トントン
@tomomoku
トントン
「最近、何か変なことがあって」友人のAがそう言って話し始めた。
「気のせいかもしれないんだけどさ。夜の十二時になった時、玄関のドアを『トントン』って、叩く音がして。インターホンは鳴ってないし、そんな時間だったから、気のせいかなっと思ったんだけど、一応、ドアスコープ覗いたんだ。で、やっぱり、誰も居なかったんだけど。でも、また、次の日、十二時になった時、『トントン』って叩く音がしたんだよ。でも、その音は、前みたいに、玄関のドアをノックする音じゃなくて、玄関入ってすぐの壁を叩いたような音で。その次の日は、玄関近くの風呂場の扉が、『トントン』って鳴ったんだよ。その次は、廊下と部屋の間にあるドアで。その次の日も鳴るんだよ。部屋の中の壁が『トントン』って。段々、近づいて来てると思って。その次は、電気付けたまま、布団かぶってたんだけど、ベットの下の床からトントンって。昨日はベットの裏からトントンって・・・」
一息に話終えたAは、そのまま黙り込んで、こちらをじっと見つめて、自分の反応を伺っていた。
「・・・・・・」自分は反応に困って、黙り込んでしまった。
それに焦れたAは「なあ、今夜、お前の所に行っていいか?」と言った。
「ああ、良いよ。他の人も誘おう。皆で居れば大丈夫だよ。」
Aはホッとしながら「そうだな」っと答えた。
急な話だったが、自分たち以外にも、三人が来て飲むことになった。狭い部屋に集まって、ワイワイ騒ぎながら飲んで過ごした。
卓上に用意していた飲み物が無くなったので、冷蔵庫から飲み物を取り出す為に、立ち上がった。飲み物を取り出して戻ると、テーブルの上のおつまみも無くなろうとしていた。
ずいぶんと、飲んでいたようだ。今、何時になったのだろうと思い、携帯を探して周りを見渡した。Aの近くにあったので、手を伸ばす。
携帯へと伸ばした自分の手が、Aに向かっていく。『トントン』とAの肩を叩いた。
ああ、もう十二時になったのか。
トントン @tomomoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます