第2話 登校

「行ってきまーす」

僕は、玄関を振り向きそう言った。

「行ってらっ…)

と、言ってもお母さんは、もう仕事に行っている。家には、誰も居ない。

つい癖で言ってしまうものなんだよなぁ〜。

「例え意識がなかったとしても」

そして自転車をガレージからを出し、学校の方向へとペダルを蹴った。

学校までの距離は、そう遠くは、ないが少し時間がかかる。

家の前の坂道をくだりいつものおじいさんに挨拶をし、またペダルを漕ぐ。するといつも通る交差点が現れた。交差点と言ってもそこまで大きなものでは、ない。

朝だからかあまり人を見かけた事がない。すると、ふと横にあるカーブミラーが目に入った。こちらを向いている鏡の中にいつもは、見ない人の姿が見えた。勿論、自転車に乗っている自分でも無い。

鏡が歪んでいるせいもあるのか背丈がものすごく、長く感じる。深く帽子を被っているのか顔は、よく見えない。

僕は、何故か気になりだし、こっそりと後ろを見た。

するとゆっくりと道が見えていきぐっと、その奥を見ようとする。

「どこだ、どこだ…」

しかし、そこには、誰もいなかった。すぐさまさっきのカーブミラーを見た。しかしそのカーブミラーもなくなっていた。

そもそもここには、カーブミラーなんてもの最初から存在しなかった。

すると突然、「ビュッ」と後ろから何かが通りすぎていった。信号を見ると青になっていた。

今通り過ぎたのは、近所のおばちゃんだった。僕は、何事も無かったように、またペダルを大きく漕ぎ出した。

学校へ着くと校門が大きな口のように見える、これは、きっと僕だけじゃないだろう。学校の校門なんて見たいわけない。見ると学校が始まってしまう。

そんなことを思いながら校門を抜け自転車置き場へ

向かった。そこには、多くの自転車が停められていた。周りの自転車を少し横にずらし自分の自転車を停めようとする。しかしそのずらしていた横の自転車が妙に重かった。その自転車のカゴを見ると黒い何かが乗っていた。

よく見てみるとそれは、生首だった。

「…」声を殺し、ゆっくりと手を離す。

「ごめんなさい!」突然、女の子の声が、耳に入ってきた。

「えっ」よく見るとカゴに乗っていたのは、ただの黒い鞄だった。

どうやら鞄の持ち主の女の子が急いで取りに戻って来たようだ。

「大丈夫ですよ、」僕は、そう言いその場を後にした。

そして教室につき、程なくして授業が始まった。

ノートを書きながら僕は、朝の自転車の事を考えていた。

あのとき、僕は、ただ鞄を生首と勘違いしていただけだった。だが、もしそのまま鞄とは、気づかずにいると僕は、そのまま生首を見た、とずっと思い込んでいたのかもしれない。

まるで自分がそう見たと思っても他者から見るとそれは、全く違うものに見えるのかも知れない。

僕は、妙に心がすっきりし、ノートを書き進めた。


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