第18話 吸血鬼さん成長を実感する

「18…19…20……21、はい、確かに確認しました。これで、依頼は3つ全て完了ですね。アカリさんお疲れさまでした」

「はい、やっと終わりましたよ。予想外に本当に疲れました」


 あの、群れシリーズの3つを受けたあの日から1週間が経った今日、私はようやく依頼を達成した。


「そうですね。勧めた私が言うのも何ですが意外と時間が掛かりましたもんね」

「正直私自身も最初は、もう少し早く依頼を終わらせれると思いましたよ」


 当初の予定通り初日を除いて半日練習の半日依頼というスケジュールで過ごしていたが、始めは3、4日で依頼は終わると思っていた。

 しかし、これがなかなか見つからないの何ので途中から索敵スキルに吸血鬼の視覚聴覚をフル稼働で森を探し回った事で何とか見付けられて今日最後の依頼であるコボルトの群れを見付ける事が出来たのだ。


「ウルフの時は、直ぐに群れと遭遇したのになぁ」

「ウルフは、獲物や敵が近づいて来たら遠吠えで仲間を呼びますからね。それに比べて今回の依頼の魔物は遠吠えの様な仲間を呼ぶ様な行動をしないですから仕方がないですよ」


 確かに、ウルフの時は遠吠えがした後に群れと遭遇してたけど今回の奴らはそんな行動はしていなかったね。

 ほとんどが、敵対してる私に群がって来て攻撃してくるばかりだったし。

 まぁ、数は多かったけど私にたどり着く前に魔法か血剣で倒したんだけどね。


「それでは、アカリさんコチラがコボルトの群れの討伐依頼の達成金と昨日の解体した角兎の買い取り金です」

「あ、ありがとうございます」


 カリナさんが持ってきてくれたお金を受け取り収納へと仕舞いふと思い出す。


「そう言えば、カリナさん収納スキルって珍しくないんですか?」


 何となくカリナさんの前で普通に使ってるが珍しいスキルの割に何も反応がないけど実際どうなのだろうか?


「珍しいですよ?と言うか私は、初めて見ましたよ?」

「え?」


 嘘やん。

 何も反応してなかったじゃんか。

 少なくとも、私が見た限り表情に変化は無かったんですけど?


「ギルド受付嬢たるもの感情を顔に出すべからずです!!」

「な……なるほど?」


 カリナさんは、胸を張って教訓の様なモノを言うが上手く理解出来ずに?を浮かべながら答えてしまう。

 しかし、カリナさんはそんな私の反応をスルーして話を続ける。


「因みに、アカリさん実際収納スキルは、かなり珍しいスキルなので人前であまり使わない方が良いですよ。下手に知られるとまた、しつこく勧誘されたり商人等に付け狙われますからね」

「う、気を付けます」


 冒険者ならまだ我慢出来るが商人にも狙われるとか非常に面倒で嫌なので気を付けよう。

 只でさえ我慢出来るとはいえ冒険者だけでも辟易したって言うのに。


 私は、今までよりも気を付けようと心に誓うのであった。


 ※※※※※


 依頼達成から数日私は、ここ最近日課になりつつある魔力制御の練習をしていた。


「う~~ん……やっぱり難しいね」


 行っているのは、体内の魔力を自分の力だけで操作し循環させて必要最低限の魔力で魔法を発動させる練習をしている。

 これが、なかなか難しく練習を始めた初日なんて制御をミスして制御してた魔法の魔力が暴走そのまま目の前で爆発して気絶する羽目になった。


 うん。あの時は、本気で焦った。

 まさか、指先サイズの火球を作った筈なのに制御ミスって過剰に魔力を注いでしまい1メートルサイズにまで瞬間膨張するなんて思いもしなかったよ。

 ん?称号の補助はどうしたのかだって?

 今は意図的に制御を外してるんだよ。


 実は、練習初日に思ったのだ「あれ?補助が自動でついたら練習出来なくね?」って。

 それで、どうにかならないかと試行錯誤してたら称号の効果を外せる事に気付きそれからは、補助無しで魔法を使えるように練習している。

 時には、前述の様に爆発したり、暴風に吹き飛ばされて瞬間空中旅行したり、濁流に飲まれたりする事もあったけど。

 だけど、そんな地道?な練習もありそれなりに成果も出てスキルが大分伸びた。

 ────

 名前:アカリ

 種族:ヴァンパイア

 状態:通常

 LV:9/10

 HP:172/172

 MP:112/188

 筋力:157

 耐久:105

 敏捷:161

 魔法:143

 ─スキル─

【鑑定】【収納】【言語理解】

【血液支配Lv2】【吸血】【眷属化Lv1】【索敵Lv3】

【偽装魔法】【火属性魔法Lv2】【水属性魔法Lv2】                     

【風属性魔法Lv3】【土属性魔法Lv2】【再生Lv1】

【日射耐性Lv4】【状態異常耐性Lv5】

 ─称号─

【女神アリシアの加護】【女神アリシアのお詫び】

【Dランク冒険者】

 ────

 こんな感じで、魔法スキルのスキルLvが全体的に伸びたし依頼でざっと70近い魔物を倒したお陰でレベルも9まで上がったのだ。


「レベルが後1上がれば多分進化出来るんだよね?どんな感じ何だろう。楽しみだなぁ~~ってヤバっ!?ミスっ!!!ぎゃあ"~~!!?」


 うっかり、気を緩めてしまった私は制御をミスして再び目の前で爆発に巻き込まれる。


 しかし


「痛つつ……危なかった~~咄嗟に身体強化で防御力上げるのが間に合ったよ」


 何時もなら、制御ミス→爆発→防御ミス→気絶の四点セットなのだが今回はそうならずに済んだ。


「やっぱり便利だね身体強化は」


 異世界物の漫画やラノベで定番の身体強化だが、実際に試すと物凄く便利だ。

 漫画、ラノベ同様に魔力を身体全体に循環させる事で身体能力を向上させる事が出来たし、特定箇所に魔力を集中させたらその箇所の力が上がる。

 それに、目に魔力を集中させたら視力も上がりその上相手の魔力を多少だが見る事も出来た。


「まぁ、慣れてないから直ぐに魔力を巡らせて強化ってのはまだ出来ないんだけどね。だけど、今日は間に合ったし私もちょっとは成長してるんだね」


 思わぬ所で自分の技量の成長を実感出来たアカリは、その後の練習は普段以上に気分良く続けられたのだった。


 ※※※※※


 魔力制御の練習を終えた私は、1度ギルドへと戻り昼食を食べ様としていた。

 以前までなら堂々とホールで食べていたら勧誘される場面だが以前カリナさんがキツく注意してくれたのが効いたのか勧誘される事はかなり減った。

 とは言え、完全に無くなった訳でもないからたまに声をかけられる事もあるけど。


「アカリさ~ん」

「ん?あ!アリサ久し振り元気だった?」


 誰かが私に声をかけてきたと思い振り返るとそこには、最近顔を合わせてなかったアリサが此方に手を振りながら近づいて来ていた。


「はい!元気です。アカリさんこそお元気でしたか?」

「うん。元気だよ。そうだアリサは、もうお昼食べたの?」

「いえ、ついさっき依頼を終えた所なのでまだ食べてないですよ」


 どうやら、依頼帰り直後の様だ。


「だったら、せっかくだし私と一緒にご飯食べない?奢るからさ」

「いやいや、別に奢らなくても自分の分は私が払いますよ!?」

「え~~前に私が奢るからご飯一緒に食べようって言ったら良いって言ったのに」

「う、そ…それは」


 アリサは、奢って貰うのに抵抗があるのか直ぐに頷いてはくれない。

 しかし、私が以前お願いして了承した事を私の言葉で思い出したのか反応があやしくなり。


「駄目?」

「わ、わかりました」


 遂に陥落した。

 やったね♪


「それじゃあ、食べよっか」

「はい、いただきます」


 私はアリサに食べたい料理を選んでもらいアリサは兎肉の肉野菜定食?を選んで注文した。

 因みに、私はウルフ肉のステーキだ。

 そして、しばらくして美味しそうな匂いをさせながら料理が届きアリサも食べ始める。


「お肉が野菜と合ってて美味しいです♪」

「そう、だったら良かったよ」


 とても、美味しそうに食べてくれるので誘った甲斐があったよ。

 だけど、これだけじゃ銀貨分には流石にならないから、またの今度誘おうかな?


「あれ?アカリさんにアリサちゃんも2人でお食事ですか?」


 私がアリサと食事をしていたら今度は、カリナさんが手に昼食と思われるお弁当?を持ちながら私達の座るテーブルまでやって来た。


「カリナさん、お疲れ様です。休憩ですか?」

「お疲れ様です」

「ありがとございます。はい、アカリさんの言う通りちょうど休憩でして。相席良いですか?」


 断る理由も無いので快く了承する。

 カリナさんも座り再び食事を今度は3人で世間話をしながら食べ進めていき楽しい3人での食事はあっという間に終わった。


「ふ~~美味しかった。ご馳走さまでした」

「はい、美味しかったです。アカリさんご馳走さまでした」

「ご馳走さま。そうだ、アカリさん後で良いので少しよろしいですか」


 何か連絡でもあるのかな?

 それなら、ここでも良い気がするけど後でって事はアリサには伝えれない事って感じかな?


「はい、わかりました」

「アカリさん、それじゃあまた。是非、孤児院にも遊びに来て下さいね。カリナさんも、さようなら~」

「うん、またね~~」

「お気を付けて~」


 アリサは、私とカリナさんの会話で自分が居ると話の邪魔になると察したのか手短に挨拶をしたらギルドから出ていった。


「てな訳で何でしょう?」

「そうですね、実はアカリさんにパーティーを組んで依頼を受けて貰いたいんです」


 私は、言われたその話に


「……………へ?」


 予想外なあまり上手く言葉を返せなかった。

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