第9話 お泊まり 前編
茉桜は親に挨拶を済ませて今はウチの部屋で二人とも並んでベッドに腰掛けている。
泊まりに来るにあたって着替えの服など何にも持って来ていない茉桜だが、ウチの服を借りるつもりだったらしい。
ウチの家に向かっている途中、どうするのか聞いたところ「彼女の服を借りるわ、いいでしょ?」と言ってきた。
ちょっとドキッとした。
彼女の服って...叶彩の服って言えば良くない?
わざわざそんな言い方をする茉桜は嬉しそうだった。
「叶彩の部屋って、意外とかわいいわね」
「普通やわ!」
まあ、茉桜の部屋に比べたらかわいい...方なのかもしれへんな。
茉桜の部屋はシンプルで、本棚があり、ベッドがあり、机があり。余計な物を置いていないって感じだった。本棚に入っている本はちょっとやらしい本が多い。
「ベッドに置いているぬいぐるみもかわいいわね」
「ネコ好きやねん」
「ふふ、好き」と言いながら茉桜はウチの肩に頭を置いてきた。
ウチは腕を回して茉桜の頭を撫でる。
茉桜は嬉しそうにしてこちらをジッと見てくる。
人形のように整った顔、動いているのが不思議と思ってしまうくらいにかわいい。
好きって自覚してから、茉桜がかわいく見えて仕方がない。
「かわいいな茉桜」
「ふふ、誘っているのかしら?」
「誘ってへんし」
茉桜は何も言わずにウチをベッドに押し倒した。
「やっぱり上から叶彩を見るのは興奮するわね」
「ヘンタイ!」
「いつもは見上げてばかりだから、余計に興奮するの」
恥ずかしくなり茉桜を見ていられなくなったので、目を逸らす。
「ちゃんと私を見て」
顔が熱い。絶対赤くなってる。
出来るだけ平常心を保ちながら、全然恥ずかしがってないとアピールしながら、茉桜を見た。
「ふふ、いい子ね」
ウチのほっぺたに手を這わせながらジッと見てくる。
目があっている。
これだけの事で喜んでしまっている、恥ずかしいのに茉桜の目にウチが映っている事がこんなにも嬉しいなんて。
でもこれ、恥ずかしいわ!
茉桜の目線がウチの口に行った。
ゴクリ。
茉桜の目線が口に行ったのを見てキスをするのかなって思ってしまった。
「ふふ、どうしたの?何か期待したのかしら?」
バレてる...。
「なんも期待してへんし!」
「そうなの?」
「そうや!」
「ふーん」と何やら含みのある笑みを浮かべた。
「じゃ、叶彩で色んなこと練習しようかしら」
「好きにしたらいいやん」
「キス以外にも、ね」と言い、茉桜はほっぺたに当てていた手を首、肩、胸、お腹と持って行く。ゆっくり、ゆっくりと手を這わしている。
まるで体を手で味わっているかの様な感じだ。
茉桜の手がウチの体を触ってる、くすぐったくて嬉しくて、変な気持ちになってしまう。
顔がゆっくりと近づいてくる、目に映るウチの顔がハッキリと見えるくらいに。
その時だった。下の階から「お風呂沸いたから入ってしまいなさい」と言う声。
「ふふ、残念」
「...そやな」
「え?」
「なんもない!ほら、教えるからお風呂行くで」
ウチは茉桜をどかしてお風呂場に向かった。
使うタオル、シャンプーなど教え、着替えは後で持ってくると伝えた。
「私が先に入ってもいいのかしら?」
「うん、ウチ後でいいし」
「そう、私が入った後に入りたいのね」
「な、なんやその言い方。ならウチ先に入るで」
「ふふ、叶彩が入った後に脱いだ服...。いえ、何でもないわ」
「やっぱ茉桜先入って!」
「じゃ、一緒に入る?」
「入らへん!」
茉桜が脱ぎ始めたので部屋に戻った。
着替えの服を用意し、お風呂場に持って行く。お風呂場には茉桜が脱いだ服が置いてあった。
...茉桜の服、うん。
...。
アカン、アカン。ウチ何考えてんねん!思考が茉桜みたいになってるやん。ヘンタイかウチわ!
ドタドタと階段を駆け上がりお風呂から上がるのを待つ。
ガチャっとドアが空き、髪が半乾き、サイズの合わないパジャマを着て、ホカホカの状態で入ってきた。
その姿を見てドキッとしたがドライヤーを渡してお風呂に向かう。
お風呂から上がり部屋に向かう。
パジャマは茉桜に貸してしまっているのでメンズサイズのTシャツを着て、あとは下着のみの状態だ。
「おいで、乾かしてあげる」
クッションに誘導され髪を乾かしてもらう。
結構嬉しい。
今度茉桜にもやってやろっと。
時間はだいたい22時。
「もうこんな時間か」
コンコンとノックの音。茉桜が寝る用の布団を持って来てくれたみたいだ。
「ありがとうございます」
後は持って来てくれた布団を自分達で整えて完成だ。
その後少しゲームをしたり、お喋りしたりして楽しく過ごした。
23時、電気を消してお互い「おやすみ」と言って布団に入る。
茉桜の事や絶対こっちの布団に来てなんかしてくるに決まってる。
...。
ん?
来ない...。
ええ!こーへんの!?
お風呂入る前にいい雰囲気になってたのに!
パチっと目を開けて茉桜が寝たのか確認しようと見てみると目が合った。
「っ!」
ビックリしたー、起きてたんかい。
「どうしたのかしら?眠れないの?」
「いや、別に」
「寂しいの?」
「...」
体を反対側に向ける。
「ふふ」
布団から出る音がする、ウチの布団に潜り込んでくる。
背中に張り付く様に抱きしめてくる。ドキドキする。
体の向きを変えて茉桜の方を向き抱きしめる。
どれくらい抱き合っていただろうか、気分が落ち着きとても長いように感じる。
茉桜が離れ、ウチの体の向きを変えて上に乗る。
「ふふ、いっぱいかわいがってあげるわよ」
「...」
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