第61話 ダンジョン探索(3)

 ※投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。


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『ゴゴゴゴ』


「ん?……あ」


 何か背後から重い音が聞こえ振り返る。

 すると、目に入ったのは入り口が壁と一体化して消えていく光景。

 つまるところ、現在私は閉じ込められたと言うこと。


 あれか、ボスを倒さないと出られない。

 もしくは、私が死なない限り第十層も解放されないっていうテンプレパターンですか。

 マジか、でも第三十層のマジもんのボスモンスターじゃないし何とかなるか?

 にしても…………


 粒子が、どんどん集まり大きくなる。

 先程まで私と同じ位しかなかったのに今では、2m、3mと大きくなり気付けば、5mもの大きさにまで巨大化していた。


 いやデカ!?

 第十層とはいえ、やっぱりボスモンスターなだけあるって事なのかな?

 何が出てくるんだろ。


 形作られていく粒子を見ながら何が現れるのかとワクワクドキドキする。

 そして、遂に段々と地面、粒子の光が小さくなりそいつは、私にその姿を見せた。


 コイツは……


 私は、目の前に現れた魔物を見上げる。

 そこに居るのは、2本の足で立つ黒い魔物。

 以前見たサイクロプスやオーガと似て全身筋肉質の身体をしている。

 腕や脚が筋肉で丸太の様な太さをしていて恐ろしい筋力を誇るであろうと予想させた。。

 中でも、特に私の目を引き付けたのは特徴的な足の大きな蹄。

 そして、鋭い角の生えた牛の様な顔。

 ここまで見れば、私は魔物の正体に思い当たる。


「ミノタウロス」


 私の目の前に現れた魔物。

 それは、前世でもゲームや漫画等でよく見たミノタウロスだった。

 私は、戦闘前に情報を得ようと鑑定を発動しようとする。


 しかし


「ブモオオォォォ!!」

「グウゥ!?」


 あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"~~!!?

 うっせええぇぇぇぇぇ~~!!


 ミノタウロスの巨大な咆哮に耳を押さえる。

 今までも、何度も魔物の巨大な咆哮は聞いてきた。

 しかし、外でならともかく今回は間近+洞窟内という状況。

 それにより、音が消える事なく内部で反響する事で響き私の耳が死にかけた。

 そして、それにより一時的に気が逸れてしまいミノタウロスに先手を許してしまった。


「ブルゥラアァァ!!」


 ミノタウロスは、再び咆哮をあげ私に接近し右腕を振り上げる。

 その腕には、粒子から形作られる際に同じく作られていた金属で出来てる様に見える長さ3mはある巨大な棍棒。

 所謂、金棒が握られていた。

 それを、私目掛けて振り下ろしてきた。


「くっ!?」


 耳が痛み顔をしかめる中見えた金棒。

 私は、流石にあんなものを喰らってはマズイと何とかバックステップで距離を取る。

 その直後、先程まで私が立っていた場所に金棒が振り下ろされた。


「ひぇ」


 直後聞こえた岩が粉砕された破砕音。

 その発生源を見れば金棒が地面を粉々に砕き地面が大きくひび割れている光景。

 避け損ねていたら自分がどうなっていたのか脳裏を過り思わず声が引きつった。


 やっべ~~。

 なんつう破壊力だよ。

 今まで何度か怪力な魔物を見てきたけど群を抜いて破壊力抜群じゃんか。

 喰らったら一発で大ダメージ確定だね。


 私は、更に後方へと離れ距離を取り体制を立て直しミノタウロスを観察するが………


「ブモオオォォォ!!」


 離れても即駆けて距離を詰めてくる。

 見掛けによらず俊敏性が高いのかスピードが速い。

 それにより、ろくに観察が出来ない為に対策が取れない。


「はぁ!?何でその体躯で速いんだよ!牛だから?牛だからなのか!?」


 予想外に素早い動きに私は、驚き困惑する。

 しかし、相手にとってそんな私の内心など関係無い。

 ミノタウロスは、今も金棒を薙ぎ払い、振り下ろし、斜め下からの振り上げ等と私を攻撃し続けていた。


 ヒッ、ヒ~~~ッ!!?

 今ビュンって!!

 ビュンって顔の真横スレスレ通ってった~~!!?


 何度か命の危険が伴う戦闘をしてきた私だが、巨大な金属の塊が間近をスレスレに高速で振り抜かれる事にかなり内心ビビり散らかす。

 ひたすら避け続け反撃の機会を伺うが攻撃の手は止む様子は無く反撃に中々出れない。


 どうしよ。

 全然攻撃が止まらない。

 どうにか、少しでも意識が逸れたりしたら反撃に移れるんだけど。

 あ、そうだ。


 私は、丁度良い手があったと金棒を避ける事をせずにミノタウロスに向けて突っ込む。

 そして、私を薙ぎ払おうと振り抜かれた金棒は私を捉えた…………かに思われたが、私は何事もなくその場に居た。


「ブモアァ!?」


 ミノタウロスが、金棒で確かに捉えていた筈の相手が何事もなく無傷で立っている事に驚き困惑する。

 だが、何かの間違いと思ったのか再びアカリに向けて金棒を振り降ろし攻撃する。


「ブルアア!!」


 確かにそこに居て、振り下ろした金棒はアカリを捉えていた筈だった。

 しかし、振り下ろした後にはそこには居らず。


「残念、こっちだよ」


 気付けば、ミノタウロスの背後に回り込んでいた。


「ブモオオォォ!!」

「ぐあ"ぁ"ぁ"!!ボリューム下げろよ糞牛があ"!!」


 ミノタウロスが、咆哮をあげて自身の背後に回り込んだアカリに向けて金棒を薙ぎ払おうとする。

 しかし、アカリは耳の痛みに顔をしかめながらもミノタウロスの攻撃よりも早く大剣を取り出し魔力を込めながら一回転。

 勢いを乗せた大剣を振り抜きミノタウロスの右足を斬り付ける。


「チッ!」


 しかし、防御力が相当高いのか斬り裂いたものの決定的なダメージにはならず攻撃直後を金棒で薙ぎ払われた……が。


「…あっぶな」

「ブモオォ!?」


 そこには、再び無傷の私が立っていた。


 マジで危ねぇ。

 ちょっと間に合わないかと思ったよ。

 間に合って良かったぁ霧化。


 はい、振り下ろし、薙ぎ払いが当たっても無事だった理由はこれ。

 全く使用しないから完全に忘れてたこのスキル。

 霧化のおかげです。


 うん。

 本当にマジでザクト戦以降全く使用してなかったせいで忘れてた。

 きちんと覚えていたらスライムの時も霧化して即解決。

 あんな恥ずかしくも悲しい目に遭わずにすんだ筈なのに。

 後になって思い出して自分のポンコツ具合に膝から崩れ落ちたよ。

 って今は、私のポンコツ具合はどうでも良いよ。

 目の前の相手に集中しないと。


 私は、大剣を収納に仕舞うとミノタウロスが困惑している隙に後退し距離を取る。


 さてと、まずは今の内に鑑定と。


 私は、情報を得る為に今度こそ鑑定を行う。


 ────

 名前:なし

 種族:ミノタウロス

 状態:通常

 LV:1/30

 HP:465/481

 MP:61/61

 筋力:528

 耐久:485

 敏捷:389

 魔法:49

 ─スキル─

【豪腕Lv1】【金剛Lv1】【棒術Lv1】【俊足Lv1】

【物理耐性Lv1】

 ─称号─

 なし

 ────


「Oh~~」


 スキルLvやレベルが1なのは、生み出されたばかりだからと納得できる。

 そして、何となく予想通り。

 筋力、耐久が高くスキルまでそれらを向上させる効果のモノで固められていた。


 普通に強いなぁ。

 けど、桁違いに強い訳でもないし。

 うん。

 何とかなるかな。


 私は、ささっと頭の中で適当に立ち回りを組み立てるとミノタウロス攻略に動き出す。

 それと同時に、ミノタウロスも再び私に向かって動き出した。

 ミノタウロスが、自分に向かって来るのは予測済み。

 なので、私は離れる事なく突き進む。


 そして


「ブルアア!!」

「よ」


 ミノタウロスの振り下ろし。

 それを、再び霧化する事で軽く回避。

 そして、霧化解除と同時に次の攻撃が来る前に1つの魔法を放つ。


「炎矢」


 放ったのは、炎の矢。

 それを、ミノタウロスの顔。

 より詳しく言えば目を狙って放った。

 炎矢狙いは、目に当てる事で眼球の破壊。

 出来なくても、熱で一時的に顔を庇って死角を作るのが目的だ。


「ブモアァァ!」


 狙いは上手くいき眼球には当てれなかったが、顔に当たった事で炎の熱に金棒を持っていない左腕で顔を押さえた事で視界を自ら遮った。


「良し!」


 私は、その隙を逃さず跳躍。

 空中で収納から大鎚を取り出し魔力を込める。

 そして、ミノタウロスの頭部目掛けて力一杯の振り下ろしをぶち込もうとした。


「ブル"ア"ア"ァ"ァ"!!」

「クソ!!」


 しかし、すんでで身体を逸らされた為に頭部には当てられず左肩を破壊する結果に。


「ブモア"ア"ァ"!」

「っ!」


 地面に降りた瞬間を狙われて金棒を振り下ろされる。

 それを見た私は、霧化をして咄嗟に振り下ろし避ける事が出来た。


「ブルアア!!」

「!?ハアァァ!!」


 しかし、避けた直後に再び薙ぎ払いで狙われ霧化の再発動のタイムラグにより霧化が間に合わないと悟り身体強化と大鎚に魔力を込め全力でフルスイング。

 金棒に大鎚ぶち当てた。

 ガギィ"ィ"ン"!!と金属同士が衝突する嫌な音が空間中に響き渡る。


「ぐう"ぅ"ぅ"。鎌鼬!」


 どうにか、金棒の攻撃を強引に阻止する事に成功した私は、鎌鼬をミノタウロスの右腕目掛けて放つ。


「ブモ"ア"ア"ァ"ァ"ァ"!!」


 狙い通り右腕に当てる事が出来、右腕が斬り裂けた事でミノタウロスは右腕に上手く力が入れられないのか金棒を地面に落とした。


「あ"ぁ"~耳が。……炎矢」

「ブモア"ア"ァ"!!」


 私は、耳鳴りを我慢しながら腕が使えずとも暴れ続け様とするミノタウロスにトドメを刺べく再び眼球目掛けて炎矢を放ち今度は、狙い通り眼球を破壊出来た。


「ハアァァ!!」


 跳躍し大鎚を大きく振りかぶりミノタウロス目掛けて振り下ろす。

 今度は、避けられる事なく当たり、瞬間頭部が砕け潰れるグチャッ!とした感触が伝わり致命傷を与えた事を確信する。


「ブ、モア…ァァ」


 頭部を破壊されたミノタウロスは、弱々しい声と共に身体から力が抜けていき地面に倒れ伏す。


「よっと。……………動かないね」


 倒れたミノタウロスが完全に動かないのを確かめ確実に倒せたと確信した私は、その場に座り込んだ。


「ハァ~~倒せたぁ。そんな苦戦した訳じゃないけど疲れたぁ。てか耳が痛てぇ。…………んぁ?」


 座り込んだ私は、視界の先に何か見えた気がしてそちらを向く。

 すると、そこにはミノタウロスが現れた時と同じ光の粒子が小さく集まっているのが見えた。


 え、もしかして何かまた出てくるの?

 せめて、少し休憩させて欲しいんだけど。

 ん?

 魔物じゃない?

 何か、魔物にしては小さい様な?


 アカリが、疑問を浮かべる間も粒子は集まり続け何かを形作っていく。

 そして、終わったのか光が消えて先程まで無かった何かが地面に置かれていた。


「え、何これ?…………首輪と鍵?それに、鉱石の欠片?」


 そこにあったのは、金属で出来た首輪と鍵、良くわからない鉱石の欠片だった。


「もしかして、これがボス攻略達成のアイテム?え、首輪と鍵と変な鉱石の欠片が?マジで?」


 今の状況的に達成報酬的なアイテムとしか考えられず私は、まさか首輪と鍵、変な鉱石の欠片という意味のわからないアイテムに少し落ち込む。

 しかし、せっかく手に入ったアイテムなのでどんな物なのか調べてみる。


「まずは、首輪から鑑定」


 ────

 名前:真実の首輪

 詳細:尋問用の魔道具。

 装着者が偽りの行動を取る度に首輪が縮小する効果を持つ。

 首輪を解除するには、専用の鍵が必要。

 ────


「うっわ~~何とも言えないのが来たわ。こんなん使う時くるか?まぁ、いいや。となるとこの鍵が解除用の専用の鍵?鑑定」


 ────

 名前:なし

 詳細:尋問用の魔道具である『真実の首輪』の解除用の専用の鍵。

 ────


 予想通り解除用の鍵であっていた。

 つまり、この首輪と鍵は2つでセットの魔道具という事なのだろう。


「とりあえず、無くさない様に収納に仕舞っとこ。次は、この欠片か。鑑定」


 ────

 名前:攻略の証 (不完全)

 詳細:ダンジョンを攻略した証の欠片。

 残り2つの欠片と合わせる事で完全な攻略の証となる。

 ────


「これ、攻略した証だったの?てか、残り2つって絶対に第二十層と第三十層じゃんか」


 私は、欠片がまさかの攻略の証と知り少し驚くと同時にやはり第二十層と第三十層でもボスモンスターの戦闘があるとわかった。


 ん~~こういうアイテムGETすると完成させたくなるのがオタクなんだよなぁ。

 だけど、そうなるとダンジョン完全攻略しないといけないって事だし。

 今の私にいけるか?

 無理だよなぁ。


 どうせなら、完成させたいと思ったが無理としか思えず諦めるしかないかと思った。


「そういや、レベルどれくらい上がってるかな」


 ────

 名前:アカリ

 種族:紅血鬼

 状態:通常

 LV:23/40

 HP:529/529

 MP:507/564

 筋力:537

 耐久:405

 敏捷:578

 魔法:519

 ─スキル─

【鑑定】【収納】【言語理解】【血液支配Lv5】       【吸血】【眷属化Lv3】【索敵Lv7】

【偽装魔法】【火属性魔法Lv5】【水属性魔法Lv5】                     

【風属性魔法Lv6】【土属性魔法Lv5】【再生Lv4】

【日射耐性Lv6】【状態異常耐性Lv7】

【痛覚耐性Lv4】【霧化】【魔力制御Lv4】

 ─称号─

【女神アリシアの加護】【女神アリシアのお詫び】

【Bランク冒険者】

 ────


「おぉ~~強くなってる。これなら、探索続けてレベル上げればワンチャンいけるかな?ん~~まぁ、いける所までいってから考えるか。どうせ、街に戻らないし」


 ん?

 街に戻らないってどういう事かって?

 言葉通り戻らないだけ。

 だって、いちいち第一層から来るのメンドイし下層まで行くなら泊まり掛けの方が効率良いからね。

 一応1週間分位は食糧や着替えもあるし何とかなるでしょ…………多分。


 という訳でアカリは、元々今日から泊まり掛けでダンジョンに潜るつもりだった。

 その為、少なくとも今日はダンジョンから帰るつもりは無い。


「とりあえず、目標は第三十層に決定かなぁ。しばらく休んで次に行くか」


 その後、休憩を終えたアカリは、岩壁から開いた第十一層へと続く道を進んで行くのだった。

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