第19話 吸血鬼さんパーティーを組む(1)
聞き間違いだろうか?
『パーティーを組んで依頼を受けて貰いたいんです』
今カリナさんの口からその様な言葉が出てきた様な気がした。
私は、聞き間違いだと良いなぁと1%も無い可能性を願いながらカリナさんにもう一度聞いてみる。
「カリナさん?今何と?」
「はい、ですのでアカリさんにパーティーを組んで依頼を受けて貰いたいんです」
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"~~~」
聞き間違いじゃなかった。
アカリは、顔を覆いながら天を仰ぎ呻く。
「いや、え!?アカリさんそんなに、パーティー組むの嫌だったんですか!?」
流石に、私がここまで拒絶的な反応を返すとは思わなかったのだろう。
カリナさんは、驚きの表情を浮かべながら私にその様に聞いてくる。
嫌かだって?
当然嫌に決まっている。
誰が好き好んで自分の処刑エンドへと繋がり兼ねないものに飛び込もうと思う。
私の今の種族は、吸血鬼。
歴史にも多く吸血鬼と言う存在の危険性が記されている。
今の私の強さは、歴史の吸血鬼達には到底足元にも及ばない程に弱い。
しかし、順調に進化すれば同等クラスいや、称号等の効果を含めたらそれ以上の強さを身に付ける事が出来るかもしれない。
そんな、人間達からすれば厄災の種にしかならない存在が自分達のすぐ側に居るとバレてみろ直ぐ様討伐するべく討伐隊が私を殺しに来るだろう。
まぁ、幸いにも私は、偽装魔法や状態異常耐性、日射耐性により吸血鬼の特徴を隠せている為今は、安心して過ごせている。
しかし、それが戦闘が絡むのであればに話が変わってくる。
私の、戦闘手段は魔法の遠距離と血液支配で作った武器と身体能力でのゴリ押しの近距離だ。
今回は、パーティーだから魔法だけで戦えば良いかもしれない。
だが、戦闘はなにが起きるかわからない。
何かの拍子に普段の感覚で咄嗟に血液支配で武器を作ってしまいそれをパーティーメンバーに見られて私が吸血鬼だと身バレならぬ種族バレしてしまうかもしれない。
ぶっちゃけ断りたい所だが何で私にそんな依頼を持ってきたのか気になるので話だけでも聞いてみる。
「まぁ嫌ですけど。何で私にパーティーを組む様な依頼を?」
「実はですね。近々森の調査をする予定があるんです」
「調査ですか?」
「はい、実は……」
カリナさんの話によると最近森の奥で大型の動く何かを見たと言う目撃情報が多数寄せられているらしい。
最初は、何かの見間違いか何かだとギルド側は思いあまり気にしていなかったそうだがその後も、同じ様な話が何件も届き1度しっかり調査をしようとなったそうだ。
「今回の調査内容は大型の何かの正体を確かめる事です。普通の大型の熊や猪等だったならまだ良いのですが本当に大型の魔物だった場合最悪街に被害が及ぶ可能性があります。なので、この調査にEランクや新米Dランク等の魔物との戦闘経験の少ない半端な実力者を行かせる訳にはいかないんです」
マジか、最悪街に被害が出るとか予想以上に厄介な依頼内容だったよ。
こりゃ受けたくないとか言ってられないかも。
と言うか、さらっと冒険者歴2週間程度の私を新米から外されてるけど、ウルフの群れやオーク位なら1人で倒せるからなのか?
「私にその調査を受けて欲しい理由は、わかったけど普通に何処かのパーティーに頼んだ方が早くないですか?」
「はい、なので実力のある2人組のパーティーの方にもお願いしてます。ですが、今回は情報が何もないので2人と話し合いまして4人パーティーを組む事にしたんです。そして、アカリさんにはサポート戦力として参加して欲しいんです」
「一応聞きますけど私以外に頼める人は居なかったんですか?」
私以外に居るのなら断りたい。
わざわざ自分から危険に飛び込む必要は無いのだから。
だけど、もし居ないのなら本っ当~~は!!!受けたくないけど引き受けよう。
だって、転生して一番初めに訪れた街なのだ。
まだ、2週間程度しか暮らしてないとは言え少なからず愛着はあるのだから被害が及ぶ可能性があるのなら防ぎたい。
「はい、大型の魔物を相手出来る様な実力となるとなかなか居ないものでして」
「ハァ~~……わかりました。受けますよ」
私は、再び顔を覆いながらため息をついて引き受けるのだった。
種族バレしない様に頑張ろ。
※※※※※
あの後、カリナさんに依頼ついての説明を現在わかっている範囲で教えて貰ったりした。
出発は4日後の早朝で集合場所はギルド前、調査は目撃情報が多い森の奥でどうやら私が普段入る森とは違う方角みたいだ。
どうりで、私も森の奥に入ってるのにそんな、大型の何かを見なかったはずだ。
「それにしても、調査は泊まり掛けになるみたいだし幾つか買い出しに行かなきゃ…ん?」
アカリが、依頼の事を考えてると何か足音が聞こえてきた。
「アカリさ~ん、夕ご飯お持ちしました」
「あ、フィーごめんね。今開けるよ」
私は、あれから宿泊先を変えることなくフィーの両親が経営されてる宿屋で寝泊まりしている。
そのお陰でフィーともすっかり仲良くなり実は、フィーのお願いで部屋でお泊まり会的な事もした。
まぁ、それでもフィーは私の事はさん付けで呼ぶんだけどね。
「ありがとねフィー、そうだ、実は伝えとかないといけない事があるんだけど」
「何ですか?」
私は、まだ4日後の事だが先に伝えておこうと思いフィーに調査の事を話す。
「……てな訳で4日後に森の調査に行かなきゃいけないからしばらく帰れなくなるんだ」
「そうですか。でも、アカリさんは冒険者だからこのような事もありますよね。わかりました。そうですと、4日後に一旦宿泊をチェックアウト帰ってきたらまた、宿泊する感じで大丈夫ですかね?」
「うん。それでお願いするよ。それじゃあ、冷めないうちにご飯食べようかな、いただきます」
その日は、ナンの様な生地に味の付いた肉と野菜が詰まった料理とあっさりしたスープ。
毎度の事ながらやはり全部美味しくあっという間に平らげてしまった。
「ご馳走さま。とっても美味しかったよ」
「ありがとうございます」
「お風呂入りたいんだけどもう入れる?」
「はい、もう入れますよ」
「ありがとね。それじゃあ、お風呂行ってくるよ」
そうして、アカリは空になったお皿をフィーに渡してお風呂に向かった。
「フゥ~~良いお湯~疲れた身体に染み渡るよぉ~」
お風呂に入ったアカリは、気持ちよさから完全にリラックスしきり顔をゆるゆるに緩めながらお湯に浸かっていた。
それ故、お風呂に近づいてくる彼女に気付けなかった。
「アッカリさ~~ん!!一緒に入っても良いですか!!」
「わぶっ!!??…ぶはっ!!ハァハァハァ……ビックリした~フィー入ってくるならせめてもう少し静かに入ってよ溺れるかと思ったじゃん」
入ってきたのはフィーだった。
恐らく仕事が一段落付いたので風呂場に突撃してきたのだろう。
まぁ、今まで友達が居なかったから友達とお風呂に入れると思って突撃してきたのは良いのだが流石にスライドドアを勢い良く開けるのは止めて欲しい。
リラックスしてたから本気でビックリして溺れ死ぬかと思ったから。
「ご、ごめんなさい。その一緒に入りたくて」
「別に怒ってないから、それで、一緒に入るの?」
「はい!入ります。そうだ、アカリさんまだ洗ってないようでしてら髪洗いましょうか?」
先程のお詫びか何かだろうか?
フィーが髪の毛を洗うと言ってくる。
前世同様に長くて洗うの面倒だしせっかくなら洗って貰おうかな?
「それじゃあ、お願い」
「は~~い」
そうして、フィーは私の髪を洗い始めた。
「やっぱりアカリさんの髪の毛は綺麗です。この透き通るようなキラキラした穢れを知らないかのごとき白銀の髪の毛…ハァハァハァ~本当に綺麗です」
「あ……うん、ありがと」
どうしよう。
フィーがバグり始めた。
「ンク……アカリさんお湯で泡を洗い流すので目を閉じてください」
「うん」
「それでは、今度は背中を洗いますね」
「うん、おねが……い?っま!?」
「洗いますね~~」
「ちょ!?待て~~!?」
「どうしました?」
あまりにも自然に言ってくるもんだから流れで頷いてしまったじゃんか危ない。
「いや、別に背中はいいから」
「いえいえ、気にしないで下さい私がしたいだけなので」
いや、寧ろ私が気にするわ!?
今のフィー何か怖いもん!?
「いや、本当別に」
「うぅ~やっぱり私の事が嫌い何ですか」
「いや!?何でそうなる!?」
「グス良いんです。私みたいな奴の事は「わかった、わかったから洗って良いから泣かないで」ありがとうございます!!」
あれ?
嘘泣き?
「フフフ……アカリさんの背中、真っ白な染みひとつない綺麗な肌本当綺麗。ハァハァ」
ヤバい!!!ヤバい!!!ヤバい!!!
「それじゃあ、アカリさん前も~痛った!?」
「止めんか!!アホ!!」
危っね~~咄嗟にデコピン喰らわして止めれたよ。
今の私の筋力でのデコピンだからかなり痛いはず。
今の内に離れよう。
「あ!!待ってアカリさん」
「待つか!!2メートル内に近づかない事!!」
「そんな~~」
その後、何とか近づこうとするフィーにデコピンする度に弾ける様な音が何度も風呂場に響くのだった。
※※※※※
パーティー依頼を受ける事になった日から4日経ち調査に出発する日になった。
今は、集合場所であるギルドへと向かっている所だ。
今日までの間に必要と思われる物も買い出しを済ませたお陰で準備万端。
収納がバレない為のバッグも持ってきたから収納対策もこれでバッチリだ。
「さてさて、パーティーメンバーはいったいどんな人達なのかな?お、見えてきた」
ギルドが見えて来て入口前に今回のパーティーメンバーと思われる冒険者が3人にカリナさんと何故かギルマス含めたギルド職員が数名立っていた。
「あれ、もしかして私が最後?急がなきゃ、すみませ~~ん遅くなりました」
私が、謝りながら走って近づくと全員の顔が此方に向きそして…………
「「ええぇぇぇ~~~~!!!???」」
…………何故かパーティーメンバーの筈の冒険者2人に驚かれた。
「何でや」
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