第21話 海と真知子とコンテスト 後編
「今日はあなたに伝えたい事があるの」
なんだなんだとみんなが静かになり、茉桜の言葉に集中する。
「お姉様!私、お姉様の事が好きなの」
え!?何言うた!?お、お姉様!?しかもなんやこの演技力。
「私はずっとお姉様を見てきたの、カッコいいと言われているけどかわいい所がいっぱいあるお姉様、部活の助っ人で呼ばれるお姉様、女の子から人気のお姉様。私は...そんなお姉様が好きなんです。付き合って下さい!」
「おおっとこれはどうなる!?」とスタッフさんが煽る。
会場も「女の子同士...あり!」「何かに目覚めそう」などと変な盛り上がり方をしている。
夏の暑さのせい?水着姿をみんなに見られているせい?違う、自分の好きな人に改めて好きだと告白されているからだ。
顔が熱くなる。
恥ずかしい気持ちが無いわけではない、ただ...嬉しい、彼女の素直な気持ちが嬉しい。
茉桜がこちらを見つめる。
「ウチも、茉桜の事好き」
茉桜がこちらに駆け寄ってきてギュッと抱きしめてくる。
「おおおお!!」
拍手とともに会場のみんなから祝福され、茉桜と一緒にステージから降りた。
その後もイベントが進み、最終結果。
会場のみんなと審査員の判断でウチと茉桜が優勝となり温泉旅行のチケットを手に入れた。
あの茉桜の小芝居で優勝したのかと思っていたが、イベントの名前である水着で肉体美自慢というところも審査されていた。
意外とちゃんと審査されてたんやなー。審査員の人達が言ってたけど、茉桜の締まっていながらも出るところは出てる体とか水着も似合ってるとか言ってたし。ウチの事もなんか筋肉のつき方が綺麗とかなんとか。
でも茉桜に比べたらウチなんか全然やしなー。
「まさか優勝するなんて思わへんかったわ」
「私のおかげかしら?」
「そやな、ありがとう茉桜」
真知子も結構な人気を取っていたらしく、何人かに囲まれてワイワイ喋っている。
待っていてもすぐには解放されなさそうな真知子を見て茉桜が「こっち」と言い、手を引いて歩き出した。
周りから隠れて見えない岩場まで来た。
「私、結構頑張ったと思うのだけど」
「まあ、茉桜のおかげで優勝出来たみたいなもんやしな」
「じゃ、私のお願いを聞いてくれるわよね?」
「ウチに出来る事なら聞くで」
茉桜が優勝するために頑張ってくれたしな、そのおかげで二人で旅行に行けるんやし、お願いくらい聞いてあげよ。
「ふふ、ありがとう」と言って座れそうな岩に誘導され、両手で首の角度を上に向けられて茉桜の顔がゆっくりと近づいてくる。
「こんなとこ、んっ」
こんなところで?と言おうとしたが言い終わる前に茉桜の柔らかい口に何も言わずに大人しくしてと言わんばかりに口を塞がれてしまった。
周りから隠れて見えない場所ではあるが、万が一という事もある。
恥ずかしさはあるが、そんな事は考えられなくなるくらいに茉桜の激しいキスが襲ってくる。
「ん、はぁ...はあ、茉桜、激し、んっ」
また口を塞がれた。
休む暇なんて与えられずに茉桜の舌が口の中で暴れ回る、舌を絡めようとするが茉桜はそんな事は関係無しに欲望のままに舌を動かす。
んっ、今日は、なんか激しい、でも、気持ちいい。
茉桜に乱暴にキスをされて口元からヨダレが流れ落ちてくる。
「ふふ、乱暴にキスされて嬉しいのかしら?」
「んぇ?」
激しいキスでトロけてしまい思考が停止しているので変な返事をしてしまう。
「...かわいいわ、叶彩」
口元にうっすらと流れているヨダレを舌でペロッと舐め始める。
ん、なんかゾクゾクする。アカン、こんなとこでアカンのに、もっと欲しくなる。キスだけじゃ満足出来ひん...!
そう思った時だった。真知子がセンターに行ったのであろう、二人を呼ぶアナウンスが流れてムリヤリこの甘い時間から現実に引き戻された。
「あら、残念」
「...うん」
「ふふ、またしてあげるわよ。そんなに残念そうな顔をしないで」と言ってギュッと抱きしめられた。
ウチ、どんな顔してたんやろ...。
センターの方へ向かうと真知子が泣きそうになりながら「ちょっと!どこに行ってたのよ!」と叫んできた。
「その辺を歩いていただけよ?」
「全然見つからないから心配したじゃない!」
「ごめんな、すぐ戻るつもりやったんやけど」
「そうなの?残念そうにしてたじゃない」
「全然そんな事ないし」
「なにイチャイチャしてんのよ!」
なんとか真知子を落ち着かせて三人で少し遊び、いい時間になってきたので帰る準備をしはじめる。
本来は二人で来るはずだった海デートだが、なんだかんだ真知子がいて楽しかった。
イベントの事もいい思い出だが、今は岩場に隠れながらいっぱいキスをした事で頭がいっぱいだ。
帰り道も疲れているはずなのに真知子はキャンキャンと騒ぎながら楽しそうにしている、つられて笑い合い、楽しい一日になった。
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