第3話 デート!
「ゆっくりできるのは久しぶりね」
そう言ってベッドへ誘う黒内。
あれから何回か放課後に黒内の家に行っていつもみたいにキスをしていた。
ベッドに横になり、黒内が体を合わせてくる。
ウチに乗っかってきた黒内は小柄で抱きしめようとしたらすっぽりとハマってしまうくらいだ。
だが、抱きしめたりせん!
この前のなんか激しいキスは油断して抱きしめてしまったけど、今日はそうはいかへん!
ウチは黒内の事は好きではない!
いや、別に嫌いとかじゃないんやけど...そう!キスは認めてる...正直...好きや。
それに、問題が発生した日があった。
なんか下半身に...腰にきたというか。
キスした後に立ち上がれなくなった。
なんでウチはこんななってんのに、黒内は余裕そうなんや!
これが最近ウチを悩ませてる問題。
「今度の土曜日、デートしましょう」
「え、デート?」
「そう、もう叶彩の体は私の事好きになってるみたいだし、そろそろ心も私を好きにさせないと、と思ったの」
「なっ!全然好きになってない!」
「ふふ、はいはい」
「じゃ、土曜日に駅前14時ね」
「なに勝手に決めてんねん」
「デートしてくれたら、もっとすごい事してあげるわよ」
もっとすごい事...もっとすごいキス?
...。
「まあ、そこまで言うならデートしてあげるわ」
「もっとすごい事してほしいって事なのね」
「ちゃうわ!しゃーないからデートしてあげるんや」
「ふふ、ありがとう」
「う、うん」
なんや急に!
思わず黒内の笑顔に見惚れてしまった。
「で、今日は...せーへんの?」
「ん?」
「いや...だから」
「かわいいのね
「おねだりとかしてへんわ!」
こいつ...!
おねだりとか、ウチがめっちゃキスしたがってるみたいやん!
それにかわいいって言われるのもなんかムズムズする。
普段はかっこいいとしか言われへんのに、黒内にとってはウチはかわいいんか?
ウチより黒内の方がかわいいやろ。でもそんなん言ってやらへん。
「心配しなくてもデートが終わったらいっぱいしてあげるわよ」と言ってウチの背中に手を回して胸に顔を埋めてギュッと抱きしめてくる黒内。
かわいいやん。
思わず抱きしめたくなるのを我慢していると「ギュッてしてくれないの?」と言ってきた。
「せーへん」
「ふふ、残念」
なんか、見透かされてる気がして嫌やな。
抱きしめたくなってしまったのバレてたんかな?いや、そんなわけないか。
なんか、たまにはこうゆうのもええな。
落ち着くというか。
「こうしてると落ち着くわね。安心感があるわ」
「まあ...わかる」
「ふーん...私に抱きしめられてると落ち着くんだ。嬉しいわね」
「っ!嘘や!全然落ち着かへん!」
「ふふ、そうみたいね。ドキドキしてる」
「っ...!」
顔が熱くなるのを感じる。
アカン、絶対ウチ今顔赤なってる!
そう思って両腕で顔を隠す。
「かわいい。叶彩、好きよ」
「ウチは好きじゃない!」
「ふふ、こんなにドキドキしてるのに?」
「勝手にウチのドキドキの音聞くな!」
「ドキドキの音...かわいい言い方ね」
「かわいいかわいい言うな!」
「どうして?」
「...かっこいいって言われるのは慣れてるけど、それは慣れてない。ウチかわいくないし」
「そう、ならこんなにかわいい叶彩を知ってるのは私だけかしら。嬉しいわね」
「う、うるさい!」
んー!
いつも黒内のペースになる!
なんでや!
デート当日、
いつもみたいに早起きして、いつもみたいに髪を結んでポニーテールにして、メンズサイズのTシャツにショートパンツ。ボディバックに必要最低限の物を詰め込み家を出る。
確か時間は14時やったな、今は...13時半...朱音や紫織と遊ぶ時ならだいたいジャストくらいに着くけど、いやいつも通り出たらたまたまこんな時間に着いただけや!
スマホをいじって待っていると。
「あら、まさか私より先に着いてるなんて。待たせてしまったかしら」
ここで全然待ってへん、今来たところとか言ったらなんかデートっぽくなって嫌やな。
「めっちゃ待った」
「ありがとう、私の事を待っててくれて」
「いや、あれ?ん?」
なんかいい感じになってしまってるやん!
ファッションの事とか詳しくないけどガーリー系って言うんかな、黒内に似合ってる気がする。
「どうかしら」と服をヒラヒラする黒内。
「まあ、ええんちゃう」
「ふふ、ありがとう。叶彩も似合ってるわよ、かわいいわ」
結構嬉しい...!
でもアカン、平常心平常心。
「で、どこいくん?」
「ついてきて」と言ってウチの手を握って歩き出す。
「ちょっ!」
「どうしたの?」
「手、繋いで行くん?」
「デートなんだから手くらい繋ぐわよ。もしかして恥ずかしいの?」と挑発するように笑う黒内。
「全然恥ずかしくない!」
「ふふ、行きましょう」
これくらい余裕やし、なんも恥ずかしい事ない。
着いた場所はバッティングセンターだった。
「おー!ええやん!」
「ふふ、でしょ?」
ウチ、ワクワクしてきたぞ!
「よう見とき!ウチがホームラン打ったるわ!」
「ええ、ホームラン打ったらご褒美にキスしてあげるわよ」
スカッ。
「ヘンタイ!集中するから黙って見てて!」
「集中してホームランを打って、ご褒美がほしいって事かしら?」
スカッ。
「もお!黒内ぃ!」
黒内がこんなに笑っている所初めてみる。
やっぱり、かわいいな。
その後、黒内に妨害される事なくホームランを打つことが出来た。
ご褒美...あるのかな。
いやいや、全然そんなんいらんけど...。
ちょっとソワソワする。
「叶彩すごいわね、私は当たってもほとんど前に飛ばなかったわ」
「でっしょー」とピースする。
「かわいいわね、無邪気な叶彩」
「まっ、またかわいいって言った...っ!かっこいいじゃなくてかわいいなん?」
「打ってる時はかっこよかったわよ?今はかわいいわ」
「ふ、ふーん」
休憩しながらお喋りして、次の目的地に向かう。
そこはデパートだった。
「ここ来たかったのよ」と言いながらパンケーキを食べてる黒内。
似合ってるなー、パンケーキ。
ウチはコーヒーを、と行きたい所だけどコーヒーは飲めないのでオレンジジュースを飲んでいる。黒内のパンケーキを少しもらったりした。「あーん」ってされた時は恥ずかしかったけど、パンケーキは美味しかった。
なんか普通に楽しんでしまってる。
めっちゃ楽しい。
黒内は今日の事いろいろ考えてくれてたんやんな、バッティングセンターとかこのお店も雰囲気いいし、気が休まる。
「ちょっとショッピングでもしましょうか」
「うん!」
「ふふ」嬉しそうに笑う黒内。
「な、なに嬉しそうに」
「叶彩が嬉しそうにしてるからうつっちゃったのよ」
「まあ、今日は思ってたより楽しいし」
「どんな想像してたのかしら」
「いつも放課後の黒内しか知らんかったからな」
「なるほど、エッチな事考えてたのね」
「ちゃうわ!」
「ふふ、行きましょう」
手を繋いで服とかを見ていると店員さんに「仲良いんですね」と言われた。もちろん否定したけど、黒内に照れ屋なんですと言われて今に至る。
「照れてへんし」
「この服、叶彩に似合うんじゃない?」
「ただのTシャツやん」
「試着してみてよ」
「ええけど」
試着室に行くと何故か黒内も入ってきた。
「ちょっと!」
「ご褒美」
「え」
ギュッと抱きしめてきた黒内、少し背伸びをしてキスをしてくる。
「んっ...」
「して欲しかったんでしょ?」
ああ、黒内の唇...柔らかい...気持ちいい。
久しぶりのキス。
お互いが久しぶりのキスだからか最初から激しかった。
ぴちゃぴちゃと卑猥な音が大きく聞こえる。
それだけ、黒内とのキスに集中してしまっている。
「...はあ...はあ...」
「ふふ、嬉しそうな顔」
「別に...」
こんな場所でキスをしてしまっている、バレたらまずいのに。
なのに、もっとしたいと思ってしまう。
「もう、満足したん?」
「んー?」イタズラな笑みを見せる黒内。
「もう少ししたいなら...してもいいけど」
「ふふ、したいの?」
「...別に...ウチはっ...んむ」ウチはどっちでもいいと言おうとしたらいきなりキスされ、それに喜んでしまっている。
もっと舌を絡めたい。
黒内の唇を、舌を味わいたい。
ヤバい、ウチ、ヘンタイかも。
黒内の唾液...ほんのりパンケーキの味。
久しぶりのキス。
それはとてもとても甘いキスだった。
結局何も買わずに駅に着いた。
「今日は楽しかったわ。またね、叶彩」
「うん」
「叶彩は楽しかった?」
「まあまあやな」
「ふーん。ま、そうゆう事にしといてあげるわ」
「じゃ、バイバイ」
黒内に手を振って改札を抜ける。
デート...楽しかったな。
帰りの電車で今日の事を思い出しながら帰った。
黒内の笑顔、キスの事。
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