第562話 一日で二度のプロポーズ
さっそくゲームを流れのままに始めてみたが、パッと見て、なんとかなりそうな気がした。
なんか、ステータスとか、部活とか、色々あるが、ようするに出てくる女の誰かと仲良くなりゃいいだけの話だろ?
「んで、女たちはどんなのがっ……うおっ、なんだこりゃ!」
ゲームを進めていくうえで、どんな女たちが出てくるのかと思い、とりあえず画面を操作していくと、ヒロイン説明ページ? みたいのが出てきた。
なんか、色々居るんだな~と、テキトーに流して見ようとした瞬間、俺はひっくり返りそうになった。
「い、いっぱいだね……」
「は~、何とも不思議でござるな」
幼馴染の元気活発女、学園のマドンナ、先輩生徒会長。天然の明るいバカ女。引っ込み事案の図書委員、剣道少女、音楽家、不良女、不思議ちゃん、ぶりっこ、金持ちのプライドの高いお嬢様、部活マネージャー、スポーツ女…etc
……ダメだ、まだまだ居るけど、全然覚えられねえ。
つうか、何人居るんだ?
まあ、ようするにこの中から誰かをオトせばいいわけか。
「ふ~ん。ねえ、ヴェルト、この金持ちのプライド高いお嬢様を口説きなさい。あなたには、このキャラクターがお似合いよ」
「殿~! 拙者、よく分からぬでござるが、パッと見たところ、この剣道少女という娘が良いかと存じます! ペット殿は?」
「………ひ、……引っ込み事案の図書委員とか………うう~、ウソウソ! 私は知らない! 分からないもん!」
何でだよ。意外とどれもなんか難しそうじゃねえか?
つってもまあ、誰でもいいんだから……
「ふ~ん……とりあえず、自分の行動を選択するわけか……何の授業を受けるか? サボりだサボり。……どこでサボる? 図書室っと……」
『あの、いつも図書室に居ますよね……本……好きなんですか?』
あっ、さっそく女が出てきた。
「あっ、ヴェルトくん、ちょっと臆病な図書委員の女の子だよ? ヴェルトくんに話かけて来てるよ!」
「ああん? 知るかッ! 何でどうでもいい女が話しかけて来るんだよ! 選択は? 『無視』、無視ッ!」
「…………~~~~っ」
「あ? なんだよ、ペット?」
いきなり出てきたキャラクターが話しかけてきたが、興味が沸かなかったから無視したら、なんかペットが落ち込んで……
『あっ、ヴェルトくん、今から帰るの?』
って、今度は放課後にまた別の女が話しかけてきやがった!
「あっ、ヴェルトくん、幼馴染の女の子だよ! 幼馴染の女の子」
「知るかッ! 選択は……一緒に帰る? 一人で帰る? 何でこんな女と帰るんだよ、『一人で帰る』だ! 好きでもねー女と一緒に帰ってどうするんだよ!」
「…………」
にしても、これはかなりメンドクサイな。
授業したり、部活したり、サボったり、自分の行動を決めて、それでステータスが伸びたり、自分の行動や向かった場所にヒロインが居て、コンタクトをとるわけか。
そうなると、とにかくオトす女に徹底的に話しかければいいわけか?
そして、その時だった。
『おや~? 君もサボりですかい? こんにちワンダフル!』
たくさんヒロインが居る中で、また一人出てきた。確か、これは天然バカ女……
「……なんだ~? なんか、イラっとくる女だな~……選択肢は……仕方ねえ、とりあえず『話しかける』で」
「「「なぜっ? よりにもよって、その女を?」」」
「テキトーだ、テキトー。どーせ、ゲームなんだから誰でも良いだろうが! おっ、アドレスゲット? ……おお、すげえ! これでデートに誘えんのか!」
どっちにしろ、誰か女をオトさない限り、ゲームは進まねえんだろうし、とりあえずこの天然バカ女をオトすか……まあ、誰でもいいしな……テキトーだ、テキトー。
……って、ちょっと待てよ! アドレスゲットしてデート行けば、もうこれクリアじゃねえのか? 楽ショー過ぎるだろうが、なんだよ、このゲームッ!
しかし、ストロベリーはニヤニヤしたまま。
すると、今まで黙っていたニートが……
「なあ、もう一台同じゲームある? 俺もやりたいんで」
「ああ、ウザイぐらいに持ってる」
「じゃあ、やるんで」
えっ、ニートが? どうしてだ? こんなのが、面白そうだったのか? しかも、そんな真剣な顔で……
「おいおい、ニート、こんなのやりたいのか? 随分簡単なゲームだが」
「お前、甘いんで。このゲーム……好感度の上げ、そしてパラメーターの上げ、そのバランスがキモなんで。デートに誘っただけでカップル成立は、電子世界じゃありえない話しなんで」
どうしたんだよ、ニート! 急に凄んできやがって。ちょっと驚いたじゃねえか。
『お~~~い、ヴェルトくん、待ったでございましょうか~?』
と、そう思っている間に、デートに誘った天然バカ女がやって来た。
別に何か問題があるわけでもねえ。このまま仲良くなりゃいいんだろ?
デートは映画だな? 見る映画を選択するわけか。
『ね~ね~、今日はな~んの映画を見るでおじゃるか~?』
見る映画を選べる訳か。見れるのは、三つの選択肢から選ぶわけか。
『アクション映画』
『アニメ』
『恋愛映画』
くはははは、楽勝!
「なんだよ、くだらねえ! 個人的にはアクションだが……これは、ゲームだ! 女なんて恋愛映画でも見せとけばいいんだよ!」
俺に迷いは無かった。ボタンを押して、いざ恋愛映画。
しかし、映画館から出てきた女は……
『ふわ~あ。な~んか、寝ちゃったよ~』
「……え?」
え……なに、この反応は? つうか、寝た? 男と映画来て? いや、百歩譲って寝るのは分かるが、それを開口一番に言うか?
『なんか疲れちゃったから帰るよ~、バイバイバイ~』
そして、帰った……えっ? 映画見ただけで終わり? なんでだ? 普通、この後、どっか行ったりするだろうが! 何でこいつ勝手に帰ってんだ?
「な、なんで? エイガ? よく分からないけど、男の人と恋愛に関する物語を見て、何でこんな反応なの?」
「こ、これは摩訶不思議な」
「………へえ、この娘はこういうキャラクターなのね」
俺の横から画面を覗きこんで、同じように不思議そうな顔をするペットとムサシ。
しかし、クレオだけはどこか納得したように、鼻で笑ってた。
すると……
「いや、ヴェルト、お前、甘いんで。その子、服装とか身につけてるもの、あと携帯のストラップ、キャラクター物が多いと思うんで」
「な、なにいっ! ……そ……そういえば……」
「こういうゲームの初心者なんだから、まずはヒロインのプロフィールぐらい見といた方がいいと思うんで」
俺の隣でゲーム機をピコピコさせながら、ニートがこっちも見ないでツッコミ入れてきた。
「好感度も大して上がっていない段階、その子には恐らく『アニメ』が正解なんで。多分、恋愛もので良いレスポンスが帰ってくるのは、もっと仲良くなってからなんで」
………いや、何でだよ……そうとは限らねえだろうが……と言いたかったが、やけに自信満々のニートの言葉に、何故か納得せざるを得ない。
このゲーム……奥が深いのかもしれねえ……
でも、それはそれとして、何でたったそれだけの情報でニートは、そんなことが分かるんだ?
「ヴェルト……一時間半……」
「あっ?」
「一時間半後には全ての答えが出ているんで」
な、なんだ! ニートがやけにキリッとした顔でニヒルな笑みを浮かべてやがる。こんな自信満々なニートを俺は初めて見た。
つうか、一時間半って、また微妙に長いな。こんなのを一時間半もやらなきゃいけねーのか?
「ちっ、だが、一回ミスっただけだし、今の情報さえ分かっていれば、後はどうにでもなるはずだ……って、また知らねえ女が出てきやがった! こんなん無視無視! オラァ、天然バカ女どこにいやがる!」
「……ねえ、ペット・アソーク……ヴェルトの嫁に……天然の馬鹿な女でも居るのかしら? 何で、そんなにヴェルトはこだわっているの?」
「さ、さあ……私にも分かりませんが……ですが、確か姫様が以前呟いていましたね……『あの、天然劇場姫は要注意』とか……」
なんだよ、みんなして。別にゲームなんだから、誰でもいいだろうが。こんなの俺はテキトーに選んだだけなんだからよ。
「ん? おお、放課後にようやく会えた! 選択肢は一緒に帰……ん? なんだ? この選択肢、『マイク』……ってのは」
他の女たちが登場したときは、選択肢を『無視』とか『一人で帰る』をソッコーで選んでいたから気づかなかったが、これは?
「カカカカカ、それがそのゲームのウゼエ特徴だ、ヴェルト」
「あ? どういうことだよ、ストロベリー」
「そのゲーム機、実はマイクの機能がついていてな……上級者ともなれば、選択肢なんかに頼らないで、その時々にプレーヤーが好きな言葉を言えて、ゲーム機がプレイヤーの叫んだ言葉を感知して、ヒロインに自分の言葉で話かけられるんだよ」
「なにいっ? ど、どんな言葉でもか?」
「ああ。それをコンピューターは瞬時に解析して、ヒロインはその言葉を受けて反応を―――」
ストロベリーの説明が全て終わる前に、気づけば俺はゲーム機に向かって叫んでいた。
「お……俺と一緒に帰ろうぜ? つか、どっか寄ってこーぜ!」
これはこういうゲームなんだ。こうでもしねえと先に進まねーんだ。そう、これはあくまでゲームのイベントなんだ。だから仕方ねえ。
んで、反応は? 反応は……どうだよ?
『おほ、いいですな~、いいですな~! 私も寄りたいところあったんだよ~、うん! 一緒に帰ろっか!』
「ッ!」
よしっしゃあ、キタァ! これでうまくいけば一気に勝てる!
「……遊び……なんだよね? なんで、ヴェルトくん、そんな真剣な顔でニヤけてるの?」
「なんだか、釈然としないわね。この男の、照れた初々しさを、こんな形で見るなんて」
「な、と、殿? 殿が平べったい娘に興味を示しているでござるッ!」
「ねえ、ちょっとまずい状況なんじゃない?」
「にゃっはまずいかも」
なるほどな。こうやって女と仲良くなっていくわけか。しかも、マイクで声をかけて、その言葉に対して機械が反応して答えるなんて、よくできてるじゃねえか。
『ねえねえ、ヴェルトくんはさ~、学校は楽しいかい?』
おっ、一緒に帰りながらヒロインと会話していくわけか。この会話でも、好感度とやらに影響を与えるんだな。
なら、やることは決まっている。
「ああ、楽しいぜ! お前がいるからなッ!」
『…………はい?』
「はい?」
「は、はいっ?」
「にゃにゃっ?」
「はっ?」
「にゃっは!」
何故か、ゲームのキャラクターだけじゃなく、ペットたちまで驚いているが、何を驚いてるんだよ。これがゲームだって分かってるはずだろ?
『え~っと、ヴェルトくん、それはどういう意味かな?』
この反応は戸惑い? いや、悪くない反応か? 案外、こういう年がら年中ふざけた態度をしている女ってのは、意外と真剣にコクったりすると、案外弱いのかもしれねえ。
まだ、ゲーム始めて僅かな段階だが、いけるのかもしれねえ。
「そうだ、出会った時間なんて関係ねえ。そもそも、俺とエルジェラなんて、出会ったその日に子供を作ったんだからよ」
「いや、ヴェルトくん、それは流石に!?」
「ねえ、こいつの嫁たちの序列でそのエルジェラってのは相当高いのかしら?」
ならっ!
「お前、俺の嫁になれよ!!!!」
これでいけるはずだ! ………ん?
「って、違うでしょ、ヴェルトくん!? まずはお友達とかからじゃないの!?」
「私に向けた言葉を……私以外の女に向けるんじゃないわよ!!」
「にゃ、にゃにいいっ! と、殿が、殿がついに平べったい娘にまで手を出されるとはっ!」
「……っていうか、このタイミングで告白するどころか、プロポーズって、何考えてんの?」
「な、なんか、お兄さんの恋愛観が、にゃっは分からない」
はっ? 何でダメなんだよ! 俺の嫁たちはこれで……ッ! そ、そうかっ!
『……ごめん、ヴェルトくん。わたし~、自分でも冗談は言う方だけど、そういう冗談だけはキライなんだ。………なんか見損なっちゃったよ』
「し、しまっ! ち、違うんだ!」
『もう、帰る!』
ま、間違えた! そうだよ、普通なら、「付き合ってくれ」だよ。
「しまった………つい、いつもの癖でプロポーズしちまった!」
「「「「つい? いつもの癖でプロポーズって、こいつどんだけっ!」」」」
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