第414話 カオスの時間⑪


「って、ざけんじゃねえ! 何で俺が、こんな………こんな状況でヤれってんだよ! しかも、誰かとヤッた後に、アルテアともヤレとかふざけんな! 男はな~、一回出したらイーサムみてーに、何回も何回も出来ねーんだよ!」 



 いや、俺も言ってることが多少ずれている気がしないでもねえし、別にその、なんだ? そこまで嫌ってわけでもないが、これは嫌だ。

 だって、重いし。人に見られてるし。アルテアとヤル前提に誰かを選べとか、マジこの状況で無理だし。



「精力が阻害要因なら、問題ないのだ」


「あ゛?」


「誘惑精力増強術!」



 その瞬間、甘く漂う蜜のような香りが空間を漂った。なんだ? ッ、か、体が熱い!


「つお、な、なん?」


 なんだ? 熱い! 熱すぎる! 息が乱れる! し、心臓が爆発しそうなほど早くなっている!


「ヴェルト、どうしましたの!」

「おい、ヴェルトッ!」


 エロスヴィッチが俺に手をかざした瞬間、俺の体の奥底から熱い何かが溢れ出し、体に異変が起こって………つおおおおおおおおおおおお!


「ヴェルトくん? ちょ、ど、どうしたのよいきなり中腰に……って、そんな勢いよく正座して!」

「ヴェルト、体の調子が悪いのか? おのれ、エロスヴィッチ! ヴェルトに何をした!」


 体の異変に気づいた瞬間、俺は超高速で正座した。いや、だって……俺のアレが………ロケットみたいにバッキバキに……ぐっ! ちょ、ま、マジでどうなっちまったんだよ、俺の体!


「エロスヴィッチ、て、テメエッ!」

「これもある意味、デイヂと同じリミッター解除。これでお前はしばらく、強制的に臨戦態勢に入ってしまうのだ」


 この、クソやろう! 余計なことしやがって! や、ヤバイ、全然収まりそうもねえ。興奮が全然止まらねえ。素数を数えたり他のことを考えたりしてなんとか……


「ヴェルト様、顔を上げてください。一体どうされたのです?」

「ッ、エルッ……ジェラ………はあ、はあ……はあ、はあ」


 そこで、俺の顔をのぞき込むように、近づくんじゃねえよ、エルジェラ! おま、何でよりにもよって、その、柔らかそうで……埋めたくなる……ダメだ……もう、頭が壊れちまいそうだ! 飛び込みてえ……エルジェラに触れてえ……



「えっ………えっ?」


「はあ、はあ、はあ、はあ………あっ」


「「「「「ちょおおおおおおおおおおおっ!」」」」」


 

 柔らかい……いつまでもこの感触を……ってうおおおおおおおおおおおおおい!


「ヴェルト! え、エルジェラ皇女の、む、胸を……」

「ヴェルト! お前、何をエルジェラの胸を揉んでいる、離せ!」

「がぶうううっ! 婿! 胸なんて、胸なんか……婿のバカ!」


 だから、お前ら、今の俺に近づくな! 密着して羽交い絞めにしようとしても、色々と当たって……ッ!



「お、お前ら………」



 その時、俺はどういうわけか、本当に今更だが思ってしまった。


「ヴェルト?」


 急に俺の変貌振りに驚き戸惑うのは分かる。でも、俺は思わず言っちまった……



「お前ら……全員……ち、ちかい……へ、へんなきもちになっちゃうから……だ、だめだから……おれ、てれちゃう……」


「「「「「「はぐわっ!」」」」」」



 俺らしからぬ、いや、俺ですら何で言っちまったのか分からねえ。



「な、い、いつもチンピラ丸出しのヴェルトが、お、幼くか弱い少年のように顔を真っ赤に……涙目で震えて……な、なんですの、はあはあ、この込み上げる言いようのない新たなる目覚めは!」


「な、なんだ、ヴぇ、ヴェルトを……す、すごい可愛がりたい……キスしてあげたいどころか……も、もう、リードしてあげたい……」


「あぁ、ヴェルト様……そんな弱々しいヴェルト様なんて……はあはあ、ヴェルト様ではありませんわ……マーマに甘えたいん……でちゅか? はあはあはあはあ♥」


「こ、これは卑怯だわ……鼻血が……朝倉君と、ヴェルト君とエッチしたいと思ったのは何度もあったけど、食べちゃいたいと思ったのは初めてよ……」


「婿……たべたい」


「……ここでギャップ萌え持ってくんなっつーの……」



 エロスヴィッチの術で頭がどうにかなっちまったのか? だが、何かもう、段々どうでも良くなってきた……


「ッ、ヴェルトさまっ!」


 その瞬間、俺の頭を掴み自分の胸の中に埋めこむように、エルジェラが勢いよく俺に飛びついてきた。



「ッ、わ、私がお相手します、ヴェルト様ッ! お乳をお好きなだけ」


「むご、むごむごむごっ!」


「……もう、いいです。そんな苦しそうにしないで下さい。全部、私が受け止めます。どうか、ヴェルト様……どうか今だけ私に甘えて……マーマと呼んでくださいまし♥」


 

 今の俺には、そんな甘美で魅力的なセリフは、最後の最後に残っていた理性の全てを奪い取る言葉。

 でも、もう構わないと思った。今すぐ……


「ふっ!」

「ざっ!」

「けっ!」

「るっ!」

「なっ!」


 だが、それを見過ごすこいつらじゃない。

 しかし………



「誘惑精力増強術!」


 

 再び発動された、エロスヴィッチの術。それは、アルテアに向けて放たれたものだった。

 次の瞬間、俺のときと同様に、ピンク色の蒸気がアルテアを包み込み、アルテアも俺と同様に興奮収まらぬ顔、そしてだらしない、だらんとした表情でその場で腰を抜かし、モジモジと俺を凝視してきた。



「やべ、やば、ちょ、マジやべ! ッ、やば、どんどん濡……れ……やば、やばいっ! ちょ、ヴぇ……ヴェルト~」



 その表情は既に半泣き状態。だが、それを見て、俺は不意にこう思っちまった。

 か、かわいい……やべえ……め、メチャクチャにしたい……


「ヴェルト様ッ! ま、まずは私を……て、手順は、おまかせしますので……どうぞ、お好きなように……」


 ダメだ、もう、ヤバイ、俺は本当にこのままだったら……

 しかも、エルジェラは体を強張らせながらも、体は既に受け入れるように無防備になっている。

 一方でアルテアは、物欲しそうに発情した瞳でこっちを見ながら、徐々に自身の指を下腹部に近づけ、その瞬間、閉じていたはずのアルテアの両足が開き、体に食い込むように結ばれている、ヒモ付きの下着が……


「ヴぇ、ヴェルト~~……あ゛た゛し゛……」

「ッッッッ!」


 次の瞬間、俺は目の前のエルジェラを乱暴に剥こうとした。

 だが、その前に、光速の雷が、俺をエルジェラから引き剥がした! ちょ、おい、ここでお預けかよ!


「フォルナ様、何を!」

「……わ、ワタクシももう我慢の限界ですわ……」

「えっ?」

「そ、そもそも、な、慣れない行為では、効果的な成果は得られませんわ。だ、だから、ここは……既に幻想世界とはいえ、経験済みのワタクシが処理しますわ!」


 ヤバイヤバイヤバイ! もう、俺の体が、既に限界に近いほど熱く……ダメだって分かってんのに、どうしても最低なことが頭に思い浮かぶ。

 もう、誰だもいいと……


「ふざけるな! だから、私が相手をすると!」

「だから私よ!」

「ヴェルト様は私の体を求めて下さっています!」

「一番最初に交尾しようと言ったのは私だ!」

「ちょ、もう、誰でもいいからさっさとヴェルトとシて、あ、あたしにも早く!」


 アルテアもそうだった。もう、俺と同じで理性が……あっ!

 その時、俺は超重要なことに気づき、壊れかけた理性が少しだけ戻った。



「あ、アレがねえっ! あの、ほら、アレ!」



 それは、エチケットであり、マナーでもある、あの道具。

 アレがない。ほら、アレ。

 前世的にいうと、近藤さんだ。

 それは当然、アルテアの表情も変えた。



「へっ? ちょ、そ、それは、それはやっぱマジイ! その、ほら、あたし周期的に……やば、今日はマジ、デンジャーな日だし!」


 

 それはさすがにまずい。フォルナ、ウラ、エルジェラ、ユズリハは意味が分からず首をかしげているが、アルテア、そしてアルーシャは気づいたらしく、ハッとした。

 だが、アルテアはすぐにあることを思いついた。



「そうだ、アルーシャ! あたし、ゴミ溜め島で、あんたに冷やかしでアレあげたじゃん! あれ、まだ持ってる?」


「…………………………」


「ほら、最悪あんたらは嫁だからいいかもだけど、あたしはデキちゃったらマジイじゃん?」



 そういや、そんなやり取りをしていたような……って、なんでアルーシャは冷や汗かいて無言なんだよ……

 すると、アルーシャは顔を俯かせたまま、なかなか動こうとしない。目を見開いたまま真っ直ぐ、どこか遠くを見るような目。

 一体どうした?


「あ~~~~、もう! 早く出せっての!」

「ちょ、や、ダメよ、アルテアさん!」


 いつまでも動かないアルーシャに我慢できず、腰抜かしていたアルテアも自力で立ち上がってアルーシャに飛び掛る。

 アルーシャの懐をガサガサ漁りだし、服の中から何かを……ってやべえよ、理性がせっかく戻ってきそうになったのに、衣服乱してくんずほぐれつのこの光景だけで………


「ほら、あるじゃん! あ~~~よかった……えっ?」


 アルテアが強引にアルーシャの衣服の中から、小さく四角いギザギザの袋に入ったアレを手にして掲げた。

 だが、アルテアがホッとしたような表情を見せたかと思ったら、すぐにその表情が固まった。



「アルーシャ……これ……」


「だ……だって……」


「ちょっ、真ん中に穴開いてんじゃん! 使えねーじゃん! つか、まさか、これあんたがワザと?」


「ッ、だって仕方がないじゃない!」



 恐い! 恐い! 恐いよコワイよ、アルーシャッ!

 しかし、そうは言ってもこの状況はまずい! まずい? いや、だって? まずいのか? ん? どうなんだ? 俺も良くわかんなくなってきた。



「あ~~~~~~、ううう~~~~、あ~~~~、くっそ、マジ着けないで初っ端から……ありえねえし、ありえねえけど………あ~~~」



 髪を乱暴に掻き毟るアルテア。だが、その理性が徐々に弱まっているのは、俺でもよく分かる。

 そして何度か唸った後にアルテアは………


「う~~……ヴェルトォ」

「……おう」

「いざというとき……マヂ責任取れよな?」


 それは、正に俺の、直りかけた理性を完全崩壊させる一言だった。

 そして………


「ヴェルトッ!」

「こうなったら、もう、争奪戦だ!」

「もういや……こんなのが初めてなんて……でも!」

「私は一歩も引きません!」

「婿、待ってて、今から服脱ぐ」

「………いいから、さっさとマヂ、もう、早くしろっての! あたし、ほんと壊れそうなんだよ!」


 ついに始まった。


「いざ!」

「尋常に!」

「勝負!」

「精根尽き果てるまで!」

「婿、チュウ!」

「あうううううううう、あたしももう限界ッ!」


 その後何があったのか、正直、途中途中の意識やら記憶がかなり飛ぶほど俺たちは戦った。


 六対一。世界最強の女たちとの攻防戦。


 息つく暇も無いほど、本能に任せて獣のように俺たちはぶつかり合い、エロスヴィッチは作り出した異空間を閉じた。


「あ~~~いいことしたあとに自分を慰めるのは、本当気持ちいいのだ。わらわも混ざりたいが、ここは我慢して……くく、溜まったものは全てカイザーに相手してもらうのだ。…………あん、んっ……おお、全員入り乱れた乱戦なのだ」


 戦いの詳細は………あんまよく覚えてない………





――あとがき――

全員美味しく戴きました。



また、下記もブクマ、また読んでいただけたらご評価お願いしますです。


『段階飛ばしの異世界転移ヤンキーと利害一致のセフレたち~乙女と1Hごとにお互いLv1アップして異世界を最下層から駆け上がる』

https://kakuyomu.jp/works/16816927859544060323

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