第二十八章 死者の森
第二十八章
森に入るとルハーニは森の
けれどそんなハルシャ王子にも森の奥に入ると、ルハーニが森の中に入りたがらなかった訳が分かるような気がした。森は
「ルハーニ、大丈夫か?」
シェーシャが言った。
「うん。」
ルハーニは短く返事をした。ルハーニは
「空気が重いのう。ハルシャ王子は大丈夫か?」
クールマが尋ねた。
「僕は平気。」
ハルシャ王子は本当に何ともないという様子だった。ハルシャ王子は
「暗くなって来たな。」
シェーシャが言った。日が暮れるに連れ、もともと薄暗い森がさらに暗く、
「そうじゃのう。ではここで
クールマがそう言うと、ルハーニは立ち止まった。
「
ハルシャ王子が尋ねた。
「
ルハーニはそう言いながらリュックと肩に乗っていたクールマとシェーシャを下ろした。ハルシャ王子もそれを見て自分のリュックを下ろした。
ルハーニは手で、ハルシャ王子とクールマ、シェーシャ、そして二つのリュックをぐるりと囲んで、二人の人間が横になれるくらいの大きさの
『囲いの中は我らの場所。
獣は立ち去れ。
虫は寄るな。
ルハーニはそう
「呪文は本当にそれでいいのか?」
ハルシャ王子はあまりにも短くて、心のこもっていない呪文に疑問を覚えた。
「これだけだよ。」
ルハーニは答えた。
「
スターネーシヴァラ国の
「これで今夜は
ルハーニがハルシャ王子を安心させるつもりで言った。
「大体?」
ハルシャ王子は突っかかった。
「お前、本当にそんな
ハルシャ王子はまるでルハーニを自分の
「黙れ!我々にはお前をタール
「よせ、シェーシャ。この森で大声を出してはいかん。」
ルハーニは
「ハルシャ王子、
クールマが
「分かった。」
ハルシャ王子はふてぶてしく返事をした。
「火を起こそう。」
クールマがルハーニに言った。ルハーニは
「一体何をしたんだ?」
ハルシャ王子が驚きの
「ルハーニは炎の使い手なのじゃ。
クールマが
「炎の使い手?」
ハルシャ王子は
「炎を
クールマが説明した。
「タール
ハルシャ王子はそう口をついていた。
「風の使い手とな。」
クールマが
「ああ。アニルはアジタ
「風の使い手が二人もいるのか?」
シェーシャが驚いたように言った。
「そうだ。でもアジタ
ハルシャ王子は思い出すように暗い顔をして言った。ルハーニもそれを見て暗い顔をした。
「スターネーシヴァラ国では祭司の間で風の使い手は特別な存在だった。
ハルシャ王子が気を取り直すように顔をあげて尋ねた。
「ハルシャ王子は
クールマが言った。
「知らない。」
ハルシャ王子は
「そうか。ならば教えよう。この世は主に四つの
クールマは
「世界を作り変えるだって?」
ハルシャ王子は息を呑んだ。
「そうじゃ。じゃがまあ、実際には不可能な話じゃが。」
クールマが肩の力を抜いて言った。
「不可能ってどうして?」
ハルシャ王子が喰らいつくように言った。
「天界の神々と冥界の神々が同時期に
クールマが横にいるシェーシャに同意するよう求める視線を投げかけながら言った。けれどシェーシャは面倒くさそうな顔をして特に応答しなかった。
「そうなのか。」
ハルシャ王子はホッとしたように言った。
「ところで、アニルさんは何でタール砂漠にいるの?」
話の区切りがいいところでルハーニが遠慮がちにハルシャ王子に尋ねた。
「
「
シェーシャが
「僕にも分からない。突然城からいなくなって、誰も行方を知らなかったんだ。だけど今思うとみんな知らないんじゃなくて、僕に隠してたんだ。」
「どんな人なんじゃ?」
クールマが尋ねた。
「僕の家庭教師だった。ラーケーシュの前の。さっきも言ったようにアニルは風の使い手で、次の
ルハーニは特に反応を示さなかったが、クールマとシェーシャは互いに顔を見合わせた。
「追放されたことを
シェーシャが言った。
「確かに。じゃが、もしそうだとすればタール
「アニルはそんなことしない!」
ハルシャ王子が声を荒げて言った。
「信頼できる人物なのか?」
クールマが鋭い目をして尋ねた。
「もちろん。」
ハルシャ王子は言い切った。クールマはハルシャ王子の真剣な目を見てそれ以上何も追求しなかった。
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