レベッカを探せ 4 〜キング一家の旅 7
「おい一体何処まで歩かせるつもりだ?」
カンカン照りの太陽の下、いつまでも港を歩き続ける海賊もどきの船長に声を掛けた。
「おいっ!アレックス!そんな横柄な口をきくでない!恨みをかったらどうするのだ?」
「そうだよ、あの人が海賊だったらどうするつもりさ?海のど真ん中で重しをくくりつけられて沈められてしまうかも知れないだろう?」
ヘタレな親父と兄貴は小声で文句を言ってくる。
フン!そんなの知ったことか!大体俺は貴様らのような軟弱な男じゃない。
レベッカを探す旅に出始めてからは、身体を鍛える努力をしている。
毎日2時間筋トレしている。
そのおかげで今は腹筋は6つに割れ、上腕二頭筋は1.5倍は太くなった。
レベッカ…。
再会を果たし、筋肉マッチョになった俺を見た時どんな反応をするだろう?
頬を赤らめて俺を見てくれるだろうか?
大体女というものは筋肉マッチョ男が好きに決まっている
俺に惚れ直してくれないだろうか…?
「おい、見たか?あのアレックスのだらしない顔を」
「うん、見てるよ。あ〜ヤダヤダ。またくだらない妄想を描いているに違いないよ」
「うむ、そうだな。大体あいつの頭の中には女のことしないからな」
「全く女たらしめ…」
すぐ真後ろで歩くロリコン親父とフヌケ兄貴が何か言っているが…ここは無視だ。
俺はあんな奴らとは違う。
レベッカに捨てられ、国が崩壊した時に生まれ変わったのだからな。
くそっ…それにしてもいつまで歩かせやがるんだ…。
そしてついに海賊船帳は足を止めて振り向いた。
「ついたぞ!お前達!これが今日からお前たちが乗る船、その名も『ヴィーナス』号だっ!!」
海賊船帳は俺たちに向き直ると大声で怒鳴った。
おおっ!何とすごい名前だっ!きっとその名に恥じない美しい船に違いないっ!
期待に胸を膨らませていたのに、港には今にも朽ち果てそうなボロ船が一隻停泊しているのみだった。
「…は?」
「どれが?」
変態親父とウスノロ兄貴の目が点になっている。
「おい、船長。一体その『ヴィーナス』号とやらは一体何処にあるんだ?」
俺が尋ねると船長は目を見開いた。
「何っ?!貴様らの顔についているその目は何だ?ただのお飾りなのか?目の前にある船が目に入らないのかっ?!」
「何だってっ?!」
「このボロ船が?!」
「漁船のまちがいじゃないのかっ?!」
俺、クズ兄貴、ロリコン親父が揃って声を上げた。
「どこがボロ船だ!漁船だっ!言っておくがこの船には6名の船員もいるし、大海原だって超えること出来るのだぞっ!」
2枚の大きな三角帆は黄ばみ、何とも情けない姿をしている。
台風でも襲ってくれば今にも沈没してしまうのではないだろうか
俺は…いや、俺たち3人は不吉な思いで『ヴィーナス』号を見上げた―。
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