荷車引きのシェイクテイル

乾縫

世界・登場人物など紹介するページ

 こちらは「荷車引きのシェイクテイル」内で使用される本作独自の「地理」「固有名詞」「キャラクター」などの設定を紹介するページです。

 簡単に目を通していただけますと、混乱なく物語を楽しむことができると思いますので、よろしければご覧ください。


※※※

 現在、文字数にして約4300文字程度ございます。

 このページを読まずに本編を読み始めても、さほど問題はございません。

 分からない言葉が出てきたなぁ。という時に、こちらのページの存在を思い出していただけますと幸いです。

(この言葉の説明が無いようだが、どうなっている?などのご意見を頂きましたら、可能な限り追加していこうと思います)

※※※


 物語世界の紹介


・ゼントル平野

 ブリタン島の中央に広がる広大な平野部。

 多少の起伏はあるものの全体的に平坦で、南北に流れる大河ゴフルスの支流が無数に東西に別れている影響か土地は肥沃で、畑作や牧畜が主な産業である。

 人間の管理が及ぶ農地は平野部全体の二割程度しかなく、残りの八割は草原か森林であるが、それでも人口に対して充分な量の穀物を生産できている。

 ゼントル平野のほぼ中央には、物流の中心地であるフルスファがある。


・フルスファ

 新旧二重の城壁を持った歴史ある大理石と煉瓦の街。

 とうの昔に城壁内に人口を収めきれなくなっており、現在では城壁外の居住区の方が広い。

 地理的要因から物流の中心地であり、また騎獣競技協会の本所所在地でもあるため、騎獣生産の中枢と言える。


・リスヒルの古城塞跡地

 フルスファから北街道を四十キロメートルほど進んだあたりにある宿場町がリスヒルである。

 そこから西に数キロメートル進んだところに宿場町の名前の由来となった小さな丘リスヒルがあり、小さな丘リスヒルの周辺には実りの多い森林が広がっているため、住民たちによる狩猟や採取が盛んであるが、二年前の地揺れで小さな丘リスヒルが地滑りを起こし、森林に小さくない被害が出た。

 被害状況の確認を行った際、地滑りを起こした斜面から、明らかに人間の手によって加工された石材が発見され、軍主導による発掘調査が行われた結果、古い時代の城塞跡地が発見される。

 このような遺跡は各地でも発見されており、特別珍しい物ではない。


・双子山脈と樹海

 逆三角形(▼)に近い形状を持つブリタン島の北端には五千メートル級と思われる山脈が東西に横断しており双子山脈の向こう側については良く分かっていない。

 山脈の中間あたりには比較的標高が低い部分(谷間)があり、その低地から漏れ出すように森林が広がっている。


・樹海

 双子山脈の谷間からゼントル平野北端まで広がる森林地帯を樹海と呼ぶ。

 樹海は動植物の性質が常識とかけ離れている場合が多く、人間が生活できるような環境ではない。

 樹海の植物は総じて生長速度が極めて速く季節に関わらず実をつけることから、樹海は毎日数メートルほど南に拡大している。

 人類の生存圏確保のため、軍が騎獣を運用し樹海の伐採と魔獣の対処に当たっているが近年は魔獣が増加しており、樹海の開拓は難航していると言わざるを得ない。


・魔獣

 樹海のみで存在が確認されている特殊な獣。

 通常の獣と似たような形状を持つものが多いが大抵は人間よりも巨大であり、生物として違和感のある特異な姿を持つものも少数ながら確認されている。

 人間では太刀打ちできない程に優れた身体能力を持つこと、執拗に人間を狙うことは分かっているものの、詳しいことは謎に包まれている。

 はっきり分かっていることは、魔獣が人類の天敵であるということである。


・騎獣

 古い時代から人間と共にあった獣。通常の獣と似たような形状を持つものが多いが大抵は人間よりも巨大であり、生物として違和感のある特異な姿を持つものも稀に生まれるため、通常の獣とも、魔獣とも異なる存在だと認識されている。

 人間が得た魔獣と樹海に対抗する唯一の存在であり、樹海の伸張を防ぐ目的に運用される他、民間での運送業や土木作業などでも幅広く活躍する。

 人間にとって、無くてはならないパートナーである。


・騎獣競技会

 闘技大会と競走大会に大別され、唯一の公認賭博として高い人気を誇る週末の一大エンターテインメントであるが、未成年者は応援券の購入ができない。

 騎獣の改良を目的とした品評会が前身であり、千年以上の歴史がある。

 軍の騎獣生産管理部が監督する騎獣競技協会が発足して以降は、同協会が大会を主宰し、優秀な結果を残した騎獣に対して報奨金を与えることで能力向上を励行している。

 軍用騎獣の改良・育成を至上目的としているため、厳密な格付け制度(レイティング)が導入されており、最高格レイティングワン(R1)の大会は本当に優秀な個体しか出場することができない。

 軍用騎獣を優先する協会の方針から、競走大会を一段下と見る風潮が強いため、レイティングワンR1八大大会の内に競走大会は一つも含まれていない。

 騎獣の競技会参加期間は、数え二歳から四歳までの最長三年間と定められており、引退後の騎獣の行く末は、ごく一部の優秀な個体を除き、軍に買い上げられるか、民間に放出されるかの二択である。


優先繁殖枠ファストクロップ

 最大三年間の騎獣競技会で、極めて優秀な成績を収めた騎獣に与えられる特別待遇。

 通常の場合、軍用騎獣は戦役に就きながら繁殖を行うか、退役後に繁殖枠に回されるが、優先繁殖枠ファストクロップに選出された騎獣は戦役が免除され、繁殖を最優先に運用される。

 毎年、その年の競技会引退騎獣の中から若干数のみ選出されるが、選出されない年もある。


・トレーナー(一級騎獣調教師資格所持者)

 軍用騎獣の調教資格を持つ者をトレーナーと呼び、トレーナーの調教を所定の期間受けていない騎獣は、例外なく競技会に出場することができない。

 王国で最も歴史ある国家資格であるため取得難度は高いが、この仕事に憧れる者は多い。

 また騎獣関連の資格は他にも繁殖、飼育、騎乗・誘導と、合計四種類存在するが、これら全ての資格を持つ者をフルトレーナーと呼ぶ。



 登場人物紹介


・ジルバ・ヴァーグナー

 二十代後半の男性。フルスファ郊外にあるヴァーグナー育成牧場で生まれ、幼い頃から騎獣調教師としての英才教育を受けたフルトレーナー。

 母親を幼少時に失っており、母親に関する記憶がほとんど無いが、多くの騎獣たちや牧場関係者に囲まれて育ったため、寂しさを感じたことはない。

 史上最年少でのトレーナー三冠取得を期待されているが……。


・フランク・ノイマン

 四十代後半の男性。フルスファにある王立第二大学校で考古学を教えている学者。

 妻と娘と共にフルスファの郊外に住居を構えているが、二年前からリスヒルの古城塞跡地の発掘調査に注力しているため、家族の時間が少なくなってしまったことを気にしている。


・エミリア・ノイマン

 高等学校卒業を控えるフランクの娘。

 家の近所に育成牧場がある影響か、幼い頃から騎獣が大好きでトレーナーに憧れている。

 しかし母親から男社会であるトレーナー業界を目指すことに反対されており、自身の進路をどうするか悩んでいる。


・カール・ヴァーグナー

 フルスファで最も古い歴史を持つヴァーグナー育成牧場の牧場主である六十代男性。ジルバの父親。

 八大大会の内、五大会を制覇した五冠トレーナーであり、レイオン種育成の名手として名高いフルトレーナーであるが、既に第一線は退いている。

 大まかな育成方針の決定を行うが、実際の飼育・調教業務は雇用しているトレーナーに任せ、自身は牧場の経営業務に専念している。


・ハインツ・フォーゲル

 フルスファに古くからある新聞社に勤める六十代の男性。

 騎獣競技会に関する記事を書く機会が多く、フルスファにある騎獣育成牧場に関して、ハインツが知らないことはほとんど無い。

 カール・ヴァーグナーとは幼い頃からの友人である。


・マルクス・シュルツ

 騎獣競技協会を監督する軍人の一人。騎獣生産管理部所属の四十代男性。

 有能だが情の薄い所があるため、周囲からの評判は良くない。


騎獣種紹介


・レイオン種

 狼に似た外見を持つ騎獣種で、頭尾全長は三~四メートル程度になるのが一般的であり、お座りした状態で成人男性と同等かそれ以上の高さになる。

 一般的に飼育される騎獣種の中では最も強い咬合力(嚙む力)を誇り、また学習能力にも優れているため比較的飼育が容易で、もっとも古くから飼育されていた騎獣種の一つであると言われている。

 平均寿命は二〇年程度と言われているが、民間で活躍したレイオン種の中には、三〇年以上生きた個体も確認されている。


・アドマイヤブラウン

 ヴァーグナー育成牧場保有騎獣。ありふれた薄茶色の体毛を持つレイオン種。

 幼獣期からのんびりとした大人しい性分で、特別な期待をかけられた個体ではなかったが、経験の浅いジルバが初めて単独で本格的な調教を行うのには都合が良いと判断されコンビを組むこととなった。

 身体能力は平均よりもやや優れる程度だが、調教を重ねるにつれ極めて優れた学習能力と強烈な闘争本能を発揮し、ルーキーイヤー最高の栄誉ジュニアチャンピオンシップ(R1)で世代最強と呼ばれたゴルトンディアマントを下してジュニア王者となる。

 二年目最初のR1スターダムステップ春も優勝し二冠目を獲得。

 トレーナーと共に、三冠目を期待されている。


・レプタイル種

 爬虫類に似た外見を持つ騎獣種をまとめてレプタイル種と呼ぶ。

 大別して四足歩行型、前足が矮小化した二足歩行型に分けられるが、体型だけを見ても多様な分化を見せており、より詳細な分類をすべきという意見もある。

 長命な種で、四〇~五〇年生きる個体もあり死ぬまで成長し続ける。そのため生長速度こそ緩やかだが能力限界値が高く、最も大きくなる種では全長十メートルを超える個体も珍しくない。

 大型な種ほどパワーと耐久性に優れているが、小回りが効かないという難点もある。

 障害物の多い樹海内での移動や戦闘に適さないことから、一時は荷車引きの代名詞的な種族であったが、類人猿に似た歩様を持つ半二足歩行のナックルウォーク型レプタイル種が誕生してからは、パワーと耐久性に加え、最低限以上の敏捷さも発揮することが可能になり、評価が刷新された。

 現在闘技会にエントリーするレプタイル種のほとんどは、ナックルウォーク型レプタイル種である。


・ゴルトンディアマント

 ゴールドウィン育成牧場保有騎獣。薄黄色の鱗を持つナックルウォーク型レプタイル種。

 晩成型が一般的なレプタイル種においては異常なほど早熟な個体であり、特に鱗や甲殻の成熟が良好で世代最強と呼ばれていたが、ルーキーイヤー最強を決めるジュニアチャンピオンシップ(R1)でアドマイヤブラウンに敗れ、ジュニア王冠を逃した。

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