幼くなっても悪役令嬢の姉はヒロインの妹を溺愛す

風間 シンヤ

私とした事が完全に油断してました……

  はじめましての皆さんもお久しぶりの皆さんも、自己紹介します。どうも、今この世界ではアンナ・ステインローズをやっています。

  この世界とか、アンナ・ステインローズをやっていますとかなんでそんなニュアンスの言葉を使っているかと言いますと、私は元々この世界とは違う世界から、この世界のアンナ・ステインローズに転生したのです。


  そもそも、私は地球という世界と言うべきなのか、その世界で桐島きりしま 杏奈あんなという名前のごく普通の、ちょっと妹キャラが大好きなオタクの女子高生でした。

  そんな私は、一目で惚れた妹キャラヒロインが出る乙女ゲーム「リリカルスクールラブ」を完徹でプレイした後、不幸にも事故にあって桐島 杏奈としての生を終えてしまいました。

  

  そして、アンナ・ステインローズとしてこの世界に転生したのですが、5歳までは自分の前世を知らずに普通にアンナ・ステインローズとして過ごしていたのですが、超激可愛天使の私の妹アリー・ステインローズとお庭で戯れていた時に、転んで頭打って前世の記憶の大半を思い出したのです。

  それで、思い出してみたらそれはもう衝撃でした。何故なら、自分が転生したこの世界が死ぬ直前にプレイしていた乙女ゲーム「リリカルスクールラブ」と同じ世界だったのです。

  しかも、更に私に衝撃を与えたのは、ヒロインは目の前にいる私のプリチービューティーマイエンジェルのアリーで、私はそのアリーに醜い嫉妬をして虐め、殺害未遂(バットエンドだと普通に殺害する)を犯す悪役令嬢だったんです。

  妹大好きな私にアリーを虐めたり殺したり出来るはずがない。かと言って、アリーの幸せな恋愛は見守りたい私は、色々な幸運な力に恵まれ、アリーを影からガッチリと見守りました。

  その甲斐あって、アリーにピンチが訪れたのをなんとか助け、無事にアリーを救い、ついでにウィンドガル王国の危機も救いました。

  が、結局「リリカルスクールラブ」の攻略対象への告白イベントはなく、ノーマルエンド的な終わりを迎え、まぁ、とりあえず今後もアリーを見守りつつ、最強可愛世界一天使なマイ妹を愛でる生活を送ろうと思っていたのですが……



  どうやら、またアリーの身に危機が迫っているようで……




  まぁ、その危機もものの数分で私が排除したのですが……


「ぐっ……!?くそぅ……!?まさかこの上級悪魔たる私が……!?こんな小娘に……!!?」


地に倒れ伏し、息も絶え絶えにそう言うこの男は、自分でも言った通り悪魔です。上級かどうかは分かりませんが、ちょっと私が殴った程度でボロボロになってしまったので、そこまで強い悪魔じゃないのは間違いないでしょう。


  そもそも、何故この悪魔が私にボコボコにされたのかと言うと、話は数時間前、私がいつものようにノイエル町を懐具合を確認して、屋敷に戻る途中にこの悪魔が私の屋敷の近くまでやって来てクソみたいな事を宣言したのです。


「ステインローズの者よ!喜べ!アリー・ステインローズは我が主の花嫁として選ばれたのだ!生命が惜しくばアリー・ステインローズを差し出すのだ!!」


この発言にもちろんブチ切れた私は、この悪魔をステインローズ領にある山奥に投げ飛ばし、その山でこの悪魔をボコボコのズタボロにして現在に至る。



「さて……それじゃあ……貴方の主とやら……教えてもらおうかしら?」


「ふ……ふん……!?誰が貴様のような小娘なんかに……!!」


ピンポンパンポ〜ン!えぇ、しばらく良い子に見せられない激しい暴力シーンが続くので、今日も最可愛なマイエンジェル妹のアリーの、可愛すぎて悶絶してしまった寝言をお楽しみください。


「んぅ〜……おねぇさまぁ……おねぇさまぁ……だあ〜いすき……♡」






「ぢ……!ぢらないんでぇずぅ……!?おデェは最上級あぐまのある方にづかえでて……!おでのづがえでる方も……!だれがど契約しでで……!おデェは誰か知らないんでずぅ〜!?ぼんどうでぇずぅ〜!?」


「つまり、貴方上級悪魔って言っていた割に下っ端って訳ね。だったらもういいわ。その貴方が仕えてるらしい悪魔に伝えなさい。アリーに手を出すならこれだけじゃ済まさないって」


私はそう言って悪魔を解放する事にした。ぶっちゃけ完全に消滅させても問題ないのだけど、誰かアリーに手を出すのは恐ろしい目に遭うと伝える者が必要だろうしね。



  が、私のこの考えは甘いものだった後悔する事になる。


「ぐぞうぅ……!?このまま終わってたまるがあぁ……!?こうなったらおデェの生命を代償に……!!?」


「えっ……なっ!?しまっ……!?」


その悪魔は最後に生命を代償にして発動する魔法を使ったようである。悪魔の身体は砂粒のようにサラサラと消滅した後、黒い波動が私を襲った。

  あれだけ痛めつけたのだから、もう何もしてこないと思い完全に油断してしまった私は、防御や回避行動もとれずにその黒い波動を浴びて、そのまま気を失ってしまう。



  あぁ……しまった……私とした事が……完全に油断してしまった……最強可愛天使なマイエンジェル妹の過激なスキンシップに理性を保ちながら、愛でていた日々を送り続けていたせいか、完全に戦闘の勘というのを失くしてしまったようだ……


勝負には勝ったが、アンナ・ステインローズに転生して初めて味わう敗北を私は経験した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る