俺は1200年越しに小野小町に恋をした。
遠宮ナギ
第1章
「あしびきの 山どり、、」
バンッ!
教室中の視線が俺に向けられた。
「直江速いって。手加減してくれよ。」
嘆くように吉田が言う。
俺は直江俊平。俺の通う秋田の県立高校では古典の勉強の一環で百人一首を使ったかるたを行う。
以前から百人一首が好きだった俺は上の句を言われればほとんどは答えられたので負けることはなかった。
俺が百人一首に興味を持ったきっかけはたった十数文字の中に自分の願いや悲しみなどたくさんの感情を込めることができるということに魅力を感じたからだ。
中でも小野小町の句を特に気に入っていた。地元の人間だからってのもあるとは思うが。
「よし。百人一首はここまで。今日は小野小町について学んでいくぞ。」
先生がそう言うと、気怠そうにみんなが席へと戻っていった。
みんなまだまだ百人一首をやりたいようだ。
そりゃそうさ、授業なんかよりよっぽど楽だ。
そんなクラスメイトとは対象的に俺の足取りは軽い。
なんたって自分の好きな俳人を学べるんだからな。
思った以上に授業は淡々と進んでいった。
「次、百夜通い伝説について触れるぞ」
百夜通い伝説。
小町に恋をした男に対し、百日休まず私のもとに訪れたら意のままにして良い。と小町が言うとそれを真に受けた男が毎晩通ったが最後の雪の夜に命を落とすという悲しい伝説だ。
百日間通ってでも会いたいほどの美女だったかは置いといて、俺だったらそんなヘマはしないと思う。
俺なら根性で耐えられる、と信じたい。
黒板にズラズラと書かれた文字をノートに書き写そうとしたとき、今まで経験したこともないほどの睡魔に襲われた。これまで居眠りなど一度もしたことが無いというのになぜこのタイミングでなのか。
俺は考えるまもなく机に突っ伏した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます