碧山相伴

故水小辰

合縁奇縁

 俺があいつと出会ったのは、十四のときに参加した武術大会でのことだ。父も母も剣客である俺の家には、無名ながらも代々受け継がれてきた剣譜があった。もっとも、無名ということは大した威力を持ち合わせていない役立たずにも等しい剣法ということだ。だが俺は、その火力不足の剣法で並み居る名門流派の子弟たちをことごとく打ち負かした。そして、驚愕と興味の入り混じった興奮の中、迎えた決勝戦で当たったのがこいつだった。

 まず目についたのは、やつの目を囲う不思議な飾りだった。そしてその奥で光る瞳——あれほどまでに美しく、清らかな瞳を俺は見たことがない。開始の合図の太鼓が鳴り、剣を構えて出方を伺う間、向こうの攻撃をいなして反撃に出る間、知りうる手を駆使して命を賭して駆け引きをする間、俺は心のどこかで、その瞳が俺だけを捉えていることを幸せに思っていた。こいつともっと剣を交わしたい。こいつを俺だけに集中させたい。その一心で剣を振るう俺に、あいつはついに隙を突かれた——鋭い金属音とともに長剣が飛び、俺は尻もちをついたあいつの首、喉仏すれすれに切っ先を突きつけた。驚きに目を見開いたあいつは、俺をまっすぐ見つめていた。観衆のさざ波のようなどよめきが割れんばかりの賞賛になり、審判が俺たちを引き離すまで、俺たちは上がった息を整えながらじっと見つめ合っていた。そしてこの試合こそが、俺たちを結びつける第一歩となったのだ。

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