第22話 評価シートってきちんと活かしてる?
本エッセイを読んでいる方の中には、『評価シート』というものを受け取って、ご覧になった方も多いかと思います。
文章力やキャラクター、世界観、ストーリー、同時代性(時代に適してるか)。
それらが評価され、それぞれ点数や感想が述べられていると思います。
ただその中で、仮に『これは違う! 間違っている!』と評価シートを疑った場合は黄色信号です。
作家を目指す人の特徴として多いのは、
「自己顕示欲が強い」、または「理想を追及したい」、あるいは「有名作やヒット作を見て、自分もあんな作品を創りたい!」という創作欲、承認欲求だと思います。
作家志望は大抵、ある程度自分の文章力やストーリー、そしてキャラクターに自信があり、自分の作品は面白いんだ! という自負があると思います。
それ自体は作家として必要なのですが、あまりに強すぎると視野が狭まり、客観性を見失います。
本当は単なる自己満足の作品なのに、他人が読んでつまらない作品だと気づけない、
あるいは認められない。
作品を評価されることに慣れていないうちは、「作品を否定される=自分を否定される」気持ちにも繋がりやすいため、素直に評価を受け止めきれないことは多々あると思います。
私自身もそうでした。
評価シートを受け取っても、半分は納得するのですが、「この評価した人は分かっていない!」「長所をちゃんと見ろ!」、と反感を覚えたことがあります。
ネットの新人賞スレッドやTwitterを見てみても、一定数そういった方は見かけます。中には「下読みガチャ外れた」と評する人も。自己評価が高いのですね。
でも、それは自分の作品を客観視出来ていない場合が多いです。
Twitterでなぜ落選したのかわからない人の作品を読んでみると、多いのは「文章力が未熟」、「説明が足りない」、「キャラクターが不快」、あるいは「独自性が強すぎる」というものが大半を占めていました。
これはなかなか客観的に判断するのが難しいものばかりです。
作者は自作のキャラクターや設定などを把握しているので、細かな矛盾には気づきにくいですし、愛着もあるため、それが不快なキャラなのか、その客観的な判断もなかなか出来ません。
そして設定も頭の中に入っているため、「この程度で良いだろう」と、説明が疎かになる場合もあります。結果、読者には意味不明に思えたりします。
それでも、読者は過去の作品からある程度は想像して補って読むことはできるでしょうが、そういった「作者が自作を客観視出来ていない作品」は、大抵の場合は落選してしまいます。
物書きにおける『壁』の一つですね。
自作を客観性に見る技術。
逆を言えば、これが出来れば受賞出来る可能性はかなり上がると思っています。
・自分の作品は本当に面白いのか?
・自分の中で、勝手に理想へ持ち上げていないか?
・隅から隅まで見渡して、不十分な所はないか?
それらを強く疑って、自作を読み直してみてください。
たぶん致命的なミスの五つや六つはすぐ見つかると思います。
■それでもなかなか客観視出来ない場合
これは簡単です。『受賞作』を読めば良いです。
当たり前と言えば当たり前なのですが、受賞作は数百から千以上の作品の中なら選ばれた作品です。
ということは他より洗練された部分があったわけで、実際に多くの受賞作は設定に矛盾がなく、ストーリーも破綻しておらず、キャラクターも不快なものはほぼいません。
読者の趣味によっては物足りない、あるいは微妙と思う部分もあるかと思いますが、前提として、『作品として整っている』ものばかりです。
受賞した時点で作品としてある程度完成していて、それから半年~一年くらい編集者と改稿を重ねるわけですから、些細な欠点もほぼ消えています。
つまり、お手本として参照するには絶好の作品になるのですね。
よって、自分の作品のどこが悪いのか分からない方は、受賞作を読んでみると改善点が見つかると思います。
文章力、キャラ、設定、ストーリー。それから各シーンの演出など。
勉強になるものは多いと思います。
その際は、応募したレーベルの受賞作を参照してください。
レーベルによって重厚な文章が好まれる場合と、軽快な文章が好まれるなど、『傾向』が大きく違うので。
マッチングしていない所を参照にしてもあまり効果はありません。
参考にする際は、出来れば大賞、金賞、銀賞を複数読んでください。
それが無理そうなら、『試し読み』だけでも。
大抵のレーベルのサイトには、試し読みへのリンクがあります。
タイトルと作者名で検索すれば試し読みページに行けるでしょう。
そこに『受賞』への答えが書いてあります。
矛盾ない設定、不快でないキャラクター、分かりやすいストーリー、クセが強すぎない普遍性など。
それを読めば、自作に何が足りないのか、きっと理解出来るかと思います。
次回、過去の受賞作を読む場合の、注意点についてお話します。
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