心と贈り物 21日目

 一人でいる寂しさを紛らわせようとしてつけていたテレビが、昔から続く国民的テレビアニメを流しはじめている。両親の学生時代から決まって日曜日の夕方に流れているので、今ではこの国に住んでいる人にとっては時報のような役割も担っていた。

 そして、人によってはこのアニメが映ると明日からの日々が憂鬱になる人も一定数いるようだった。

 けれど、社会人になってから最近まで駆け抜けるように仕事をしてきた私には縁遠い話でもあった。



 みんな憂鬱になるみたいだけど、三咲はどうなんだろう?



 試しにメッセージアプリを開いて『明日からまた仕事だね』と送ってみる。

 三分もしないうちに『二日頑張れば水族館だよ』と返ってきて、次の休みを楽しみにしてくれているのが文面でも伝わり頬の筋肉が徐々に緩んでいた。



 ここ二週間ぐらいで頻繁にメッセージを送りあう人が出来て、今度はその人と一緒に水族館に行く約束もしている。

 友達とこうして遊びに行くのも、人によってはデートっていうのかもしれない。

 その辺りの判断基準とかは聞いたことがないので、実際はどうなのかは分からない。

 けど、もし三咲がそう捉えているのなら——私はそれでも別に構わなかった。

 今は彼女と一緒にいる方が充実していて、それが出来るのなら呼称に大きなこだわりなんて持っていないのだから。



 三咲にスタンプで『がんばろー!』と元気に返してから、キッチンに移動して冷蔵庫の食材を選別しはじめる。今日は何を食べるかよりも、三咲にどんな料理の写真を送るかで選んでいるので、それも毎日作る楽しみへと変わっていた。


 この水曜日で、彼女に対する恩人としての関係は一旦区切りがつくだろう。

 でも、既にもうお互いに友達だと思っているので私の気持ちの整理がついてもこの繋がりはまだまだ続いていくことを確信している。

 そしてこれからも、こんな他愛のない時間がこれからも増えていくことを、今はそう願うばかりだった。

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