レベッカ一行の世界漫遊の旅 4 (母を求めて?千里? 10)

「おおっ!すっげーなー。姉ちゃんっ!何でも俺の事お見通しなんだなっ?!」


今、ナージャさんが座る円形のテーブルには黒山の人だかりが出来ている。全員、勿論ナージャさんの占い希望者だ。


「次は俺っ!俺を占ってくれよ!」

「何言ってるのよ!私よ!」

「いーやっ!俺に決まってるだろう!」


いやはや…ものすごい騒ぎである。



「それにしてもナージャさんの人気は相変わらずね。彼女がいてくれて本当に助かったわ」


別のテーブル席で夕食を食べていた私は後ろの騒ぎをチラリと見ながらエビのボイル焼きを口にした。

うん、バターソースがとっても美味っ!


「本当にナージャさんには感謝だ。彼女のお陰で俺たちは雨風をしのげて、こうして食事にも無事にありつけるんだからな」


そして例のごとく、サミュエル王子は地酒をごくごくと飲んでいる。今の言葉はもはや王子の台詞とは思えない。

おまけにサミュエル王子…最近アルコールの量が増えた気がする。恐らくサミュエル王子の血液はもはやワインで出来ているのかもしれない。


「確かにナージャさんがいれば、レベッカ様がわざわざ貴重な力を使ってお金を稼ぐ必要もありませんわね」


ミラージュは豪快に鶏肉料理を口に運ぶ。


「…」


一方、様子がおかしいのはセネカさんだ。先ほどから神妙な顔つきで豆料理や野菜の料理ばかり食べているし、何となくオドオドしている。


「どうしたのですか?お父様」


ワインと料理を交互に口にしているミラージュは酔いが回ってきたのか、サミュエル王子の目の前でセネカさんを「お父様」と呼んでしまった。


「ふ~ん…そうかそうか。セネカはミラージュの父親なのか…うん、よく似ているな。流石は親子だ」


しかし案ずることは無かった。どうやらサミュエル王子はかなり酔いが回っていたようで、セネカさんとミラージュが親子関係であることを知っても動じなかった。


「ミラージュ…知ってたかい?」


セネカさんは豆料理を口にしながらポツリと言う。


「何ですの?」


「我々ドラゴンの分類についてだよ!我々は空を飛ぶから鳥類にも分類できる。それだけじゃない、海の中を呼吸をしながら泳ぐことだって平気なのだ」


「ええ、そうですわね」


ミラージュが頷く。え?…その話、私は初耳なんですけどっ?!


「ドラゴンの鱗が魚のエラのような役割をしてくれるから水の中でも呼吸が出来る。つまり、魚類に分類することも可能だ」


「いやいや…いくら何でもドラゴンを魚類に分類することは無理があるのではありませんか?」


私は苦笑しながらセネカさんに自分の考えを述べた。


「しかも我々は地上でも普通に生活するし、このような人の姿になることも出来る。‥あいまいな存在なのだ」


セネカさんは私の話が耳に入らないのか、ブツブツ言いながら温野菜料理を口にする。


「つまり…何が言いたいのですか?」


中々結論を言わないセネカさんにミラージュがいらいらした様子で尋ねる。


「つまり…私が言いたいのは…どうして私の前に魚料理を出すっ?!それだけじゃない…ましてや鶏肉料理なんて!と、共食いになるじゃないか…!」


セネカさんはブルブル震えながら私とミラージュ、そして酔いつぶれてテーブルの上に突っ伏して眠るサミュエル王子を見た―。




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