「センパイ、美味しいですね!」


「お待たせいたしました」


しばらくしてセンパイがシーフードパエリアとドリンクを2つずつ持って帰ってきた。恐らく片方の茶色いドリンクが私のお願いしたアイスティー。となるともう片方の黒いドリンクはセンパイのアイスコーヒーだろうか。


「ありがとうございます」


私はそう言ってお財布から2000円を取り出し、センパイに差し出した。


「これは?」


「シーフードパエリアとドリンクのお金です!」


ドヤ顔で私がそう言うとセンパイはクスリ、と笑って私と机を挟んで向こう側に座った。


「ふふ。シーフードパエリアとドリンクのセットはそこまでしませんよ」


「それでも…」


「受け取れません」


センパイはただ笑顔でそう言った。受け取る素振りすらせず、私の分のパエリアを目の前に置いてくれた。


「でも…」


「それでは美味しそうに食べてください」


センパイはシーフードパエリアにスプーンを入れて崩し始める。そんなセンパイを横目に私は受け取られなかった2000円を渋々お財布にしまった。


またセンパイはお金を受け取らない代わりにお願いをしてきた。センパイがそれでいいのならもう私もそれでいいとすら思えてくる。


実際それで丸く収まるのだからそれが正解なのだろう。


「それじゃ…、いただきます」


もうきっと今日のセンパイは私に払わせる気はサラサラないのだと悟り、私はシーフードパエリアを食べる事にした。


シーフードパエリアはフライパンのようなお皿に綺麗に具材が散らばっている他、エビやイカ、貝などがバランスよく見栄えよく配置されていた。


思わず携帯を取り出してパシャリ。


うん。我ながら綺麗に撮れた。あとは加工をしてSNSに投稿しよう。そうだな…、ハッシュタグは“#センパイが運んできてくれたシーフードパエリア”に決定! センパイ専用タグも作りたいしなぁ…。あ、でも私のアカウント、鍵かけてるから知らない人は見られないんだった。センパイとの幸せな記録を他の人に見せられないのは辛いけどプライベートなアカウントだからなぁ…。


なんてそんな事を思いながらその写真を満足そうに眺め、私は携帯をしまう。そしてシーフードパエリアにスプーンを入れる。スプーンにシーフードパエリアを乗せ、口に運ぶ。


と同時に口の中でシーフードパエリアの旨みが拡散される。


「美味しいですね! このパエリア! さすがセンパイが運んだだけの事はあります!」


目を輝かせながらそう言う私をセンパイはシーフードパエリアを食べながら不思議そうに首を傾げた。


「僕が運んだ…? いや…、僕が運びましたけど…」


「センパイが運んだから美味しいんですっ!」


「えっと…、それは違う気が…」


「しません!!」





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