クラスメイトは異世界転移なのに私は異世界転生

紫苑

第1話 転生しました

 気持ちよく眠っていた私は段々と意識が覚めていくのを感じた。

 本当はもっと寝たい所だが学校があるので起きないと遅刻する羽目になる。

 それは何としても避けたかった私は、渋々ながら起きる事にした。

 が目を開けた先に写った光景に先ほどまで感じていた眠気が全て吹き飛んでいった。


「すぅ、すぅ、すぅ、ぅ~ん?…うん!!?……え?待って!?ここ何処!!??」


 起きて辺りを見回すと普段見慣れた自分の部屋ではなく全く見たことのない部屋……どころではない!!

 見渡す限りの木、木、木!!

 つまり今いる場所は森の中だという事だ。


 え?どういうこと?

 まって、私知らない間にもしかして誘拐でもされた上に森の中に捨てられた?


 あまりの事態に頭が混乱してしまい普通ならあり得ない事を想像してしまうが、まぁ今の状況が普通ならばあり得ない事態なので仕方ないとも言える。


 しばらくしてようやく混乱が収まった私は、ひとまず目が覚める前の事を思い出そうとし、ある事を思い出した。


「確かいつも通り学校に行ってクラスの皆に会って、適当に駄弁って……その後、!!あ、そうだった、私死んだんだった。……そして転生した」


 そう、私は死んだ。

 そしてこの世界、異世界へと転生した。


「はは……本当に転生するなんて。まるで前世で読んでたラノベみたい。だけど、実際に会ったしなぁ。女神様に」


 私は、転生する際に出会った女神様との会話を思い出していた。





「ここ、何処?」


 気が付くと私は見覚えのない場所にいた。

 何処なのかと見渡してみると真っ白な空間がただ何処までも広がっておりここが普通の場所ではないと何となく理解する。

 普通なら不気味やら恐怖など感じそうだが、私は何処か神聖なそして不思議と居心地が良い場所だなと感じ心が安らぐ様に感じる。


「目が覚めましたか?」


「!?……え」


 自分以外の存在の気配を感じなかった空間で自身の背後からいきなり声が聞こえた為、私は心臓が止まるかと思いながら恐る恐る後ろを振り返り、その場に立っていた存在を目にし……息を呑んだ。


「どうかしましたか?あ!もしかして何処か調子が悪いですか!!」


 目の前の存在が何か話し掛けてくれているが私の耳には届いていなかった。


 何故なら


「……綺麗」


「え?綺麗?」


 目の前の存在もとい女性は、今まで生きてきた人生の中で見てきたどんなものよりも別次元に綺麗で美しくそして神聖で神秘的に感じ私は見惚れてしまっていたからだ。


 まるで暖かな陽光を思わせるうっすらとキラキラと輝く黄金色の長い髪の毛。

 見るからに柔らかそうであり絹の様ななめらかな手触りなんだろうと思わせる。

 顔そしてスタイルは、今まで見てきたアイドルや女優よりも整っており、瞳は澄み渡る青空の様な蒼色を宿していた。

 そして、その顔は優しさと慈愛に溢れる表情をしており、見ていて自然と心が暖まる気がした。

 身体を纏う服はギリシャ神話?かなにかにでてくる様な純白の衣装を身に纏とっていた。


 それら全てを総じて私は、目の前の女性をとても神聖に感じていた。


「お~い!聞こえてますか!!お願いですから私の話を聞いて下さい!!」


「は!?あ、スミマセン」


 先ほどよりも大きな声に私はようやく自分に向けられている声に気付いた。


「やっと気付いてもらえましたね。念の為にもう一度聞きますが、何処か調子が悪いなどありますか?」


「えっと……特にないと思います」


 聞かれた事に対して特に何もなさそうなので問題ないと返す。


「そうですか。安心しました。それでは、まずはお互い初対面なので自己紹介をしましょうか。私の名前はアリシアあなたが暮らしていた地球とは異なる世界を管理している女神です。そしてこの場所は神域と呼ばれる場所です。」


 Oh~女神様ってマジですか、てかこの空間って神域なのね。それにこの女性の神聖な感じ的に本当に女神様でもおかしくはないのかな?

 って私も自己紹介しないと。


「えっと…私は、神白緋璃かみしろあかりって言います」


「良い名前ですね」


「あ、ありがとうございます」


 名前を誉められるなんて経験がなかった上にこんな綺麗な人、じゃなくて女神様に褒められてしまい私は照れてしまった。


「緋璃アナタにまず聞きたいことがあります」


「聞きたいことですか」


 女神様の真剣な表情に私も自然と真面目に聞く態勢になる。


「緋璃はこの神域で目覚める前の記憶は何処までありますか?」


「目覚める前の記憶ですか」


 目覚める前、確か学校へ行ってクラスメイト達と話してその後は、あれ?その後の記憶がない?


「あの、クラスの皆と話をしていた後の記憶がないです」


 私の返答に「わかりました」と返した後、女神様は深刻そうな顔で私に切り出した。


「緋璃これからアナタに残酷な事を伝えます」


「残酷な事ですか」


 女神、記憶の欠落、残酷な話ってこの神域で目覚めた時から何となく予感があったけどこれってもう確定では?


 私は、自身の予想と違う事を祈りながら、女神様の話へ意識を戻す。


「はい。緋璃、アナタは死んでしまいました」


 死んでいる

 その真実に対して私は


「やっぱりか~~~~」


 自身のハズレて欲しかった予感が当たっていた事に項垂れた。


「え?やっぱり?え?あの、緋璃?死んでしまったんですよ?」


 予想と違った反応だったのだろう。

 女神様は私への死んでいる発言に対する反応が意外過ぎた様で深刻な表情から一転し顔に???を浮かべ困惑する。


「緋璃アナタもしかして、死んだ事に気付いてたんですか?」


 ようやく困惑から戻った女神様は、やはり気になったのか私へ聞いてきた。


「何となく予感として感じてただけです。ただ女神様の残酷な話って言われて死んだのかなって確信に近くなった感じで、まぁ残念な気持ちはありますけど」


「そうだったんですね」


 元々私はゲーム、漫画、ラノベを好んで嗜んでいた事もあり、今の展開も似たようなシチュエーションがよくあった、なので女神様が現れたあたりから、もしかして死んでる?と予感はあった。


 まぁ出来ればハズレて欲しかったけど。


 ただ、何で私が死んだのか原因が全くわからない。

 なので、原因を知っているであろう者へと直接聞くことにする。


「あの、私って何で死んだんですか?」


「緋璃が死んだ原因は、私の管理する世界が関係しています」


 話を要約すると、私はどうやら勇者召喚が原因で死んだそうだ。

 てか勇者召喚ってマジでテンプレだな!?

 何でも女神様の管理している世界は魔物が存在しており魔物を統べる魔王がいるそうだ。

 そして、その魔王をどうにかしようと勇者召喚を行ったそうな。

 いや、テンプレ過ぎない?


「異世界間の転移はとても高度な魔法なため本来は、人間の使う魔法では1人や2人等の少人数の召喚が限界です。ですが召喚を行った国の人間達は一度に多くの者を召喚しようと無理やり魔法を行使した結果、他のクラスの方は何とか転移出来たようです。ですが緋璃、アナタは上手く転移出来ず死んでしまったんです」


 マジか、私だけってどれだけ運が悪ければそんな1人だけ失敗になるんだよ。

 いや、逆か?クラスの皆が運が良かったのかな?

 まぁ、皆が無事だったのは良かったかな?


 そんな事を思ってると、女神様の話はまだ続いていた。


「本当に焦りましたよ。召還の儀式の気配がしたので確認してみれば、緋璃が転移失敗のせいで時空の狭間に飛ばされて肉体が消滅してる上に、魂が輪廻の輪へと飛ばされかけてたので慌てて魂を保護して神域へと来たんですから」


 ヒェ!!!……輪廻って私本当にギリギリだったんだ

 女神様には、感謝しないと


「助けてくれてありがとうございます」


「いえ、頭を上げてください。結局は死なせてしまったのに変わりありませんから」


 頭を上げた私は、これからの事が気になり女神様へたずねる。


「それで、私はこれからどうなるんですか?」


 わざわざ輪廻の輪へと還るのを阻止して保護してくれたのだ、転生それか生き返ることが出来て元の世界へ帰ることが出来たりするのかもしれない。


「緋璃には、私の管理する世界へ転生してもらおうと思います」


「転生ですか。あの、転生が可能なら生き返って地球へ戻る事は出来ないんですか?」


 私は、可能かどうか聞いてみた。

 私は、異世界ものの作品をよく嗜んでいたが、別に自分が異世界へ行き活躍したいとはそこまで思ってはいない。

 何故かって?

 いや、普通に魔法や魔物とかカッコいいとは思うよ?

 だけどさ、戦うなら怪我とか絶対するじゃん?

 私、戦うのはともかく怪我とかイヤだし。

 召喚されたクラスメイト達が無事なのかとか気になるけど、今私死んでるから知ってもどうしようもない。

 仮に私が助けに行けるとしてもチートな能力でもなければ助けられるとは思えない。

 私一人で全てどうにか出来ると思う程自意識過剰ではないのだ。

 そんなわけで出来たら地球で生き返って家族と一緒に平穏に暮らしたいんだよね。


 だが、女神様から返ってきた言葉はそんな思いを粉砕する様な内容だった。


「出来るか出来ないかで言えば可能ではあります。ですが、その場合その肉体は緋璃ではありますが元の緋璃ではなくなります」


 え?どういうこと?


「何故?って顔をしてますね。詳しく説明すると、緋璃の身体は、時空の狭間で肉体が塵も残さず消滅してしまったため仮に私が緋璃を生き返らせても全て一から生み出すので、地球で言うDNA?血液型?でしたっけ?が合わない可能性があるんですよ」


 なるほど、それじゃしょうがないね。

 生き返っても見た目は同じなのにDNAやら血液型とかが別になってるとか洒落にならないだろうね。


「それだけで済んだら良いのですが、肉体を創っても完璧に創りだせるとは限りません。可能性は低いですが、創造の際に肉体に不備があって記憶に障害が生じて記憶喪失になったり肉体と魂が合わず身体が上手く動かない等の最悪の可能性もあるんですよ。私の管理する世界で転生してもらえれば万が一何かあっても私が再び緋璃を助けられますので安心できるのですが。一度地球に緋璃が戻れば地球の管理者でない私は手出し出来ません。なので、出来たら緋璃には私の管理する世界で転生して欲しいんです。それに、私の世界では出生不明でもそこまで問題にならないので転生した緋璃でも過ごしやすいでしょうし」


 うん、万が一のデメリットがエグ過ぎる。

 今の話って要するに肉体の創造が万が一失敗してたら下手したら最悪記憶が無い障害者になるって事だよね?

 これは、地球で生き返るのは無理かなぁ。

 失敗の可能性が流石に怖すぎるよ。

 そういえば、輪廻の輪に返るのとどうなるんだろ。


「ちなみに輪廻の輪に返るとどうなるんですか?」


「記憶、人格もろもろ全てがリセットされて新たな生を始めることになりますね。稀にある前世の記憶は何らかの要因でリセット前に流れた魂が定着するのが原因ですけど基本的にほぼ0なので緋璃が仮に輪廻の輪へ返ったら産まれてきた子供はもう緋璃とは別の人間です」


 うん、転生しよ。


「女神様の世界でお願いします」


「わかりました。それでは転生のための肉体を創り出すので少しの間待って下さい。ちなみに、死なせてしまったお詫びとしてですけど何かご希望があれば可能な範囲でお聞きしますが何かありますか?」


「希望ですか?」


「はい。例えば種族やスキル、見た目、強さなど可能な範囲でお聞きしますよ」


 うーん、どうしよう。

 仮に希望を言っても私に合ってるのか実際に体験しないとわからない。

 それに、魔物のいる世界に転生するならちゃんと戦える様にならないと転生して直ぐに死ぬとか普通にあり得る。

 現に私魔物が原因じゃないけど運が悪くて死んでるし。

 それに、戦闘するつもりがあろうが無かろうが、異世界で暮らすならやっぱり戦闘が出来る方が良いだろう。

 町で平穏に暮らしていても、何かしらあって戦闘する羽目になるかもしれないし。

 とりあえず戦闘力のある肉体やスキルをおまかせでお願いしようかな。

 女神様なら身体を変に創造したり変なスキルを与えるような事はしないだろうし。


「なら、直ぐに戦える様な身体にスキルが欲しいです。とりあえず怪我とか直ぐに死ぬような事がなければ良いので」


「希望はそれでよろしいのですか?」


「はい、後はおまかせでお願いします」


 後は肉体が出来上がるのを待つだけとなり私はその場でのんびりと待つのだった。





「完成しました!!」


 30分くらいだろうか女神様が元気な声で私に近づき良い笑顔で私に完成を報告してきた。

 ぼんやりと待っていたため急に近づかれたのに驚いた私は変な声が出てしまった。


「うえ!?えっと出来たんですね」


「はい!!会心の出来です。肉体に不備が無いかも確認しましたし、多少希望外のスキル等も付けましたが概ね緋璃の希望通りだと思いますよ」


 希望外の部分が少し気になったが女神様の様子から希望通りにするためであって問題にはならないだろうと思い気にしない事にする。

 流石に人に与える身体で遊ぶなんてないと思うし。


「後は緋璃の魂を肉体に定着させて送るだけです。いつでも大丈夫ですよ」


 特に問題もなさそうだし私は早速始めることにした


「それじゃあ、お願いします」


「わかりました。それでは始めますね。送る先は、森の中にしておきます。それでは行ってらっしゃい」


「いってきます」


 そうして、私は眩い光に包まれながら意識を失った。







「女神様、私は無事に転生できました。女神様に新しくもらったこの命と身体大切にさせてもらいます」


 緋璃は無事に転生出来た感謝を女神様に伝える。


「さて、辺り一面緑しかないね。どうしようかな?」


 周りを見ても木しかない森の中なためここが何処なのかまったくわからなかった。


「う~ん……うん!わかんないや。とりあえず進もうかな」


 考えてもわからない。ならとりあえず進むのみ。

 せっかくの第二の人生なのだから悩むより楽しんだ方が良いに決まってる。

 そんな思いを胸に緋璃は新たな人生の第一歩を踏みしめる。


「さぁ、新しい人生を楽しもうかな」

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