第14話

「何だって、奈々川さんの家に不審者がいたって!? そんな時は俺も呼んでー!」

 島田だ。

「ああ。……今は奈々川さんと……」

 あの後、奈々川さんの家財道具のほんのちょっとを私の1LDKに入れ、奈々川さんに私のベットを与えた。私は床で寝ている。

 私の頭は家にいる奈々川さんのことでいっぱいだった。

 私と島田はお互いの車でA区とB区の境界線上にあるガンショップにいた。国道42号線沿いの近くに陸橋があるところだ。

 18時の気候は少し寒かった。強風と雨がざあざあ。

「早速。銃と弾丸を沢山買おうぜ」

 店内は人でごった返しになっていた。

 だけど、殺伐としているわけじゃない。賑わっている。

「このS&W500なんていいんじゃないか?」

 多種多様の銃が並ぶ棚へと行くと、島田が大型拳銃を差し出した。


「……値段も手ごろだし……いいかも知れない」


「俺はこれにする」


 島田はにこにこと愛用のベレッタと同じものを取った。

「はっ……? あっ、銃は以外と安いな。今日に限ってかな?」

「ああ。今日はバーゲンなのさ。だから誘ったのさ。お前を……」

 ごった返しの店内放送では、5万5千円の大型拳銃の宣伝がされている。

「その奈々川さん。式はマジで何時なのさ?」

 島田は弾丸のあるケースを見つめて話している。

「まだだ! 奈々川さんの気持ちも考えないといけないし。銃と弾丸などの武器の補充も必要だし。だいたいは何カ月か後さ。でも、奈々川さんがOKするかしないかで変わるんだし」

「ふーん。お前がその奈々川さんと一緒がいいと考えるんなら。俺はいつだって待ってやるよ」

 客の一人がのそのそと歩いてきた。

「弾丸が安い店を知っている」

 そう一言話し奥へと行った。

「何だ今の?」

 島田と私は顔を見合わせる。

「今はけっこう沢山の弾丸が欲しい時だし、行ってみるか?」

 島田が不敵な笑みを向ける。

「ああ。俺が話すよ」


 私はその男を追って店の奥へと歩く。

 その男は何とも言えない微笑をしながら棚にある銃を見物していた。年は30代半ばで嵐が吹き去ったような頭の地味なスーツ姿だった。

「あの。弾丸が安い店に行ってみたいんだけど。どこ?」

「ああ。この店の裏手にあるスーパー弾丸(たままる)さ。そこへ行くとこっちの店よりも4割くらい安い弾丸が売ってあるのさ。どちらも良い品ぞろえなんだがね」

 スーツの男は銃をニヤニヤした表情で選んでいたが、急にこちらに身を乗り出して話してもいる。

 あまりにも熱心に言うので、私は手近な弾丸を用心のために幾つか買い。新しい銃と島田を連れて、ガンショップの裏手へと車で行くことにした。

 島田は微笑むと。

「なんかラッキーじゃねえ。いっぱい弾丸買おうぜ。銃も安かったし」

 裏手の陸橋に伸びる階段の近くに、スーパー弾丸があった。ほんのりした明かりを点けているが、店先には早くも弾丸の値段がデカデカと張られている。……安い。

「夜鶴。ここでなら弾が幾らでも買えるぜ。危険な匂いがするけどよ」

 

 私は周囲を見回した。

 店内には客が一人もいない。そして、店員がレジに立っているだけだ。

 一発560円のハローポイントが、320円だ。6発入りのカートリッジで1720円。


「危険かも知れないけど……買うか。銃の安全装置を外しておこう」

 私と島田が店内に入った。

 店内にも何らおかしなところがない……。

 私は手頃な弾丸を数個買い。島田は弥生の分と自分の分を私の倍も買っていた。

「なあ……取り越し苦労なのかな。ただ単に?」

 私は店員の顔をちらりと見ては、安い値段で買えた弾丸の入ったビニール袋を渡される。

「ありがとうございました」

 店員も不審なところがない。

「いいんじゃねぇ。運がよかったのさ」

 島田は大きめのビニール袋と何万という大金を交換し、早速買ってあるベレッタに弾丸を詰め込んだ。

 店を出ようとした時、外に置いてある車に何者かが近付いていた。

 私は島田と自分の車の置いてあるところまで、足早に進むと島田がビニール袋を投げ出し血相変えて走った。

 島田が目にしたのは、その車付近の男の持つラムネのスチール製の蓋だ。恐らくそれで車体に傷を付ける……悪戯?その男は若い背格好だ。


「何しやがる!」

 島田が噛み付く。

 次の瞬間。

 二人は殴りあった。

 私は何が起きているか解らずに、銃を男に向ける。

 数分で島田が立ち上がる。若い男が鼻血を出して倒れる結果になった。島田はへらへらしているが以外と強いのだ。

「待て! 知らない男がこの近辺で車に悪戯をしたら、十万やるって話だったから!」

 寝ていた男が叫んだ。

 喧嘩を仲裁もしなかった私に、その男は唸った。


「くそ、でもこれで十万だからな。絶対に貰うぜ。あいつから」

「その男はどういう奴だ。てめえ?」

 島田が倒れた男に問い詰めた。

「知らないやつだ。銃を見つめると恍惚になる奴だったぜ。多分、まだガンショップにいると思う」

 その男は鼻血を拭きながら、数か所の痣を手で擦りながら話す。

「あいつじゃねえか」

 島田が怒気のこもった顔をする。

「ああ。でも、悪戯だけなんて、何か変だ?」

 私は腑に落ちないといった顔を島田に向ける。

「うーん。確かに変だぜ……」













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