うん、甘い。
第6話
お弁当も食べ終わり、いよいよデザートタイム。
「テトラ、これがケーキだよ。召し上がれ」
「うん、いただきます」
一切れサイズに切って、テトラにケーキを渡す。
生クリームたっぷりのホットケーキで作ったケーキがテトラの手に渡り、今一口食べる。
「うん、美味しい」
「それは良かった!!」
はっ!!テトラったら唇の横に生クリームつけてる。
これはチャンスじゃ……ちゅっ
「えへへ、テトラったら生クリームつけてたから取ってあげたよ」
「あああ、ありがとう。急に顔近づいてきたから何かと思ったよ……」
テトラが顔を真っ赤にしてお礼を言ってきた。テトラもあたしのこと意識してくれてるのかな?
「ねぇ、テトラ。テトラはあたしのことどう思う?」
「どうって、大事な人」
「大事な人ってどういう意味?」
「ひっ一目惚れだったの!!」
「!? 一目惚れ!!」
「私が最初に見た人間だったからかもしれないけど、とにかく、この子とは何か縁がありそうって思ったの。そうしたら、こうしてずっと仲良くしてくれてるから……」
「テトラ……あたしもね、最初に出会った頃のことは覚えていないけど、その……貝殻のブラのこととか、溺れてた所をキスして息継ぎして助けてくれたこととか、そのことを意識したらドキドキしてる」
「あのね、それ、もしかしたら、まやかしかもしれない。人魚の口づけは自分が泡にならない為に相手を惚れさせる魔力があるから……有理紗が私に感じている感情は魔力で魅せられているだけだと思う……」
「そんなことない!! だって、口づけされる前からドキドキしてたから!!」
「!! そっか……嬉しい。私も有理紗のこと好きだよ」
「テトラ……今日も、キス、しない?」
「いいよ……」
ケーキ皿とフォークを横に置いて、2人は向かい合う。抱き合う体。近づく唇。今日は少し長めに口づけていた。
「ぷはっ、やっぱりケーキ食べたから甘い!!」
「そうだね、このケーキ美味しかった。この有理紗の手作りケーキのおかげでキスが甘くなったね」
「喜んでもらえて嬉しい。昨日の夜から作って冷蔵庫で冷やしておいたんだ」
「手作りできるなんてすごいね、有理紗。一緒に作ってみたいな」
「テトラに脚があれば、家に招待して一緒に作れるのになぁ」
「脚ね……声と引き換えにすれば魔女の薬で生やすこともできるけど」
「本当に居るんだ!?」
「居るよ。幼い頃お世話になってたわ」
「お世話になってた!? お世話してくれた人なの??」
「そうだよ。悪い魔女なんて言われているけども、悪い人ではないと思う。ただ、人魚の大事な声と引き換えに脚を生やす薬を開発したから悪者にされているのだと思う。声がでないと意思疎通ができないからね」
「人魚の声は聴く者を魅了できるから、やっぱりそれを奪う魔女は悪い人だよ。脚だけ生えて副作用がない薬ができれば良かったのに」
「そんな薬できたら人魚が魔女のところに殺到しそうね。人間に憧れる人魚は結構いるから」
「何でわかるの? この前、他の人魚と会ったことないって言ってなかったっけ?」
「人魚の使いだか、友達だかの魚がよく魔女のところに来ていたからね。泡になる覚悟で受け取っていた魚もいたわ。その飲んだ人魚は人間世界に混じっているかもね」
「そうだよね、飲んだら後は違いなんてわからないから、元が人魚かなんて見分けがつくはずがないよね。テトラはこの薬欲しい?」
「今なら欲しい……かも」
「えっ!? 何故!? 綺麗な歌声なくなっちゃうんだよ!?」
「いや……、脚があれば有理紗と地上で過ごすことができるのにと思って……」
「テトラ……!! えへへ、もっと一緒に過ごせたらいいのにね。学校にテトラが居てくれたら不登校になんかならないで毎日通うのにね」
「私も有理紗と学校に行ってみたい。そして、音楽の授業受けてみたい」
「テトラもそう思ってくれる!? 嬉しい!! どうにかできないかな?」
「声を失わないで脚が生える方法か……あったような気がする」
「えっ本当!? 本当なら一緒に学校に行くのも夢じゃないじゃん!!」
「でも、思い出せないから気の所為かもしれない」
「絶対思い出してね!! 約束だよ!!」
「指切りげんまんなんかしたら重いよ~」
「よし、テトラ、午後からはまたリコーダーやろうか!」
「そうだね。リコーダー吹こう」
「じゃあ、またドレミの歌ね。あたしの後に続いて吹いてね」
ド~レミ~ド~ミ~ド~ミ レ~ミファファミレファ~♫
ド~レミ~ド~ミ~ド~ミ レ~ミファファミレファ~♫
「ドの音出すの上手くなったよね、テトラ。その調子! 次に行くよ!」
「やった!! やっと次に進める!!」
ミ~ファソ~ミ~ソ~ ファソララソファラ~♫
ミ~ファソ~ミ~ソ~ ファソララソファラ~♫
「よし、今日はこの辺にしとこうか。お喋りで結構時間経ってたね」
「そうだね、また明日」
「また明日ね、テトラ」
テトラは有理紗が帰ったのを見届けてから岩に座り、脚に意識が集中させる。そうすると虹色に光始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます