第21話 吸血鬼さんパーティーを組む(3)
「エアカッター」
「グギャ!!!」
私の目の前には、5体程の首が切断されたコボルトの死体が転がっていた。
周りを見渡すと私以外のパーティーメンバーもコボルトを何体かずつ倒している。
「さっきので最後みたいだね」
休憩を終えた私達は、あれから森の調査を再開し順調に進めていた。
しかし、その道中に小規模のコボルトの群れと遭遇し囲われた為戦闘になったものの各々倒していき今しがた私が倒したのが最後の1体だった様だ。
「お前ら誰も怪我してないか!」
私同様に戦闘が終わった事を確認したザックさんは、私達へと怪我の有無を聞いてくる。
この確認は、森に入ってから戦闘がある度にザックさんが逐一聞いてくるので聞き慣れてきた。
私は、森に入って何度目かになる自身の身体の確認をして怪我が無いのを確認する。
「無いです!」
「無いわ!」
「俺も無いぞ!」
私の返答に続きイリアさん、グズダスが答える。
誰も怪我をしなかったみたいだ。
「誰も怪我してない様で安心だ。取り敢えずだが、コイツらも魔石を取って後は燃やしてしまおう」
ザックさんは、私達の返答に頷いた後、死体をどう処理するのか指示を出し各自指示通り魔石を取り出すべく解体を始める。
「フゥ~……よし!」
私も、魔石を取り出す為にバックから解体用ナイフを取り出す。
このナイフは、今回の調査の為の準備をする際に武器屋で購入した品物だ。
お陰で嫌でもサクサクコボルトの腹を捌く事が出来る。
う"お"ぁ"ぁ"~~な…内蔵の感触がぁ"ぁ"~。
き……気持ち悪いぃ~!!!
ま、魔石は……あった。
うえ"ぇ"ぇ"~~魔石もナイフも血でドロドロだよ。
水魔法で洗い流さなきゃ。
周りを確認しバレない様に水球を作り出して血液を流した私は、バックにナイフと魔石を仕舞い込み先に私よりも早く処理が終わり積み上ってる死体の山に処理を終えた死体を運んで行く。
「アカリので全部だな。そんじゃあ、燃やしてしまうか。また悪いが頼むイリア」
「了解。全く、人使いが荒いわね……ファイア」
イリアさんは、愚痴を垂れながら杖を構えて火属性魔法で死体を燃やしていく。
まぁ、イリアさんが愚痴を溢すのもしょうがない。
何せ、ここまでの戦闘で倒した魔物は先同様に魔石を取り出して全て今の様に燃やしているのだ……イリアさんが。
正直、私も火属性魔法を使えるが魔力の温存等も考えて黙って見てたがここまで何度も1人で燃やし続けるのは可哀想に思えてきた。
流石に、1人でやり続けるのも大変そうだし手伝おうかな。
そう思い手伝おうと声を掛けようとしたら……
「アカリちゃ~ん、手伝って~「良いですよ~ファイア」って都合良く火属性魔法使え…………え?」
タイミング良くイリアさんの方から言ってきたので即了解して隣で燃やすのを手伝う。
何故か、隣で「何で使えるの???」みたいな目で見てくるが私をメンバーにすると決める話し合いの際にカリナさん辺りから聞いてなかったのだろうか?
この反応的に聞いてなかったんだろうなぁ。
「ねえ、アカリちゃん、もしかしなくても……てか、もう使ってるけど火属性魔法使えたの?」
あ、やっぱり知らなかったんだ。
「使えましたけど?と言うかカリナさんから聞かなかったんですね」
「えぇ、一応パーティーを組むとはいえ他人の情報な訳だからいくらギルドでも許可なく教えるのはね?まぁ、犯罪者とかなら別だけど」
確かに、考えてみれば幾らギルドに所属してるとはいえ勝手に許可なく個人の情報を教えたりするのは問題でしかない。
仮にもそんな事が広まりでもすれば、オーレストのギルドだけでなくギルド全体の信頼が下がる事になるだろう。
「そうだったんですね。てっきり知ってるのかと思ってましたよ」
「だって知らなかったんですもん。アカリちゃんももう少し早く教えてくれたら良かったのに。あ、燃やし終わったわね。終わったわよ~」
燃やし終わりイリアさんがザックさんに終わった事を告げるとザックさんとグズダスがシャベルを持って近付いて来る。
「はいよ~さっさと埋めてしまうか。やるぞ、グズダス」
「了解。早く終わらせましょう」
燃やしたとは言え、死体の匂いがあれば他の獣や魔物が寄り付く。
その為、これまでの戦闘でも燃やす度にこの様に地道に地面を掘って埋めている。
因みに、土属性魔法を使えば簡単に穴を作れて穴堀なんて無駄な時間を掛ける必要はないのだが穴を作るつもりはない。
そんな事すれば、私は3種類の属性魔法持ちになって余計な注目を集めてしまう。
私の平穏の為にも穴堀頑張ってくれたまえ。
※※※※※
あれから、穴堀が終わり私達は日も落ちてきた為少し進んだ先にあった木立の空けたスペースで夜営する事にした。
「さて、飯を食ってる所悪いが今日の調査で何か気になった事とかあった奴は居るか?」
焚き火を囲んで各々準備していた食事を口にしているとザックさんが私達に気になった事がないか聞いてくる。
気になった事ねぇ。
う~ん…………やけに魔物や小規模とはいえ魔物の群れと遭遇した気がするけどどうなんだろ?
森の中でも場所によって変わったりするのかな?
あ、このパン美味しい。
この調査が終わったら孤児院の皆の分も買って遊びに行こうかな。
私は、そんな事を考えながらも取り敢えず思った事を話してみる。
「私が、普段依頼で入る森と比べて魔物や小規模な群れと遭遇した気がしたけどこの辺りだとこれが普通なの?」
「いえ、他の場所と対して変わらない筈よ。ここまで、多くなかったと思うけど」
「あぁ、俺もイリアの言った通り多い気がする。もしかしたら、森の奥に生息してた魔物が例の大型の何かから逃げて来たのかもな」
どうやら、私の勘違いでもない様でイリアさんとザックさんも普段よりも多いと感じてた様だ。
「確か1週間位前辺りから普段より魔物討伐や群れ系の依頼が多かった気がしてたがこれも関係があるのかもな」
「あ~~確かにそうかもな、目撃されたのも1週間位前だからな」
私は、わからなかったがグズダスの言った通りここ最近の依頼には、普段よりも魔物討伐の依頼が多かった様でザックさんも頷いている。
「実際どうなのかは調査が終らなきゃわからんがな。他には、何か気になった事とかあるか?」
他に何かあったかなぁ?
特には、無ないかな。
「私は、無いかな」
「私も、無いわね」
「俺も、無いな」
イリアさん、グズダスも気になった事は無かった見たいで同じ様に返した。
「1日目だしこんなもんか。まぁ、関わりありそうな事がわかっただけ上出来か。そんじゃ、明日も調査だし夜の見張りを決めてしまうか」
その後、夜の見張りを話し合って決めるのだった。
※※※※※
「アカリ、イリア見張り交代だ変わってくれ」
「う~~ん……もうそんな時間?了解です」
「ムニャムニャ……スゥスゥ」
「おい!イリア起きろ!俺もグズダスも眠いんだよ!」
夜の見張りは最初にザックさんとグズダス、交代で私とイリアさんが行う事になった。
理由は単純にイリアさんが私と見張りをしたいと言ったから。
私もザックさんやグズダスと見張りをするよりイリアさんとの方がやり易いので正直良かった。
まぁ、一緒にやりたいと言った当の本人が起きようとしないんだけどね。
さて、見張りで眠いだろうザックさんの為にもイリアさんを起こしますか。
「イリアさん起きて下さい。見張りの時間ですよ。イリアさん!!イリアさん!!…………嘘でしょ」
「スゥ~~スゥ~~」
肩をそれなりに強めに揺すり起こそうとする。
普通の人ならこれで起きるだろう強さでだ。
それなのに、イリアさんは微塵も起きる気配が無かった。
私は、どうしたものかと思いザックさんの顔を見る。
「コイツは、1度寝るとなかなか起きないんだ。だから、もう少し強引にやらないと起きない」
「マジですか」
今のでもかなり強めにやってたのにこれよりも強引ってどんだけ起きないの。
そんな事を思ってるとザックさんは、イリアさんの顔に手を寄せる。
え?何すんの?
「何して……は?」
ぎゅむっと摘ままれたイリアさんの……口と鼻。
強く摘ままれてるのかイリアさんの顔が少し不快そうに歪んだかと思ったら少しずつ苦しそうになる。
「ん"……んぅ"、んんッ"!ブハァ!ハァハァハァ」
あ、起きた。
凄い苦しそうに息吸ってる。
「やっと起きたな馬鹿魔法使いが」
「この馬鹿剣士!!何すんのよ!!死にそうになるからその起こし方止めろって言ったでしょ!!」
「てめえが、普通に起きないからだろ。言っとくがアカリが俺より前に普通に起こそうとしたからな」
「え!?そうなの、ごめんねアカリちゃん」
「え、あ、はい」
「おい、交代してくれ流石に疲れたから眠い」
「了解。さ、アカリちゃん見張りに行こ!!」
「朝になったら起こしてくれ」
「了解~~」
「わかりました」
少々?起こす内容で内輪揉めは起きたがこうして、私達の見張りの番になった。
以前アリサと街へ向かう際に見張りをした事はあるため勝手はわかるが油断は禁物だから気を引き締めるが…………
「アカリちゃ~ん、暇だから昼間のおしゃべりの続きしましょ~~」
「…………」
イリアさんの言葉で一瞬で気が緩んでしまった。
「イリアさん、見張りなんですからもう少し緊張感とか持ったりしないんですか?」
「大丈夫よ、ちゃんと周りに気は配ってるしここは木立の空けたスペースだから近付いて来たら直ぐにわかるわよ」
「なるほど」
やはり、冒険者としての歴が長いだけあってしっかり見張りをこなしている事に素直に私は、凄いと思った。
うん。確かに、周りには何も居ないみたいだし雑談しても大丈夫かな?
アカリは、吸血鬼の視覚、聴覚と索敵スキルで周りを確認して問題はないとわかりイリアさんと雑談する事にする。
「わかりました。それじゃあ雑談でもしましょっか」
「本当に良いの!」
「はい」
索敵を使い続ければ問題ないだろうしイリアさんはイリアさんで警戒はしてるから大丈夫でしょ。
そうして、私はイリアさんと雑談するのだった。
※※※※※
「そう言えばさ、アカリちゃんはグズダスと模擬戦した時に魔法を使わなかったって話だけど本当なの?」
あれから、雑談をしてると唐突にイリアさんはそう聞いてきた。
「本当ですけど」
別に他の冒険者にも見られてる事なので肯定する。
「他の冒険者が話してて嘘だ~って思ったけどアカリちゃん本人から言われても信じられないわね。身体強化を使ったのは間違いないとして」
どうやら、信じきれない様だ。
まぁ、私本人もこんな華奢な女の子が武器を持った男に素手で勝ったと言われても信じられないしね?
後、身体強化はその時はまだ使えなかったから使ってないんだけどね。
まぁ、言っても信じないだろうから言わないけど。
「近接戦闘を習ってたのでそれのお陰で勝てたんですよ」
「う~~ん……まぁ、本人がそう言うならそうなのかな?」
微妙な顔をしてるが一応は納得してくれた様だ。
「所で、何でグズダスと模擬戦何てやる事になったの?」
「アイツが私にちょっかい掛けて来たからですよ」
別に隠す必要ないのでイリアさんに話す。
「アイツがちょっかい掛けて来た上に困ってた私に優しくしてくれた人の事を侮辱してイラついたのでぶっ飛ばしただけです。イリアさんだって自分の家族や友人が侮辱されたら怒るでしょ?」
「そう言う事だったのね。納得した。確かに、私もそんな事があればキレてるわね」
イリアさんは、私の話で納得した様で少し怒った様な顔でグズダスの方を見ながら頷いている。
「まぁ、何故か今は前とは打って変わって落ち着いてるからギルド側はパーティー組んでも大丈夫だと判断したみたいだけど。正直前のアイツを知ってる私としては不気味ね」
「ですね」
本当にそれなのだ。
あの、屑が嘘みたいに静かで人の指示に大人しく従ってるのがイリアさん同様に不気味でしかない。
まぁ、大人しいならそれで良いし仮に前同様私にちょっかい掛けて来たとしても前以上にボコボコにして半殺しにすれば良いだけだが。
「うん!不愉快な話はこの辺で終わり。もっと他の話をしよっか」
「ですね。あ、私イリアさんから魔法の話を聞きたいんですけど」
「良いわよ!それで何が聞きたい」
「あのですね」
それから、私は魔法の事やイリアさんのこれまでの冒険の話を朝日が昇るまで聞くのだった。
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