第59話 ダンジョン探索(1)

 ※投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。


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「意外と明るいんだね。あれは、石?」


 てっきり、洞窟という事もあり暗闇が広がっていると私は思っていた。

 しかし、そんな事はなく洞窟の左右の壁に均等な間隔でどんな原理か知らないが光を放つ15、20cm位の石が取り付けられており思いの外ダンジョン内は明るかった。


「てか広いなぁ」


 全30階層の大規模なダンジョン。

 5、6m近くある高さの洞窟の入り口からして中も相当な広さだろうと思っていた。

 しかし、実際は私の予想以上に大きく横幅だけで10m近く、高さは20、30m近くはあり驚いた。


「こりゃあ、見て回るの苦労しそうだなぁ。まぁ、それもダンジョン探索の醍醐味か。とりあえず、何があるのかわからないし索敵程は常時発動させとくか」


 初めてのダンジョン。

 資料等を見て得た事前情報が多少あるとはいえ、何が起こるのかその時までわからない。

 その為、実際に自分の目で見てどの様なダンジョンなのかある程度わかるまでこのまま警戒しておこう。

 ………と思っていたんだけど。


「全然出てこない」


 突然の襲撃に備えて警戒しながら探索しているものの

 かれこれ体感15、20分近く人っ子ひとり、魔物一匹とも遭遇せずにただ時間が過ぎていく。


「流石に、利用する冒険者全員が通るんだから、一階層の魔物は狩り尽くされてるか。さっさと、次に進んだ方が良さそうかなぁ」



 このまま第一階層の探索をしても意味が無さそうと判断し私は、辺りの警戒はそのままで歩くスピードを早め進んで行く。

 そして、5分位だろうか。

 進んだ先に明らかに周りとは異なるモノが見え私は、早足にそれに駆け寄る。


「あ、階段……じゃないか、道?」


 それは、第二層へと繋がる道だった。


「結局、何もなかったし第二層へ行きますか」


 私は、次こそは何かあると良いなとワクワクしながら第二層へと繋がる道へと足を進めた。


 ※※※※※


 太陽が沈み始め辺りが暗くなってきた頃。

 私は、宿屋に帰ってきた。


「……ただいまです」

「お帰りなさい。って」


 受付のお姉さんが、帰ってきた私に気付いて出迎えてくれる。

 が。


「え、どうしたんですか。何かあったんですか。そんな、ドンヨリした顔をして」


 出掛けた時と違い明らかに落ち込んでいる私に、どうしたのかと困惑の声をあげた。


 ハハハ……『何かあったんですか』か。

 うん。

 確かに、何かはあったね。

 "何も無い"っていう何かは。


「ちょっと、期待を裏切られただけです。あの、先にお風呂に入るんで、ご飯はその後に運んで貰えますか?」

「えっと、わかりました。あがられたら、お声を掛けて下さい」


 私は、お姉さんの声を背にお風呂場へと向かった。


「ふぁ~~良いお湯。………………あぁ~~」


 思い出すのは、先程まで居たダンジョンでの事。

 ダンジョンの感想を述べるとするならば、私のワクワクを返せだろうか。

 私は、あれから第五層まで進んだ。

 そして、全五階層で私が魔物と遭遇する事は一度も無かった。

 おかしいと思わない?

 一度も遭遇しなかったんだよ?

 せいぜい遭遇するとしても、私と違い遭遇出来て戦闘している冒険者や帰る道中の冒険者と遭遇した位。

 ようするに、私はただ今日の午後の半日を第五層まで歩いて帰ってきただけ。

 完全な無駄足。

 時間をただ無意味に浪費しただけに終わった半日だった。


「……あがろ」


 湯船からあがり髪の毛、身体の水分を拭き取りさっさと服を着て風魔法で髪を乾かした私は、受付のお姉さんに食事のお願いをすると部屋へと入りベッドにダイブした。


「ハァ~~、何だかなぁ」


 本当なら、今日は多くの魔物と戦闘できるものだと思っていた。

 しかし、現実は非情。

 何も出来ずにこうして宿屋に帰ってきて不貞腐れてベッドに埋もれている。


「すみませ~ん。ご飯お持ちしました」

「ありがとうございます」

「いえいえ。食べ終えたら下に皿を返して下さい」

「わかりました」


 どうしたら良いかと夕食を食べながら考えるが、出てくる答えは一つしか浮かばない。

 答えは、シンプル。

 倒すべき魔物が居ないなら居る所へ行けば良い。

 つまり。


「更に下層へ行くか」


 第五層より下層に行けば良い。

 そうすれば、そのうち魔物とも遭遇するはずだ。


「ご馳走さま。さてと、お皿返して歯磨いたら寝よっと」


 明日は、朝一にダンジョンへと行く為にアカリはその後即行で眠りについた。


 ※※※※※


 翌日、朝早くからギルドで手続きを済ませアカリは、ダンジョンの第五層までやって来ていた。


「早朝だけど、やっぱりそこそこ居るなぁ」


 朝早くからダンジョンに来た。

 だが、それは他の冒険者も同じ。

 私以外にも早朝からダンジョンに来ているので周りには、多くの冒険者がたむろしている。

 その為、現在早朝にも関わらず昨日は閑散としていた第一層も多くの冒険者で埋め尽くされていたのは壮観だった。


「次の層を目指した方が良さそうだね」


 周りには、昨日と違い魔物が多少なら見受けられるものの早い者勝ちと冒険者同士が奪い合いかと思う程に魔物に向けて駆けている。

 これでは、この階層の魔物が狩り尽くされるのも時間の問題でしかない。

 それなら、次の階層へと向かう方が良いと思う。

 幸い第六層に続く道は、昨日の探索で見付けている。

 記憶が正しければ、今居る場所からそこまで遠くなかった筈だ。


「確か、こっちだったよね」


 それから、私は第六層へとやって来た。

 第六層には、冒険者の姿はあるが第五層程見られなかった。


 多少は姿が見えるけど、第五層程ではないか。

 これなら、問題なさそうかな?

 とりあえず、第六層の探索をしながら魔物を探して討伐しながら第七層に向かう感じで良いかな。

 多分第五層の魔物が狩り尽くされたら第六層に冒険者が流れてくるだろうし。


 適当な予定を頭で組んで私は、早速第六層の探索を始める。

 と言ったもののやる事は昨日と何も変わらない。

 ただ、索敵を常時発動して魔物を探しながら辺りに何かないか見渡して歩くだけ。

 今の状況をわかりやすく例えるならこれだろう。

 ちょっと命を掛ける必要のある宝探し。

 うん。

 我ながら、中々ピッタリな例えを挙げれたと思う。


 って、何を馬鹿な事を考えてんだろ私。

 何も起きなくて緊張感が緩んできたのかねぇ。

 そろそろ、魔物の一匹でも遭遇しない……見っけ。


 待ちに待った反応。

 常時発動中の索敵に反応が返ってきた。

 それも5個。


「反応からして右前方か」


 反応が返ってくる方向を見る。

 そこは、天井から伸びる岩石の柱が幾本も立ち並ぶ雑木林ならぬ岩石林が広がっていた。

 見るからに、人が入るのに適していない空間だ。

 だが、その先に私の求める魔物達が待っている。

 軽く眺めて通っても問題なさそうと判断した私は、そのまま真っ直ぐに岩石林へと足を踏み入れた。

 通るのに問題はないとはいえ雑木林の様に大小様々な岩柱が乱立しているのに変わりない。

 防具や武器を身に付け軽くとは言え荷物を持ち運んでいる冒険者なら通るのが苦しいだろう。

 だが、衣服以外何も身に付けていない私には何も問題ないので少し気を付けさえすれば簡単にヒョイヒョイ抜けられる。


 そろそろ反応のあった場所だね。


 索敵の反応は、直ぐ側まで近付いている。

 私は、反応のある方を見るが何も見えない。

 岩柱の影響でここには、光る石は取り付けられていないのでここは辺り一面暗闇だ。

 とはいえ、ぶっちゃけそれが無くても吸血鬼の視力である程度暗闇でも数メートル先までは見える。

 なので、反応のある場所も問題なく見えているのに魔物の姿が見当たらない。


 え?

 何故に居ないの?


 私は、何で居ないのかと頭を傾げた。


 その時


「シュルル……シャアッ!!」

「!?」


 上方からそんな鳴き声?が聞こえ咄嗟に前方に避ける。


 危ねぇ~!?

 辛うじて避けれた!?

 上からとか、完全に意識外だった。

 てか、今の鳴き声?ってまさか。


 私は、聞き覚えのある音?鳴き声?に襲撃してきた相手の正体が思い浮かぶ。

 それがあっているのか確かめるべく後ろを振り返ると。


 そこには


「シャアーー!!」

「やっぱり。てことは…………マジか」


 振り返った先に居るのは、全長10m以上あるだろう私程度の小娘なら丸呑み出来そうな大蛇がいた。

 そんな大蛇が、岩柱に身体を巻き付けながら上方から私を威嚇してきている。

 それも、辺りを良く観察すれば索敵の反応の数通り五匹もだ。

 今の私の内心を正直に語ろう。

 やらかした。

 怖いです。


 ハハハ……どげしよ。

 まさか、蛇が相手とか思わなかった。

 私は、動きにくいのに対して向こうは、あの身体だからこの場所でも楽に動ける。

 うん。

 控え目に言って少し不味いね。

 どうやって倒そう。


 私が、どうやって倒すか考えていると向こうは餌がやって来た事に歓喜しているのかシャアー!シャアー!フシャアー!フシャアー!煩く鳴き?ながら私を逃がさない様に囲いながらゆっくり接近し。


「シャアー!!」

「フシャアー!」

「チッ!」


 大口を開き牙を覗かせながら襲い掛かってきた。

 それを私は、跳躍して一匹目の攻撃を交わし岩柱を蹴り飛ばして空中で軌道を変える事で二匹目の攻撃も交わした。


 しかし


「な!?ガハッ!!」


 避けたと思った矢先に横合いから丸太の様な尻尾が迫り空中の為に避けられず私を弾き飛ばした。

 その威力は、凄まじく私がぶつかった岩柱が砕ける程だった。


 クソッ!

 超痛てぇ~~!!

 流石、全身筋肉の塊なだけあるね。

 凄い力だよ。

 さて、どうやって倒すか。


 私は、考えを巡らせ結論を出した。


「よし。やるか」


 そう言って私は、収納から剣を取り出し魔力を込める。

 作戦は無し。

 てか、作戦たてようにも場所が悪くて作戦なんてたてようがない。

 なので、襲ってきた所をたたっ斬る。

 そうして、私は索敵で相手の動きを感知しながら辺りを警戒する。


 そして


「シャアー!!」

「!、ハァ!!」


 こちらに接近してくる反応と聞こえてきた音からタイミングを合わせ剣を振り抜く。

 狙いは私を呑み込もうと開いている大口。

 振り抜いた剣は、大蛇が襲ってきたタイミングと見事に合わさり開いていた大口から2、3m近く斬り裂く事に成功した。


「まずは一匹」


 完全に死んだのを索敵の反応から確認し次の相手に意識を移す。

 残り四匹の大蛇は、仲間?が殺されたのを見ても特に逃げる事も怒る事もせず私を今も餌と認識しているのか相変わらず囲んで襲い掛かろうとしている。


「こっちから仕掛けるか」


 私は、手近な位置に居る大蛇に向けてロックスピアを放つ。

 因みに、何故普段使う火、水、風属性でないのかだが蛇は温度を感知する能力があるとか聞いた事があるので感知され避けられても面倒なので温度変化を伴いそうな火、水、風属性は止めておいた。

 まぁ、異世界の蛇が同じ能力を持ってるのか知らないけど。


「フシャー!」

「良し。ハッ!」


 狙い通りロックスピアは大蛇へと命中し僅かながら隙を作るのに成功する。

 その隙を逃さない為に私は、一足飛びに距離を縮め大蛇の頭部を切断した。


「二匹目!?ヤベッ!鎌鼬!」


 空中を落ちてる最中、横合いから迫る先程も見た丸太の如き尻尾の姿。

 それに気付いた私は、何とか咄嗟に尻尾に向けて鎌鼬を放つ事が出来た。

 結果、それにより尻尾は切断する事に成功し間一髪再び岩柱に叩き付けられずにすむ。


「次、ってうお!?」


 地面に着地するとそこを狙っていたのか別の大蛇が勢い良く突っ込んでくるのが横目に微かに見え慌ててバックステップで避ける事で回避する。

 が、回避したのも束の間また別の大蛇が目の前から襲い掛かってきた。


「くっ!?」

「シャアーー!!」


 咄嗟だったが、何とか避ける。

 そして、次の標的をソイツに定め駆けると跳躍。

 岩柱を蹴り死角になる真上に飛び。


 そして


「セイッ!」

「ギシャー!!」


 深々と頭部を上から刺し貫き確実に殺す為に剣を抉りながら引き抜く。


「三匹目」


 残り二匹。

 奴らは、ここにきてようやく相手が悪いと理解したのか先程までの勢いが鳴りを潜める。

 しかし、こちらは逃がすつもりはない。

 構わずこちらから行くだけだ。


「ロックスピア」


 大蛇の顔目掛けてロックスピアを放つ。

 それをソイツは、軽く頭部を傾けて避けるがそんな事こちらも予測している。

 ロックスピアを放った直後私は、鎌鼬も放っておいた。

 それにより、ソイツは頭部を切断された。


「四匹目。残りラスト」


 残りは一匹。

 先程までなら、他の大蛇に気を向ける必要があった。

 だが、もう気にしなくて良いので目の前の大蛇にのみ集中できる。

 向こうもこのままだと不味いと理解してるのか噛み付き等激しく反撃に出てくる。

 しかし、攻撃手段が噛み付き位しかないので軽く回避する。


「シャアーー!!」

「これで終わり!」


 回避と同時に横に回り込み大上段から剣を振り下ろし頭部を斬り落とした。


「終わったぁ~~」


 初のダンジョンでの戦闘は、アカリの勝利で終わった。


 ※※※※※


 あれから、少しの間休憩をした私は大蛇の死体を収納に仕舞いダンジョン探索を再開した。


 意外と冒険者の数が増えてるね。


 私個人としては、そこまで時間を掛けたつもりはなかったが、どうやら戦闘、休憩をしている間に他の冒険者が第五層から第六層へと流れて来ていた様だ。

 とは言え、元々冒険者が流れてくるのは予想していた。

 なので、このまま予定通り第七層へと向かう事にする。


「まずは、その為に第七層に繋がる道を見付けないと」


 これまでと同じなら、大体その階層の奥に次の階層に行ける道がある。

 区切りの良い第十層等でもないので、恐らく今回も同じだろう。


「多分そろそろ第六層も終盤辺りだと思うんだけど。って、あ、あった」


 探す事10分ちょっと、視線の先に見覚えのある道の入口。

 探していた第七層へと続く道だ。


 結局、第六層じゃ蛇との戦闘だけだったし。

 第七層では、もう少し魔物が居るといいなぁ。


「それじゃあ、行きますか」


 そうして、アカリは第七層へと向かうのだった。

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