を雇おうか。それにジル、あいつもいつもお前の飯を食べに来るし、たまには手伝わせるのもいいだろう」

「お願いします！」

心底ほっとして、アルは眠たくなってきた。

「そうだ。私一度ソニアさんと一緒に山へ食材探しに行きたいんですよね。ソニアさんの仲間の食事会、今度の日曜日じゃないですか」

ソニアの冒険仲間との食事会は、アルが誘拐されたりとか、ライの失語症とかで、延期に延期を重ねていた。

「また延期してもいいんだぞ」

「大丈夫です」

アルはもじもじ身じろぐ可愛い眠り顔のシルカの頭をなでた。シルカは昼寝中である。隣では黒髪の猫耳の少女のシズクが身じろぎした。シズクも今日預かった子だ。マフィア黒猫獣人の知り合いの女の人の子だ。

アルはシズクの頭もなでる。

しかし、カタリは教会の副業は、男娼だと言っていた。

まさか教会にいる捨て子の子とか男娼として働かせているんじゃないだろうなと、不安に思う。今度語りに聞いてみようと思う。

アルはあくびをして眠気をとばす。

もう夕方を過ぎて夜だ。シズクちゃんの預かりは夜までなのだが。母親の女の人はまだ迎えに来ない。

赤ん坊は寝泊まり預かりはしていない。やはり赤ん坊の場合夜は、つきっきりで見ていないといけないからだ。

子供の場合も夜どうなるかないから、寝泊まりで預かりはできない。黒猫獣人さんからは、迎えに行けないときもあるから子供寝泊まりさせてほしいといわれているのだが。

赤ん坊預かりは昼でも最大三人くらいが限界だ。急変しやすい赤ん坊の面倒は難しいからだった。

子供たちの様子をソニアにみてもらい、アルは夜ご飯の準備をはじめた。

下処理は早朝からしていたので、もうあとは温めるだけだ。

子供を見ながら料理しないといけないのは至難の業だ。夜はソニアが子供を見ていてくれている。

昼間基本親御さんにお弁当を持ってきてもらっている。おやつはアルが作ったものを出しているが。

今日のご飯は近所の店で買ってきたパンに、肉や野菜を煮込んだスープ、ゆでた雑穀と野菜エビ？炒めなどだ。相変わらずアルは味見するが、普通だった。料理って難しいと、アルは研究中だ。

「ごめんなさい！遅くなってしまって」

黒髪の白い獣耳を付けた獣人の美しい女の人が走ってやってくる。シズクの母親のクワイエットさんだ。

「おかえりなさい。今日は夜ご飯食べますか？」

アルの少人数子供預かり所では、有料で大人への夜ご飯もだしている。子供迎えに来る親御さんが皆一応に、内の夜ご飯を食べたいといってきたからだ。

家の前には料理の料金表も出している。難しい料理はできないので、このスラムで有名なご飯を、ソニアに聞きながらアルが適当に作っている。適当に作っているので、なんかアレンジということで、創作料理みたいな感じで通っている。

「もちろん。お願い！助かるわ」

「いまシズクちゃん起こしますね」

アルはシズクの方へ向かうと、ソニアがシズクを抱え上げてきてくれた。