煌めく瞳に
くしき 妙
煌めく瞳に
今年も七夕の夜がやってきた。満天の星空の下に夕子は1人佇んでいた。どの星よりも輝くひとつの星を見上げている。それは、夕子の恋人の元気が優しく夕子を見下ろす瞳のようだった。
元気が夕子の煌めく瞳に語り掛けてくる。
―夕子、どうしたら俺がお前をこんなにも愛していると分かってくれる?
「誰かが言っていたわね。この心を取り出して見せてあげられたら、分かってもらえるって」
―取り出した心の何を見たら、そうわかるんだ? 心には書いてあるのか? 俺の愛がどんなに強いか? もしそうだとしたら、俺の心に書いてあることを俺は読み上げればいいだろうに、どうして俺はそれができないんだ?」
「そうね。でも、愛は心で感じるものでしょ」
―心には何も書いてないよ。
「じゃあ、心を見ればどうして愛が本物だとわかると人は思うのかしら?」
―心が感じることは形になっているのか? 色はあるのか?
「どうかしら? 私は貴方が恋しくて胸が締めつけられるの。心にはキズが残っているかも?」
―じゃあ、苦しみの色をしているのか? 苦しみの色ってどんな色だ?
「きっと、血の色だと思うわ」
―お前は、俺を想って血を流すのか?
「そうよ。私のために、貴方が命を落とした。すぐにでも貴方を追いたかった」
―夕子、それはしないって約束したろ? 俺の為に生き抜いてくれ。
「元気、逢いたくて、逢いたくて、苦しくて涙が流れるわ。夕陽を見れば貴方の燃えるような瞳を思い出す。雨が銀糸をたらしていたら貴方の髪に触れたくなるの。夜中に貴方の腕の中の温かさを思い出して涙が零れるわ」
―夕子、泣いてばかりいるんだな。泣きすぎは毒だ。
「自然に泣けるんだもの。でも人前で泣いたりしないわ」
―愛おしい気持ちは苦しいだけじゃないだろう? 俺は甘く胸が締めつけられるんだ。
「その気持ちはどんな色なのかしらね?」
―そうだな、どうだろう、甘い色だ、甘い柘榴のような色かな? お前を想うと、俺は胸いっぱいに温かさが広がる。海を見ているとお前の涼やかな瞳を思い出す。俺は自然に微笑みたくなる。暗闇を見ればお前の黒髪を思い出して腕の中にお前を抱く夢を見る。甘い気持ちだ。
「愛してるわ、元気……」
―ああ、愛しているって言葉以外にどうこの気持ちをお前に伝えてやれるのかなっていつも思うよ。
「言葉なんていらない。私は貴方の腕の中にいられたらそれでいいのよ」
―ああ、お前を抱きしめてやりたい。抱きしめてやりたいよ、強く、強くな。
「元気、逢いたい、逢いたい……」
―泣くな、夕子。逢えるよ。きっと、逢える。夕子、また逢おう、必ずな。来世で必ず逢おう。
夕子は空の星を見上げて呟いた。
「元気、待っていてね。きっと来世で、私、貴方を見つけるわ」
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