「センパイ、神々しいです」
「それでは優良さん、また月曜日に」
センパイは優雅にそう言うと手を振る私に小さく手を振り返して会釈をし、来た道を戻って行った。私はというとセンパイが見えなくなるまで見送った後、玄関の扉を閉めた。
バタン、と閉めた後にもう一度袋の中身を確認。
………うん、高そうな紅茶の箱にクッキーの箱。
「あれ? 優良帰ってたの?」
「ただいま。ねぇママ、センパイから高そうな紅茶とクッキー貰ったんだけど…」
「え〜、本当? そんなそんな…、ありゃ本当だね」
疑ってるママにセンパイから貰った紙袋ごと渡すと驚いた表情を浮かべた。
「今度何か買って行ってあげないとね」
「でもセンパイの事だからそのお礼としてまたくれる気がする…」
「そうなったら永遠にループだね…」
「これいつ食べようかね〜?」とルンルンでキッチンに戻るママから視線を外して私は靴を脱ぎ、手洗いうがいを済ませて部屋に戻る。バッグをいつもの場所に置き、センパイから貰ったぬいぐるみはイルカの置物と同じように机の上に飾る。
「そうだ! センパイにメッセージ送らなきゃ…」
まだセンパイは家に帰っていないだろうが、ありがとうの気持ちはすぐに伝える事が大切である。
私は携帯を取り出して早速センパイにメッセージを送る。センパイの事だから家に帰ってから携帯を見るはずだ。
「よし」
センパイにメッセージを送るとやはりすぐには返信が来なく、仕方がないため一度リビングに戻る。
「ママー、今日のご飯何〜?」
「野菜炒めにする予定だけど…」
「お〜! お肉入り?」
「うん、お肉入り」
「やったね〜」
私はママに「ありがとう〜」とお礼を言ってからリビングに向かう。
センパイの家ほどではないが、少し高めのソファーに体を沈めて私は携帯を取り出す。いつも通り適当にネットサーフィンをしているとセンパイからの返信がきた。
「お」
私はすぐにそれを既読にして内容を確認。どうやらセンパイも家に着いたようだ。その報告に私は《お疲れ様です!》と返信。
それからセンパイと何度かメッセージのやり取りをした後、夜ご飯を食べ、お風呂に入り、自室で宿題をする。残念ながら今日の宿題は数学であり、私の苦手な分野である。
全くもって分からない問題に頭を悩ませて、センパイに愚痴メッセージを送るとすぐに返信を受信した。
《今から電話はできますか?》
今から電話はできますか? なんて。否、出来ないわけがない。私は条件反射で《できます!》と返信をするとすぐに電話がかかってきた。
「はい! こんばんは!」
《こんばんは。数学が分からないとの事でしたのでいてもたってもいられず電話をしてしまいました》
なんて優しいセンパイなのだろうか。優しすぎて目から涙が溢れてしまう。こんなに優しいセンパイが彼氏とか…、前世どんだけ徳積んだの…、私…。
「神ですね…! 神々しいです…」
《いえ…、それはないかと…》
「大いにありけりです…」
《そうなんですね…》
なんて会話をしたあと、私はセンパイに数学の分からないところを教えてもらった。やっぱりセンパイは教え方が上手でスラスラと解ける。
「また教えてください」ってお願いしたら快く引き受けてくれたから、これからは解き方が分かってても教えてもらっちゃおうって思ってしまった。うん、これは不可抗力。
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