第91話 洗い出す
文字数が少ないです。
上手く書けなくてかなり駄文です。
ご容赦下さい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「え?」
「嘘……でしょ」
「そんな」
国王の言葉にクラスメイト達に動揺が広がる。
何かの冗談だと思いたくて、国王の顔を見るが国王の表情は酷く暗く苦し気に歪んでいた。
その表情を見て、嘘ではない本当なのだと理解した。
『…………』
執務室が沈黙に包まれる。
皆突然の知らせに頭で理解は出来ても心が追いつかないのだ。
『ッ!?』
しかし、皆次の瞬間突如発生した踏み潰されるかの如きプレッシャーに襲われた。
執務室に居る全員が、恐怖に震える身体のままプレッシャーの発生源へと目を向ける。
「おい、国王」
だが、見られている本人はそんな視線を無視して国王へと冷たく感情を感じない声色で話し掛ける。
「何だろうか、アカリ殿」
話し掛けられた国王は、アカリへと言葉を返す。
「その情報、決して嘘や冗談、勘違いじゃないんだな?」
アカリの言葉に国王は、ギルドから届いた報告書を手に取って見せながらアカリ達に目を向けて自身の考えを話した。
「確証は出来ん。先程、ギルドから届いたばかりのモノなのだ。しかし、報告書に記されている馬車の残骸から王家所有の馬車を示す紋章と思われるモノが見つかったらしいのだ。見付かった残骸は真新しい。そして、最近で王家の馬車でヘリウス方面へと向かわせたのは宮本殿を乗せた馬車のみ。確証は出来んが、まず間違いないと思う」
「そう、分かった」
短い返答。
ただ、その一言を国王へと返した。
「あ、アカリさん?」
そして、それを間近で見ていた天之は少し疑問を抱いた。
「ん?何?」
「意外と、冷静だね?」
声から冷たさしか感じない。
声のトーンが、普段の何段階も低い。
とんでもない威圧感が放たれている。
それらの事から、アカリさんが激怒しているのは分かる。
しかし、アカリさんなら宮本さんが行方不明になった等と知らせがあれば即座に何かしら捜索の行動を起こすと思っていた。
窓を破壊してでも即座に単身捜索へ。
国王を問い詰めて更に情報を吐き出させる。
いつものアカリさんなら、そうすると思っていた。
だが、今のアカリさんは激怒してはいるが即座に行動に移ろうとはせず思いの外冷静であり少し意外だったのだ。
「冷静?私が?本当に冷静だと思う?」
「」
あ、うん。
全然違ったは、俺の勘違いだった。
目の色は美しい赤のはずなのに底無しの闇みたいな暗さをしてるし、ハイライトは消えてる。
何より、薄く微笑んでるけど狂気的な何かを微笑みから感じる。
全然冷静じゃない。
強引に感情を内側に抑え込んでるだけだはこれ。
例えるなら、いつ爆発してもおかしくない爆弾。
今のアカリは、まさにそんな精神状態だった。
それを察した天之は、自分だってクラスメイトの一人が行方不明になり気持ちの整理が出来ていないが、先に何とかアカリを落ち着かせる事にした。
「アカリさん、落ち着いて、深呼吸だ」
「は?」
正直に言おう。
目茶苦茶怖い。
まるで、闇堕ちした主人公。
アカリの場合は、闇堕ちしたヒロインだろうか?
そんな、暗い狂気を感じるし氷の様な冷めた瞳で見られるのは恐怖でしかない。
しかも、相手はその気になれば一瞬で自身を殺せる。
アカリが、そんな事をしないと頭で理解していても冷めた瞳と威圧感で意思とは関係無く身体が恐怖で震えてしまう。
だが、それでも何とかアカリを落ち着かせなければならない。
天之は、心を奮い立たせて言葉を続ける。
「せめて、その威圧だけでも止めてくれ。アカリさんにその気が無くても、皆恐怖でまともに話せない。頼むから」
何とか言いきれた。
後は、アカリが激怒している中でキチンと今の言葉を理解してくれているかどうか。
だが、先程一応会話は成立していた。
なので、多分問題はないはずだ。
天之は、「頼む落ち着いてくれ」と内心祈りながらアカリの様子を伺う。
すると、次の瞬間アカリが目を閉じて数度深く深呼吸をした。
「スゥーーーフゥーーースゥーーーフゥーーースゥーーーフゥーーー…………良し。ごめんもう大丈夫。幾らか落ち着いたから」
「良かった」
まだ、目にも声にも温度は戻っていない。
だが、何とか願い通り威圧感は消してくれた。
お陰で、先に比べて何倍も執務室内の居心地は良くなった。
これなら、話し合いもやり易くなる。
「とりあえず、先ずは情報を整理しよう」
「そうだね。まず、瀬莉はヘリウスへと素材を採取しに行った。これは間違いないんだよね?」
「あぁ、本人から聞いたからな」
アカリの質問に頷いて答える。
あの本物の純金を見せられた衝撃の日なのだ。
会話の内容もハッキリと思い出せる。
「国王様、採取には護衛の騎士は何人だったんですか?」
「4人の騎士が護衛についていた。皆確かな実力者だった。そこらの魔物や盗賊と遭遇した所で負ける等とはとても考えられん」
俺の質問に国王は、ハッキリと答えてくれた。
実力のある騎士を四名。
国王の言う通り、そこらの魔物の群れや盗賊と遭遇しても日々訓練を積み実戦で鍛えてきた騎士が負けるとは思えない。
そう思っているとアカリさんが、国王に話し掛けた。
「国王、その大破してた馬車はただ破壊されてただけ?それとも、燃やされてたとか?」
「燃やされてはいなかった。だが、原型が分からない程に破壊されていたらしい。馬車と分かったのも破壊された物の中に車輪と王家の紋章らしきモノの残骸があったからだ。それが無ければ、分からなかっただろう。ただ、原因が不明なのだ。馬車は大破して判別不能、発見場所にも戦闘の痕跡は無し、周辺もそれらしき痕跡はなし。魔物による襲撃なのか。盗賊の襲撃なのか。単なる事故なのか。分からないのだ」
「ハァ~~マジか」
それを聞いて頭を押さえてため息を吐いたアカリさんは、数秒の間を置くと今度は俺に質問してきた。
「ねぇ、天之」
「ん?何?」
「瀬莉が、採取に行く前辺りに何か変な事はなかった?」
俺は、変な事と言われても曖昧すぎて上手く答えられず黙ってしまう。
それを見てアカリさんは、より詳しく質問をしてくれた。
「何か変な奴に絡まれてた。貴族連中に実験物を渡してた。もしくは、何か変な物を作り上げたとか。天之じゃなくても、瀬莉と一緒に生産をしてた他の皆でも良い。何か思い出せない?」
俺は、記憶を辿ってアカリさんの言ってた様な事がなかったか思い出す。
「う~~ん」
「変な事、変な事……」
「貴族か……」
生産グループの皆も記憶を辿っているが、それらしき出来事は記憶にないのだろう。
皆の口から有力な情報は出てこなかった。
俺も、唯一あるとしても純金の塊を造ってた位。
「宮本さんが純金の塊を造ってた位だな」
「ッ!?それ、他に知ってる奴は!!」
純金は確かにカネになるだろうが、宮本さんは趣味で暇潰し程度に造っていただけ。
知ってる人も生産グループの皆と直接見た俺。
それと、新たに今目の前で話を聞いてる国王位のはず。
その事をアカリさんに話す。
「他には居ないはずだし。だったよな?」
俺は、生産グループの皆に問い掛ける。
皆も俺の問いに記憶を辿り話した記憶がないようで全員頷いて返してきた。
「そっか。なら、違うか」
「あぁ、多分純金は関係な……あ」
「ん?どうした?」
俺は、すっかり忘れていた。
急いで、記憶を辿って思い出す。
「一つだけあった。純金を見せてもらった時に。その時は気のせいって思ってすっかり忘れてたけど、あの時に何か視線を感じたんだよ。それを感じて直ぐに部屋の外を確かめたけど、誰も居なかったんだ」
あの時は、ダンジョン遠征から帰ったばかりな事もあり直ぐに疲れによる気のせいと判断していた。
しかし、もしあの時に感じた視線が本当に誰かの視線だったなら話は変わってくる。
「純金を見たのは何日前?」
アカリさんの質問に俺は答える。
「二週間前だ」
俺の返答を聞いたアカリさんは、そのまま国王へと問い掛けた。
「二週間前にこの城に悪い噂や身辺に問題を抱えている者は来なかった?」
アカリさんの問い掛けに国王は、目を閉じて二週間前の城への来訪者を思い出す。
数秒後、思い出したのだろう。
国王は、目を開けると表情を歪めて俺達へと顔を向けた。
「居たぞ。丁度二週間前に一人。不作で支援を求めてきた者が」
「名前は?」
「スモルス=ドワルフ。小さいが領地を持つ男爵位の貴族だ。不作が続いて支援を求めてきた。そして、ヘリウスは奴の領地の町の近くにある」
「そうか。それで、ヘリウスはどの方角にある?」
国王は、アカリさんの質問に椅子から立ち上がると部屋の棚から一つの大きな用紙を取り出し机に広げた。
それは、この大陸の地図だった。
「ここが、我がアストレア王国の王都。そして、王都から下がり、ここがアカリ殿が活動していたオーレストだ。スモルスの男爵領は、その中間辺りのここだ。方角だと、この方角だな」
国王は、地図で示しながら男爵領のある方角に指差してアカリさんに教えた。
「うん。ありがと」
アカリさんは、一言国王に感謝すると収納から紙とペンを取り出して何かを書くと書き終えた紙を俺に渡してきた。
「天之、これをクロードって騎士に渡して皆で相談してやる事」
「これは、訓練のメニュー?」
渡されたのは、数日分の訓練の内容だった。
「それと国王もこれ」
アカリさんは再び何かを紙に書くと今度は、国王にそれを手渡した。
内容が気になるが、残念ながらここからは見えない位置にある為内容は見えない。
「これは……本気か!?」
「うん。指示しといて」
しかし、反応を見るに驚く様な内容が書かれているのだろう。
それだけは分かった。
そして、別でもう一つ分かった事がある。
「アカリさん、行くのか?」
「うん。有力な情報が出たなら、出来るだけ早い方が良いからね。今回に限っては特に行動の早さが直で命に繋がる」
アカリさんは、今すぐ一人で宮本さんの捜索へと向かうつもりだ。
幾ら何でも、一人では危険過ぎる。
もし本当に男爵が黒幕なら、騎士を負かした様に何かしら防衛手段を用意しているはずだ。
「一人では危ないぞ!せめて、誰か同行を」
「そうよ!せめて、騎士の人達に手伝ってもらいましょう!」
「そうだ!いくら何でも危ないって!」
しかし、俺達の提案をアカリさんは……
「邪魔だから良い。寧ろ助けが遅くなる」
提案を一蹴。
アカリさんは、それだけ言うと踵を返して執務室から出ていこうとする。
俺も他の皆も何とか止めようと声を掛け続けるが、アカリさんが歩みを止める事はなかった。
「アカリ殿、本当に行くのか?勘違いだった場合、大きな問題となるぞ」
扉に手を掛けたアカリさんに国王が最後の忠告を告げる。
「かもね。まぁ、どうにかするよ。それじゃあ国王、勇者達と冒険者を任せたよ?」
「あぁ、了解した。彼らの事は任せると良い」
国王の言葉を聞いたのを最後にアカリさんは、俺達とフェリエさんを残して執務室を出ていった。
※※※※※
私は執務室を出た後、城の外を目指して歩いていた。
あぁ、本当に何なんだろうね。
何でこう面倒事ばかり起きるんだろ。
前の屑冒険者共もそう。
糞魔王の問題だってそうだ。
私は、大切な人達と平穏に過ごしたいだけなのに。
皆は、元の世界に戻りたいだけなのに。
なのに、なのに、なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのにッ!!!!!!!
邪魔ばかりしやがってッ!!!!!!
魔物の襲撃か糞貴族の差し金か知らないけど、私の大切な親友に手を出したんだ。
絶対にブッ殺シテヤル!!!
「外か」
気付けば、城の外まで出ていた。
私は、国王に教えてもらった地図の内容からヘリウスの大体の方角を思い出す。
え~と、城門城門っと。
あった、この方角か。
国王が、指差した方角は丁度窓があった為外の景色が見えていた。
その時に指差す先に、この王都へと入る城壁の城門が見えていたのだ。
正直、目印となる建造物があって助かった。
「さてと、行くか……ん?」
向かおうとした瞬間、何か後ろから音が聞こえて振り返る。
すると、こちらに走ってくるクラスメイト達とフェリの姿が見えた。
「アカリさん!」
「アカリ!」
「アカリ様!」
止めに来たのだろうか。
「何?」
「本当に行くんだな?」
「行くけど?まだ、止めろって言う気?」
私は、少し語気を強めて天之に聞き返した。
もし、まだ止めようとするなら無視してでも出よう。
そう内心思ったが、返ってきたのは思っていた事とは違う言葉だった。
「いや、もう止めない。アカリさんが、あそこまでハッキリ邪魔だと断言したんだ。本当に問題ないんだろ。俺達は、その言葉を信じるよ」
「そう」
決して全く思う所がない訳ではないのだろう。
しかし、皆天之の言葉通り私を止めるのは止めた様で送り出す事に決めたようだ。
「フェリは、どうしたの?」
「私も連れていって下さい!」
私は、フェリへと話を聞くとフェリは自分も連れていって欲しいと願ってきた。
まさか、そんな事を言ってくるとは思わず内心少し驚いた。
「ダメ」
「何でですか!アカリ様のお陰で前より強くなれました。だから、少しでも役に立ちたいんです」
「フェリは、私に助けられた事もあって早く役に立ちたいって思ってる?」
「はい。命を助けられたんですよ?こんな時に役に立ちたいって思うのは当然じゃないですか」
本当にフェリは、よく出来た眷属だよ。
主として眷属の思いを尊重してあげたい。
しかし、それでも現実はそんな簡単に物事を決められるものではない。
「ごめんね。それでもダメ」
「そんな」
フェリの表情に悲しみが浮かぶ。
そんな表情はして欲しくない。
しかし、今回ばかりはどうしようもないのだ。
「本当にごめんね。今回は、ほぼ確実に人間によるものだと思うんだ。そうなると、手練れの騎士を対処可能な者達が相手になる。そうなると、まだ実戦経験が少なくレベルの低いフェリを連れて行くのは心配なんだ。フェリを信じてあげられなくてごめんね」
私は、せめてもの慰めにフェリの頭を抱き寄せて頭を撫でる。
「いえ、アカリ様は私の心配をして下さってるんですから謝らないで下さい。弱い私が悪いんです。ですが、直ぐに強くなって必ず役に立ちますから」
「うん。その時はお願いね」
フェリを離して私は、皆から少し離れる。
「それじゃあ、行ってくるから」
風属性魔法を発動し風を纏い空中へと浮かび上がる。
「アカリ様気を付けて!」
「アカリさん!宮本さんを頼む!」
「アカリ!瀬莉をお願い!」
「生きて帰って来いよ!」
下から皆の声が聞こえてくる。
その声に私は、片手を振って答えるとヘリウスの方角へ向けて飛び立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます