第8話 戦乱の惑星 8

「図書室」と表示された、データ検索用の専用古音ピュータールームに入ってみた。

何か調べ物があれば、ここを利用するという事も出来る。

オレの脳は、ネットに繋がっているが、常に軍の監視下にある。

軍の監視を避けたければ、こういった、手動で検索の出来るコンピュータールームも使う必要がある。

もっとも、この検索室も、軍の監視下にあるわけだが、脳から直接探るよりは、まだ監視がゆるい。


ローグもこの部屋を気になって、色々と、機材をさわっていた。

古い、端末タイプのコンピュータが数台置かれていた。

ここはおそらく、まだサイボーグ化されていない人たちのものであった。

オレは、そのような者達に、特別な感情も抱かなかったが、機械の身体になる前の姿に戻ってみたいと感じる事もあった。

ローグはどう思うのだろう?

ふと疑問に思ったオレは、聞いてきたいような感覚があった。


オレは端末の一つが使えるかどうか確かめたくて、スイッチを探した。

電源はすぐに見つかった。

電源を入れると、30秒くらい待たされたが、すぐに起動してくれた。

なんの問題も無く、マルス帝国軍標準の、OSが起動して、検索プログラムが自動的に起動した。


キーボードから、何か文字を入力してみる。

瞬く間にずらずらと、候補がリストアップされてくる。

それにしてもこの手の端末の使い勝手は、一向に改良されていない様子であった。

なぜならば、サイボーグ技術は進んでいて、健常な肉体の持ち主でも、脳内にチップが埋め込まれているので、検索などは、そちらのコンピューターを使った方が、早くて使い勝手が良いものだから、このような古い端末タイプは、改良される事は無く、ただもう消えゆくのみだったのだ。


だがオレは、こういったキーボードをさわるのも、結構好きだった。

ローグも、このような端末に興味がある様子で、食い入るように眺めては、スイッチを入れてみたりして、遊んでいた。


「面白いわね、やっぱりアナクロな装置って」

言って、嬉しそうにさわりまくっていた。

オレも、その事には激しく同意して、彼女の趣味に敬服する。

「たまに来ようか」

オレは言ってみた。

彼女の返事などは、あまり期待していなかったが、それでも少しだけ下心もあった。

「いいわよ」

軽い返事に、オレは耳を疑った。

「暇な時にね」

彼女は続けた。

まあそれでも、デートの約束を取り付けた事になるのだろうか?

オレはなんとも言えない気持ちで、さらに端末を操作して、その操作感を確かめていった。


軍の機密事項に触れそうなワードも検索してみたが、こちらはやはり、検索不能だった。

と言うよりも、検索できたのが、民間の報道番組や、帝国の広報などで流されている情報のみだった。

やはりこの程度の制限は設けられているようだ。

オレは端末の電源を切り、次は何をしようかと、思案を巡らせた。

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