第16話

ローグとオレはまず、サトナカのオフィスを訪ねた。

サトナカは机に向かってタブレット型の端末画面をつついていた。

オレは部屋の入り口で、サトナカに向かって声をかけた。

サトナカはゆっくりと顔をあげると、ローグとオレを交互に見て、何の用かと訝った。

オレはローグをチラと見て、サトナカに要件を話した。

「携帯のできる小型の武器がほしいのです」

「携帯武器?」

「敵に接触するので、護身用の武器が必要なのです」

ローグがオレの傍らに来て、そっと寄り添うように立った。

オレはローグを横目に、さらに言葉を続けた。

「隠し持てる小型の、威力の小さなものが良いのです。わたしの体内の武器では、破壊力が大きすぎて、相手を粉砕してしまいます」

オレの言葉を聞きながら、サトナカは思案げに暫くうつむいていたが、何かを思いついたように、おもむろに顔を挙げた。

「では、武器庫へ行って、わたしの名前でヘイブという男を呼び出せ。その男が要望を叶えてくれる」


オレとローグはサトナカのオフィスを出ると、武器庫へと向かった。

この基地の武器庫は地下にある。

かなり広くて、テニスコートが2面くらいは入ってしまう。

その中に武器が詰まっている。

管理室の受付で、ヘイブを呼び出してもらって、暫く待っていると、痩せ方のメガネをかけた青年が応対してくれた。

この基地には珍しく、生身の部分が多い人間だった。


オレはこの青年に好印象を持った。

どうやらローグもそうだったらしく、ヘイブ青年に、ひっきりなしに話しかけていた。

その内容の殆どが、つまらない世間話だったが、中には調査対象の情報を聞き出そうとするものもあったので、オレは注意深く耳を済ませた。

サイボーグ体には、意識を集中するとヴォリュームをアップしてくれる機能も備わっているので、便利に使わせてもらった。

もちろん録音だって出来てしまう。

しかし、そうやって聞いていても、めぼしい情報は手に入らなかった。


武器棚のロックを解除すると、ヘイブは言った。

「どんなものがお好みですか?」

オレはゆっくりと棚を見回すと、小型の拳銃があるのと、手頃なレーザーナイフがあるのを確認してから、他のも見ておいた。

今後必要になるかも知れないからだ。

「そこの小型拳銃と、レーザーナイフを2組ほどほしい」

ローグは、オレの前に身を乗り出して言った。

「わたしはその他にもそこの行動抑制ユニットがほしいわ」

行動抑制ユニットとは、サイボーグの行動を制限するための装置であるが、あまり使われない。

「わたしは体格もパワーも低いからね」

パワーはわからないが、体格はそれなりだと思うのだが、彼女としては気になるところなのだろう。

オレとローグは、武器を受け取ると、礼を言って、その場をあとにした。

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