追放された最弱ヒーラーの成り上がり冒険録~ゲーム知識を利用して、世界最強のヒーラーになる!誰が最弱ヒーラーだって? 実は時空魔法を使えるって知っていた?

煙雨

第1話 追放

 冒険者で上を狙っている人は、十五歳から十八歳まで冒険者学園で学び、十六歳の時に神官から職業を告げてもらうことができる。


 俺ことルイ・スミスも一年間この学園で学び、やっと職業を告げてもらう日に直面していた。


 少し緊張しながらも、自分の職業を聞くことにたいしてワクワクしていた。なんせ、この一年間の集大成が今日わかるのだから。


 そんな時、学園で切磋琢磨してきた友達の一人、アイラ・サーリアが話しかけてきた。


「ルイス! やっと職業が分かるね」

「楽しみだね!」


 クラスも一緒で、学業もトップを争っていた仲間だったので、お互い緊張しながらも笑い合っていた。学園の仲間と数十分話したところで神官がやってきて、お告げが始まっていった。


 そして等々、俺の番がやってきた。胸の鼓動が分かるほど緊張していた。


「ルイスさん。あなたはヒーラーです」

「え? ヒーラー......」


 その言葉を聞いて、俺は絶望した。この世界のヒーラーとは最弱職業の一つであった。普通の職業では低級職から上級職に上がることができるが、ヒーラーには上級職がない。そして回復職業であるヒーラーより僧侶の方が優れいているため、冒険者として活躍することなんてありえなかった。


(嘘だろ......)


 恐る恐る周りを見回すと、全員俺を軽蔑する目でこちらを見て来ていた。そこから時間の流れは速く、アイラの番になった。


「アイラさん。あなたは賢者です。おめでとうございます」

「は、はい! ありがとうございます!」


 すると先生方や生徒たち全員がアイラの周りに行って、喜んでいた。そして全員の職業が分かったところでクラスに戻り、ホームルームが始まった。


「学園初の賢者が、このクラスから出ました! これは喜ばしいことです。皆さん、アイラさんに拍手」


 先生がそう言うと、全員が拍手をする。そしてもう一言。


「そして残念なことにこの学園で初の最弱職業も出てしまいました」

「......」


 すると全員が俺の方を向き、嫌悪を表してきた。


「まあルイくんは冒険者はあきらめて他の職業でも探してくださいね」


 そう言ってこのクラスを去っていった。そこからの日々は最悪であった。今まで仲が良かったクラスメイト達からは無視され、優しく教えてくれていた先生方からは軽蔑される目を向けられた。


 そして二年次の恒例とも言える三年生との模擬戦の日程が決まった。俺の相手は三年生主席のアインズさん。職業は聖騎士であり、今後活躍されると言われている逸材であった。


(なんで俺がこんな人と......)


 そう思っている時、クラスメイト達が俺に言う。


「ルイ、なんでまだここにいるんだ? 学業が良いからって居座るなよ。お前はこのクラスの汚点なんだしよ」

「そうよ! でも今辞められるのも困るし、模擬戦で負けてから辞めた方がいいんじゃない? 自分の実力もわかるんだしさ!」


 その一言で、クラスから笑い声が響いた。


 (今まで仲が良かったのに......)


 こんな仕打ちあんまりだろと思った。すると選定日以来話していなかったアイラが話しかけてくる。


「たかが勉強ができる雑魚をライバルだと思っていた私がバカだったわ。早く目の前から消えてくれない?」

「え......」

「アイラ! それは言っちゃいけない。まだ未練はあるんだからさ!」


 そこから俺への仕打ちは今まで以上にひどくなった。無視からいじめと言えるほどに変わり、先生方も見てみぬふりをした。


(なんでヒーラーなんだよ!)


 そう思った。学業ではトップ層にいて、実技もそこそこの成績を取っていた。それなのにヒーラーなんてあんまりだろ。でも今更何か変わるわけがない。



 数日経ち、模擬戦の日になった。会場に入ると、今まで見たこともない人数の観客がこの場にいて驚く。


(なんでこんなに......)


 そして対面して決闘が始まろうとした時、大声でアインズさんが言う。


「皆さん! 聖騎士である私と最弱職であるヒーラーを見るのは楽しみですか? 

私は戦いたくありません」


 その言葉に観客全員が呆然としていた。


「冒険者とは困っている人を助ける仕事であり、こんな雑魚を相手にする仕事ではありません。皆さんもそうは思いませんか?」

 

 すると観客たちが言う。


「そうだ。戦ったら汚点だ」

「こんな雑魚見たくもない!」

「そんなことよりもこいつを退学させろ!」


 そして最後に一言。


「その変わり、ルイをこの学園から追放したいと思います!」


(え?)


 アインズさんがそう言ったら観客たち全員が大声で盛り上がった。そしてアインズさんがこちらにやってきて耳元で言う。


「雑魚は雑魚らしい仕事でも探していな」


 アインズは蔑む目でこちらを見ながら会場を去っていき、俺は観客から罵倒を受けながらこの場を後にした。


(学園を追放って......)


 帰り道、追放の二文字が頭によぎりながら歩いていると、誰からか後ろを押されて階段から突き落とされた。


 目を覚ますとそこは保健室であった。


(え? ここって......)


 周りを見回すと、教師がこちらにやってきて言われる。


「目が覚めたなら早く出て行って。ヒーラーなんでしょ? 自分で何とかできるよね? それにあなたはもうこの学園の生徒じゃないんだからベットを貸しただけ感謝しなさい!」

「はい」


 言われるがまま保健室を後にした。その後、学園を回って状況をやっと理解した。


(ここってバーミリオン・オンラインじゃね?)


 そう、俺が前世でやっていたMMORPGの世界であった。



 ここから前世の知識を活用して、世界最強のヒーラーを目指すのであった。

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