土地神様が太陽の塔へ巡礼の旅に連れていけと言うんです。国造りって何ですか?俺、貧乏冒険者なんですが!
春田大門
第一章 冒険者駆け出し編
第1話 トトが罠を踏んだゆえに・・・
ダンジョンで転移魔法陣が発動した。
トトが誤って罠を踏んでしまったからだ。
さて、ここは何処だろうか?
ダンジョンであることは間違いない。
仲間達は何処にいる?
辺りを見廻しても誰もいない。
トトの奴め、あれほど注意したのに後の祭りである。
はじめてのダンジョン探索でこれだ。
自分の運の悪さに辟易とする。
仲間達は大丈夫だろうか・・・
俺は・・・大丈夫ではない。
だって、右も左も分からないって最悪だろ。
装備を確認する。中古で買った革の鎧とブーツ、切れの悪い銅の剣。首にぶら下げているD級冒険者のライセンス。サックの中身、携帯食料に水袋。
身体には異常はないが、心は不安でいっぱいだ。
変な汗が流れ、緊張のあまり吐き気を催す。
深く深呼吸を繰り返し、なんとか落ち着くように努めた。
ああ、こんなことならトトの誘いを断るんじゃなかった。俺は女を知らずに逝ってしまうのだろうか・・・
ウダユウが言うように、はやく済ませておけばよかった。あの時、一緒に歓楽街についていけばよかったんだ。
不純な妄想がグルグル回る。
ん、駄目だ。いかんぞ、いかんぞ、俺は生きなきゃいかん。はやくあいつらを助けに行かなくては。
ここは、あまり広くないようだ。
四角い箱の中にいるみたいだ。
どうやら俺だけしかいない。
通路でもない。
ドアもない。
密閉空間・・・
ん、どこにもいけない・・・
んな、バカな、閉じ込められた。
な、なにかあるはずだ。と、隅々を調査する。
隅々を・・・
ん、んん!
箱がある。
・・・・・
いやいやいや、さっきなかったよね。
え、なにこれ、ちょっと怖いんですけど。
辺りをキョロキョロと見渡す。
誰もいない。い、いないよね。
恐る恐る箱に近づく。
なんの変哲もない木箱だ。
しかし、よく見ると高級感がある。
木目は鮮やかだ。
指で木箱をツンツンする。
さらにツンツンすると、パカッと蓋が開いた。
お、おう、ちょとびっくりしたぞ。
俺を、な、なめんなよ。
ゆっくりと慎重に木箱の中を覗いた。
透明な板と本、革袋が入っていた。
お宝か?
お宝だよね。
木箱の方が高級そうなんだけども・・・
全部取り出してみた。
革袋には何も入ってなかった。
本を開けるとカードが数枚、差し込んであった。
これは本ではなくカードホルダーなのかな。
透明な板を手に取り、裏表を何度も確認する。
すると透明な板が、ポワッと光った。
ドッキ、としたわ。
本当にびびるんですけど。
ツゥーツツツー
《インストールを実行します》
ツゥーツツツー
《Aタブレット№1の所有者をイチマツにします》
ツゥーツツツー
ツゥーツツツー
ツゥーツツツー
え、と思う間に俺は意識を失った。
ツゥーツツツー
ツゥーツツツー
ツゥーツツツー
むくり、と起き上がる。
思い出されるのは、悪い事ばかりだ。
やはり、あの密閉空間にいる。
俺は、いま危険な状態だ。
意味不明な状況下であることを認識する。
さっきの透明な板を探す。探すが見当たらない。
ぬお、どこに行きやがった!
まじでないぞ・・・
夢を見ているのか・・・
すると視界の真正面に何かを捉える。
さっきの透明な板が宙に浮いていた。
ツツツー
ツツツー
《インベントリをインストールします》
ツゥーツツツー
え、何か言った。
インベントリだと、なによそれ。
ツゥーツツツー
《インベントリの所有者はイチマツになりました》
ツツツー
え、なにそれ意味がわからん。教えてウダユウ!
我が家の知恵袋、ウダユウさんは感じなときにいない。
どういうことよ。
キョロキョロと辺りを確認。
誰もいないのに誰かが喋った。
おおふっ、頭がおかしいのだろうか、
目の前には透明な板がちらつく。
ツゥーツツツー
《Aタブレット№1が正常に起動しました》
『モノリスの因子を持つ者よ、汝は【国造り】に導かれる。太陽の塔をめざせ』
《コード・Aクエストが発動しました。【国造り】が始まります》
ツゥーツツツー
ツゥーツツツー
「・・・イチ・・、起きろ。イチマツ!」
俺は気が付くと、ウダユウに殴られていた。
え、おい、おいたら、おい。
「・・・いだい」
「イチちゃん!」
トトが抱きついてきた。ボロボロと涙を流している。
「イ、イチ君、頭を強く打ったみたいだから、そのまま動かないでね」
キリは鞄から、あわてながら下級ポーションを取り出すと、それを飲ませてくれた。
んな、あれれ、どーなった。
さっき、ウダユウに殴られた。
え、殴るなよ、頭を打った人間を殴るなんて酷いです。
「イチ、意識は戻ったか?」
「お、おう。・・・で、何がどうなった?」
「あのな、トトが罠をふんじまって、それが発動した。だがな、それは光っただけだ。驚いたお前は、ひっくり返って頭を強打した」
「わーん、イチちゃん、ごめんなさい」
トトはまだ、しっかりと俺を抱きしめていた。
そんなアホな、アホな事象であったのか?
「トト、引っ付きすぎ」
キリがトトを剥がしにかかる。
「いいじゃないか、たまにはいいじゃないか」
ここぞとばかりにトトは踏ん張っている。
「はあー心配かけやがって、少し休憩したら帰るぞ」
「お、おう、なんだか悪かったな」
「気にすんな」とウダユウ。
しばらくたってから、
ウダユウは俺に背中を向けてしゃがんだ。
え、おぶってくれるの・・・。
「イチ、はやくしろ」
おい、イケメンすぎるぞ、ウダユウさん。
てなわけで、初挑戦したダンジョンは、とんだマヌケな結果に終わった。
終わった・・・・
終わったのかな・・・
けれども、頭を強打したせい?
Aタブレット№1なる物体が目の前を浮遊していた。
どういうことよ!
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