死神は余命「?日」の私に嘘をつく

猫NEKO

第一話  ~プロローグ~

 古くから死神は、人々から恐れられてきた。人間には、病死びょうし事故死じこし老衰ろうすい自殺じさつ他殺たさつなど様々な死因が存在する。そしてどんな死因しいんであろうと、この世界には必ず ’’死神しにがみ‘‘ という存在が関わっている。

 それはなぜか。死神には人の命の終わりがわかる。いや、正確には近い人のところに現れては、命がきそうな人を死にみちびく。そして、死んだその人の魂を奪う。ただ、あくまで導くだけであり、その人自身が何らかの理由で死を回避かいひすることもあるため、必ず死ぬというわけではない。


 そんな死神は今、余命よめい「?」の少女と公園こうえんのベンチで一緒に座っている。周りには親子連れや元気に公園で遊ぶ子供たちがいる。

ふざけた光景こうけいだ。死神と余命が「?」のわけわかんない少女が、今公園にいるなんて公園にいるだれもが思ってないだろう。何なら世界中の誰もが思っていない光景だ。


「ねぇ、死神。死神は人からたましいうばったらそれをどうするの?」

「…それは言えない。」


 それを聞いた少女は、きょとんっとした顔になって


「なんで?……まさか⁉奪った魂で人に言えないようなことを……」

「ふざけるな。お前と違って俺がそんなことをするわけないだろう。」

わたしだってそんなことしないよ!そもそも私、魂なんて奪えないんだし。なんなら奪われる側だし…。じゃあ何で教えてくれないの?お願い!ほんのちょっとでいいから。」


少女はたのみ込むように死神にお願いした。まぁ、少女は死んで魂をとられたあと自分がどうなるか知りたいだけだろう。ただの興味本位きょうみほんいだ。

しかし、そのおねがいを死神はあっさりと拒否した。これだけは、生きている人に知られるわけにいかないからだ。


「無理だ。」

「なんでよー。減るもんじゃないし、ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃん。ケチ。ケチ死神。」

「なんとでも言え。そんなに知りたければ、一回死んでみるのもアリなんじゃないか。」

「それじゃあ、結局けっきょくわかんないじゃん。」


少女は笑いながら答えた。そして、少し悲しい表情ひょうじょうで死神に言った。


「……でも、もし私が死んだらその時は…」


さっきまで笑っていた少女が少し言葉に詰まる。少女の顔を見ると表情はさっきよりも悲しげになっている。



「……私の魂は君が奪ってよ。」



これは、余命「?」日の少女とその少女を死へ導こうとする一人の死神の物語ものがたりである。

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