第五章 兄弟
第五章 兄弟
何時間も経ってからのことだった。部屋に閉じこもっていたハルシャ王子は泣き止み、落ち着きを取り戻していた。ベッドの上に寝転がりながら、ぼんやりとアニルのことを思い出していた。アニルはアジタ
トン、トン、トン。
ハルシャ王子は扉の鍵を開けようかどうか迷った。けれどやはりまだ開ける気にはなれなかった。扉はもう一度叩かれた。
トン、トン、トン。
「ハルシャ。」
ラージャ王の声だった。ハルシャ王子はとっさに
「ハルシャ、私です。鍵を開けて下さい。話したいことがあるんです。」
ラージャ王は呼びかけた。けれどハルシャ王子は
「ハルシャ。」
ラージャ王はまた呼びかけた。けれどハルシャ王子は布団を被ったまま返事をしなかった。
「ハルシャ、さっきは悪かったね。ついカッとして
ラージャ王は扉の向こうからハルシャ王子に話し続けた。
「実はさっき話さなければならないことがあって、ハルシャの部屋に向かっていたのです。大切な話だからよく聞いて下さい。明日、私はカルナスヴァルナ国へ出発します。カルナスヴァルナ国は知っていますね?東にあるシャシャーンカ王が
カルナスヴァルナ国のことを話すラージャ王の口調は国王として大臣たちと政治を話し合う時と同じだった。
「私が城を空けている間はサクセーナ
「……。」
ラージャ王は返事を待ったが、ハルシャ王子は黙ったままだった。ラージャ王は
「ハルシャ、カルナスヴァルナ国から帰ってきたらちゃんと話しましょう。じゃあ、おやすみ。」
ラージャ王はそう言うと、扉の前から去って行った。
翌日、ラージャ王がカルナスヴァルナ国へ出発する時がやって来た。天気は
その光景をハルシャ王子は王宮の窓から
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます