シンテキノ彼方

@TRGlow

あの日

人はいつか死ぬ。

それは避けようのないもの。

これがいわゆるロマンチストな奴らがいう運命というものではなかろうか。


故意だろうが事故だろうが死ぬ時は死ぬ。

死ぬなら、天寿を全うしたい。

そんな人生を大それた望みかもしれないが大抵の人間はそうであろう。


恋をして、結ばれて子を成す。

至極真っ当、生命の歩み。

しゅを残し、命を繋ぐ。

明日も幸せを願い、今を生きる。

それが崩れる時というのはどういう時なのだろうか。


現代においてその幸せとは変わりつつあるのだろうか。


それは、誰にも分からない。

ただ言えるのは幸せは感じ方次第なのだろう。


だが、目の前の光景はそれを全て否定していた。


幸せ、生命の謳歌、自己以外など決して可愛くはなく我先にと逃げ惑う人々。


黒々とした煙が池袋の街所々から昇る。

咳き込む声、泣き叫ぶ声、怒鳴りちらす声、諦めたように笑う声、その中で他人を気遣う声。


目の前に広がる全てが、五感を持ってこの地獄が如何なるものかを伝えてくる。


その喧騒の最中、彼は思った。


何がどうなればこうなるんだ、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る